第2話
・・・・・・・・・4月15日〜
''現在 2080年 世界人口は約8億人
半世紀前に世界中で流行した謎のウィルスによって全人口の実に9割が死亡しそのほとんどが40代以上の人間だった''
―今日の授業はここまでだ、完全帰宅時刻を守るように!
・・・・・・・・・放課後〜
俺は須王真澄、しかし今はレイと呼ばれている
2週間前に病院のベッドで目覚めてからずっとそう呼ばれているのだ
そして先日この王立アマルナ学園高等部に入学した
ったくまだ4月だっていうのに暑い、非常に暑い
気温は35度を超えている
こういう時に限ってエアコンの不調だなんてついていない
昔はこんなに暑くなかったのになぁ、地球温暖化ってやつが進んだ結果なのか…?
クラスメートに聞いても全く疑問を感じていないしまるで元からそうだったかのような反応、、
思えば2週間前に目覚めてからずっとそうだ、周りとは価値観が違う…というより住んでる世界が違う...?
・・・とりあえず一旦整理してかんがえ―
「おーーいレイくん!!今日私たちの適正検査の番だよ?!私たちが最後だからって今忘れて帰ろうとしてたよね??」
この甲高い声で話しかけてくるのはライラか
入学して隣の席になったというだけでよく話しかけてくる
適正検査の後に職業によってクラス分けされるというのに、俺には仲良くする理由がわからない…
「いや忘れてないよ、たまたま家の方角に吸い込まれただけで・・・」
「またすぐそうやって変な誤魔化し方する!もう行かないと間に合わないよぉ、早く行こ!」
適正検査とは高校に入学した生徒が受ける、卒業後の職業の適正検査のことである
適正は遺伝子と血液型に左右され、生まれた時には決まっているがある程度身体が成長しないとその適正反応が発現しないらしい
そして適正検査後は高校の授業課程内で実際に将来就く職業の場に赴き、経験を積む
しかしこれは俺の認識と異なっている
俺のこれまでの人生では―2週間前に目覚める前までは―適正などではなく人は自由に職業に就ける権利を持っていたのだが、やはり俺は違う世界にきてしまったのだろうか、その割には俺が今まで住んでいた世界とあまりにも似すぎている…
「やっと着いたね〜、私はC病棟だから今日はここまでだね…じゃあまた研修終わったらね!」
「ああ、またな」
病院での待ち時間の10分は学校の授業60分に値するほど長く感じる…
「レイ様、どうぞ」
「それでは検査を始めますね」
・・・・・・
「すぐ結果が出ますので少々お待ちください」
また長い待ち時間の始まりか…と思ったが今回はすぐに名前が呼ばれた
さっきとは違う厳かな部屋に招かれ、そこには齢80歳は超えているだろう老医者がいた
「君は適正が出ないねぇ、もしかしてファーストチルドレンかい?」
「ファーストチルドレン…?」
「おっと、君が眠っていたところで説明は受けていないのかね
君は目が覚める前の最新の日付を覚えているかい?」
「たしか2020年の12月だったかと思います」
「うむ、今は2080年、その間の記憶はないし肉体的、精神的変化もない
私が君だったらこの理解できない状況をなんの説明無しに受け入れるのは難しいねえ…」
「俺は元々現実にあまり興味が無かったというか、まあ驚きはしましたがなるようになれっていう感じですかね」
「そうかい…では私から説明しよう」
老医者の説明はこうだった
2020年、つまり俺が眠った年、世界は類を見ない大規模なパンデミックが起こった。そのウィルスは非常に強力なもので、40代以上が感染すれば致死率が9.5割、30代以下でさえ致死率が8割を超えるという破壊的なものだった
そして俺も例外なく感染し、ただ死ぬ時を待つかと思われていたが
俺は運び込まれた病院でファーストチルドレンに選ばれ、人類がこのウィルスに対する抗体を持ち、ワクチンが完成するまで冷凍保存されていた
そしてファーストチルドレンとは俺のような、ある特定のN型血液を持った30歳以下の人間のことであり、特権としてこの世界で自由に職業を選べるらしい
「さて、君はファーストチルドレンとしてどういった職業を所望するのだね?」
「うーん、、そう言われてもファーストチルドレンといっても実感無いですし…」
「では君は《シェーラー》にしなさい、ファーストチルドレンが自分の職業を希望しない場合はシェーラーに適正を定めるという決まりでね」
「そうですか、じゃあそのシェーラーで」
「ふむ、なら今日は帰りなさい、説明するのに時間がかかってしまったし帰宅時刻をすぎたらいけないからねえ」
「そうですね、ありがとうございました」
俺が冷凍保存されていた…ファーストチルドレン…職業シェーラー…
なんだか聞くだけで気疲れしたな、そういえば明日適正の出た職業に研修オリエンテーションに行くんだっけか
シェーラー自体よくわからんがまあ明日行けばわかることだろ
・・・・・・・・・4月16日8時45分〜
〜シエル調査団講義室〜
「みなよくきてくれた
毎年新入生の研修はこの世界に存在するAA、AB、AO、AB、OO型に2人ずつで10人のはずなんだが今年は1人多いようだな…まあいい」
「それではシェーラーについての基礎知識については諸君らは既に学んできてくれているだろうからまずは我々シエル調査団の理念について講義を…」
おいおい嘘だろ、基礎無しで理解できるわけがないだろ!
あの老医者は予習がいるなんて一言もいってなかったぞ…
・・・・・・・・・11時00分〜
「講義はこれで終了する!20分後に地下2階演習ルームにて基礎演習を行うよりこちらでペアを用意した、顔合わせは任せるが時間には遅れないように!」
全くついていけなかった…
ほんとに俺はここでやっていけるのか??
「あなたがレイね?私ティーナ
見たところ同い年みたいだけどどこの高校に入学したの?私は王立メンフィス学園だけど」
「はじめましてティーナさん僕は王立アマルナ学園です」
「ちょっとティーナさんってやめてよ、ティーナでいいしタメ語でいいわよ同い年なんだし」
「やだ、もう時間ないじゃない、ほら!急ぐわよ!」
またなんかめんどくさそうなやつと縁ができてしまったような
とりあえず演習ルームに行くか…
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