パーティーと、三つのトビラと星の鍵。

『おぉ!!似合うね!!』


「私ドレスなんて着たの、初めてなんですけど.......。」

 そんな私の言葉も、この二人の会話によってかき消される。

 パーティーなんて、行きたくもないのに......。


『きっと女王様も気に入って下さるよ。』

 不安でいっぱいな私とは反対に、帽子屋さんと白うさぎはなんだかとても楽しそうだ。

 白うさぎは自分の持っている時計を見て、『そろそろ急がないと間に合わなくなる。さぁ、行くよ!それから帽子屋.....素敵なドレスをありがとうね。』と言ってパーティー会場の方へぴょんぴょんと跳ねて行った。

 私は帽子屋さんにお礼を言って、白うさぎを追いかけた。


 ✱✱✱


 白うさぎを追いかけて、どれくらいの時間が経っただろう。夢中で追いかけているうちに私は大きな洋館に辿り着いた。

 辺りを見回すと、あの白うさぎが何やら人と話しているようだった。


『今日のパーティーには、他のトビラの方たちも来られる予定でしたよね?』


『ええ、ちゃんと招待状も出したのだけれどね。』


『やはり、星の鍵はみつかりませんか.....。』

 

 話している内容はよく聞き取れないけれど、重要な話をしていることだけは遠くからでも分かった。


「あの!」

 私は思い切って声をかけてみた。

 白うさぎと話していた人は、少し困ったような顔をして『どちら様でしょう。』と言った。

 私が何も返せず固まっていると白うさぎがこんなことを言った。


『アリスです、以前も何度かここに迷い込んできた。今回はボクがこちらに連れてきました。』


「いえ.....私はアリスじゃ......。」

 そう言いかけたけれど、白うさぎは私の話を無視して話し続ける。


『以前にここに迷い込んできた時も、女王様とゲームをしてアリスが勝ちましたよね?だから、今回も.....女王様に勝った強運の持ち主の彼女なら、星の鍵を見つけられると思うのです。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る