第5話

「うっっ、ここは?」



「シェアン! もう大丈夫なの?」



「ごめん、心配かけた。もう大丈夫だよ」



「よかったっ」



レシアの両眼から涙が垂れる。

それを拭いてあげながらさっと周りを見渡すとここは自宅の寝室だった。



「レシア、直接ここに帰った?」



「うん、転移アイテムで帰ったわ。流石にあのままじゃ続けられなかったでしょ、

 私も、シェアンも」 



「そうだね、まさか70層相当のボスを引くとは思わなかった」



51から54層は極稀に上位互換のボスが出現することがありシェアンたちはそれにあたってしまったのである。


「せっかく、あのチケットがドロップしたのだし使いに行きましょ」



「そうだね、

 ギルドに今回のことを伝えに行くついでに何を仲間にするか決めようか」



レンガを基調とした白亜の町並みを歩く。



「ねぇシェアン、もしかして倒れた理由って魔眼使ったから?」



「そうだよ、魔力欠乏ではないから安心してね」



魔力欠乏状態になってしまうと回復するまで全く魔法が打てなくなってしまうため冒険者が極力避けなければいけない状態の一つである。




十数分歩いた後ギルドについた。


「こんにちは、素材の買取をお願いします」



「はーい、ではこちらのカウンターにお願いします」



僕は空間魔法で中に保存していた敵のドロップ品をどんどんカウンターに置いていく。



「これで全部です」



「む、これはリヴァイアサンの角ですか。2人で70層相当のボスを倒すとは。

 流石ですね。はい、少々お待ち下さい、えぇっと合計800万レミです」


「かなり高いですね…ちなみにどれが一番高く売れたのですか?」



「それはやはり、こちらのリヴァイアサンの角ですね。なにせめったに取れないですから。」



強いボスと当たれば当たるほど生まれる儲けは大きくなるということなのだろう。



「ところで今回の探索は失敗扱いされるのですか?」



「いえ、むしろ評判は上がると思いますよ。本来の予定では60層攻略でしたが70層相当のボスを倒せたのですから」



「良かったです。今回の探索でこれ以上2人ですすむのは厳しいと感じて、

メンバーを増やそうと思っていたので」



「それでは掲示板にメンバー募集を書き込んでおきましょうか?」



「はい、ではこの条件で、期限は3週間でおねがいします」



「了解しました」



ギルドの冒険者仲間と話していたレシアを見つけて一緒に帰る。



「ふあぁ、ねえシェアン、これからの予定ってどんな感じにするの?」



「う~ん、まずはパーティーの強化だね。


 新しい仲間とテイムチケットを使っての強化。


 入ってきた人との連携の練習。個人技の向上というところかな」



「新しい仲間の募集はもうしたんでしょ。ならその間に神獣をテイムしに行きましょう」



「そうだね、ペガサスかドラゴンかどっちを狙いに行く?」



この国には近くに神獣のすみかが2つあり、そのどちらも強いので大体のテイムチケットを当てた幸運の持ち主はそのどちらかに行くことが多い。

ペガサスは守りや回復重視 ドラゴンは攻撃重視といったところだ。


「今回さ、パーティー募集の条件に光属性の適正がある人、つまり回復魔法が使える人を入れといたんだ。

 だから集まってくれることに期待してドラゴンをテイムしに行こう」



「そうね、今日準備して明日から2週間で終わせられるようにしようね」



ドラゴンのすみかまで約2日かかる。

帰りはドラゴンに乗って帰りたいが行きは馬を使う事になりそうだ。



「シェリエール男爵家に馬を用意してもらえると嬉しいな」



「わかったわ。明日この家にきてもらうようにお父様に頼んでおくわ」



「了解、それと色々ありがとう。本当に助かった」


「本当に心配したんだから。次までには魔眼を使っても倒れないようにしてね」



「わかった。少しずつ練習して、使用可能時間を長くするよ」



「明日から2週間も遠いところに行くんだね。頑張らなきゃ」



これから僕たちは2週間かけて幻創種の一つである神獣、ドラゴンをテイムしに行く。

それまでの道のりが険しくならないことを祈りながらゆっくりとまぶたを閉じた。

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