第6話ふたりはマニキュア
ふたりはマニキュア
だいたい七分の五の時間は決まりきった流れで進む。だから私はまたおしゃべりクラブの時間に連れてこられた。じっとしていれば家に連れて帰ってくれる時間にもなる。だから何もしなくていいのだ。
ふと誰かが話を振ってきた。話など聞いているようで聞いていなかった。わかるようでわかっていなかった。「うん。」と言っただけでそれ以上は答えようがなかった。それ以降は見慣れた風景が展開された。
おしゃべりクラブから解放されても、また決まりきって帰宅しなければならない。妹は決まりきったビデオを観ているだろうし、夜は決まりきった暗さをしているだろう。
案の定妹は決まりきったビデオを観ていた。「ふたりはマニキュア」というアニメ映画だ。マニキュアが大好きな姉妹のお話だ。毎晩二人で語りながらマニキュアを塗っていると、頭の先から足の先までが徐々に鮮やかになっていき、二人の頭上に太陽が現れる。そして環境を破壊する様々な人や工場、ゴミだらけの海岸などに「太陽にかわっておしおきよ!」と言って大きなマニキュアを地上に塗りたくるのだ。するとたちまち青と緑の美しい世界が現れる。でもそれは二人がマニキュアをつけているあいだしか続かない。だから翌日、学校へ行くためにマニキュアをおとすとこの地球の美しさもはがれ落ちてしまう。
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