主人公の優は、過去の恋愛に気持ちが囚われている大学生。
物語の序盤では彼女が過去の恋愛を回想したり、現在の恋愛に向き合いきれずにいたりする姿が描かれます。
主人公の心情を表す文の雰囲気が秀逸で、読んでいて心を奪われます。
たとえば現在の出来事を見せているシーンでは、過去に囚われていて今の人生に没頭できない虚しさが、言葉の端々から伝わってくるんですね。
主人公の抱いた強い感情や、固着した憂愁、この先の人生が空洞であるかのような感覚。
そういった主人公の心情に文章の雰囲気がぴったり寄り添っているので、感情を追って読むのが非常に面白い作品なのです。