第4話

「色々落ちたみたいだね、レシア。一緒に確認しようか。」 



このドロップ品の確認のときこそが冒険者の楽しみの一つと言える時間である。


50層ボスではテイムチケットやゴーレムの剣がレアなドロップである。



「ねぇ、シェアン。もしかして、このチケットって…」



「まじですか、 レシアさん。はぁ...凄すぎますね。貴女の運は」



びっくりしすぎて敬語になってしまった。もっともドロップさせた本人はそんなこと

を気にしている余裕はないようで慌てて話しかけてくる。



「これって、もし売ったら何レミかな?」



「確か4000万レミぐらいだったよ」



おおよそ普通の家が2,3軒建ってしまうような金額である。このまま普通にダンジョ

ンを一度出て使ってから戻ってくるか考える必要がある。こんな貴重品が出てしまう

とは思わなかったのだから。



「54層まで突破してから帰りましょ。51から54は基本4属性の敵が現れるらしいからパー


ティーに足りないものを見つけられるわ。」



「わかった。ここからは毎回ボスがいるから気をつけて進もう。」



そういうわけで51層。この層には水属性の敵しかいない。


本来は土属性の味方を連れてくるのがセオリーなのであるがこのパーティーは二人し

かいないからそのようなことはできないのである。が、


「ファイア」



相手のマーマンに当たる。本来なら大して効果はないはずなのだが、レシアのあまり

余る魔力がただの「ファイア」の威力を火属性上級魔法「インフェルノ」に迫る程ま

で威力を上げているため、相手が水属性であってもボスではない敵は破壊できている。


とはいえ、相方と相性の悪い層なので僕がさっさと風属性魔法で倒していく。



「ウインド」



相性有利ではないが不利でもないので僕のほうが楽に倒せている。




あまり広くない層なのかすぐにボス部屋の前まで到達する。



「じゃあ 行こうか」



ギーーと重厚な音を立てながらドアが開き、51層ボス戦が始まった。



「ここは、洞窟?なんて広さよ。この層殆どがボス部屋じゃないの」



「そういうことか。レシア気をつけて、多分今回のボスは、リヴァイアサンだ。」



ギルドで聞いた情報では低確率でリヴァイアサンに変わってしまうと聞いていたが、


自分がその確率を引くとは思っていなかった。


2階建ての家が10個分ぐらいの高さがある。



UuuuuuuuuuHAaaaaaaaaaaaaaaaaaa



巨体が現れ咆哮してくる。



「ウインドシールド」



とっさにシールドを僕とレシアに展開する。そうでもしなければ少なからずダメージ

を受けていただろう。


危なかった。決して油断をしていたわけではないのだが先制でこんなエグい技をうっ


てきたパターンは今までになかった。ギルドに帰ったら報告をしなければいけないと


心の隅っこに書いておく。



「あの巨体どうやって倒そう」



安全第一に考えるのなら僕がひたすら矢を打ち続ければ、時間はかかるが倒せる。


でもその間レシアにはできることがほとんどなく、ただ攻撃を避け続けるだけの時間になり時間がかかるため被弾の危険性が高い。


明らかに鱗が守っていなさそうな頭の部分を一気につけたら時間がかからなさそうである。



「レシア、速攻で決めるよ。広範囲な技を使って」



「わかったわ 「インフェルノ」 」



彼女は剣にインフェルノをまとわせて横薙ぎに一閃した。縦に斬ると一直線に高火力


横に斬ると広範囲に攻撃ができる。


たくさんの魔力が必要になるが使いやすい技である。




その間僕は詠唱を始める。



詠唱と言っても声に出すわけではなく頭の中で考えるだけであるがその間は動くことができないので詠唱と皆呼んでいる。



(思い出せ   レシアが持っている剣を)



それを自分が意識して操作できる上限の本数を思う。13振りできた。そのイメージを現実に映し出す。


一つを弓につがえ、残りを均等に僕の周りに配置する。



「テンペスト」



風属性上級魔法でそのイメージを風で形作る。



「ウインド」



風属性初級魔法を攻撃ではなくこの剣たちの通り道とすることでありえない速度を出すことができるテクニックである。


本来は矢に対して行うものを剣で行う。



「レシア、準備できた。下がって。」



「了解 「ファイア」」



こっちに飛ばしてきたリヴァイアサンの水属性初級魔法「ウォーター」を相殺してできた水蒸気の向こう側に向けて剣を放つ。


この瞬間は相手は攻撃されないと思っているだろう。


だがこちらは「ウインド」の効果で相手を見えていなくても先に照準を合わせていたのでその地点に飛んでいく。



Guuaaaaaaaaaa


本能で危険を察知して相手はブレスを吐いてきた。


本来は最期にしか使ってこないのに、ほとんど初めに使ってきやがった。


意識とつながっている13本の剣の半分で相殺しようとする。だが相手の切り札であるブレスに対してはかなり分が悪い。



「シェアン、先に本体をやって。ブレスは私がどうにかする。」


6本をブレスにぶつけて残りの7本に意識を集中する。


そのすべての着弾点をリヴァイアサンの頭部に設定する。



「はぁぁあ」



加速する剣。


その剣は音速を超えるかというところでリヴァイアサンに着弾した。



GiiiAAaaaaAAAaaaa



「やったか?」



Gaaaaaaaaaaaaaaaaaa



瀕死の状態のリヴァイアサンが倒れながらももう1度ブレスを吐いた。


もう放っておいても倒れるだろう。 


だから全力をもってこのブレスを処理すればいい。


捨て身の一撃が吐かれた直後僕は奥の手を解禁する。



欠落の魔眼



シェアン=レキュールが有する魔眼はギルドから公式に認められたSランク以上の能力を持つ魔眼である。


万物にはすべて何かしらの欠落がある。

その欠落を視る能力である。


そもそも、レキュール家の初代は強力な魔眼での多大な貢献より貴族になったという過去がある。

そして、レキュール家は代々魔眼を所有しておりそのなかでもシェアンの魔眼は群を抜いて強力なのである。



魔眼 発動



ブレスの構造を認識する。欠落を視る。


ただ1つの点が視える。  



その点に矢が向かう


認識する情報量が多すぎて目眩がするものの、3秒程度はまともに使える。


ここぞという場面で使えると強力な魔眼である。


弱点を突かれたブレスが、霧散する。



「シェアン!!」



レシアが駆け寄ってきた。


その姿に安心した途端ー視界が暗転した。



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