ガラクタ置き場(短編集?)

やまくる実

第1話 大きな存在




 小さく息が漏れる、その白い空気が風に紛れて消えていく。


 

 俺は走って走って走って走った。



 


 どんなに走っても追いつかない。




 分かっていたけど。




 



 走り疲れて道端にしゃがみ込む。


 

 汗で視界が滲む。



 


 近所の子供達の声が聞こえた。




「勇気兄ちゃん、どうしたの? しんどいの?」



 何でもない、そうやって笑わなきゃ。



 分かっているのに。




 声が出なくて、満足に笑顔も作れない。





 なんで、俺は、あんな事を言ってしまった?



 傷つけてしまった。




 もう。





 アイツは戻ってこない。





 薄いピンク色の夕陽が綺麗で、こんな気持ちの時でも、やっぱり空は綺麗に見えるんだな。





 胸が熱くて痛かった。




 スマホには




 アイツからの『バイバイ』の文字。





 俺はアイツの本当の名前も知らない。




 ずっと一緒に居たから。




 これからもずっと一緒に居れる。






 そう勝手に思っていた。




 時間を巻き戻したくても巻き戻せない。



 アイツはもう何処に居るか分からない。




 諦めていいのか?




 諦めれるのか?





 分からない。




 分からないけど......。




 思い出せ。



 今まで、一緒に生活していたんだ。


 何か、何か手がかりがあるはずだ。



 考えろ。




 絞りだせ。




 何も考えれない。




 思い出せない。


 


 分かった事は。




 俺の中で、アイツがどれだけ大きな存在だったか。





 アイツが居なくなって、




 胸の奥がスカスカになったと言う事が、






 分かった。



 




 





 

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