第5話貧乏論
貧乏論
にこにこしているだけの金太郎はなぜ金太郎というあだ名なのか。そもそもあだ名とは何なのか。ニックネームやハンドルネームやペンネーム、ラジオネームなど色々ありすぎる。本名に深い意味などないのかもしれない。周りから付けられたあだ名のほうが、本質を突いていることもある。
金太郎がなぜ金太郎なのかわかった。髪形が金太郎みたいだからだ。一直線に切ったような髪形。私は色々なことに気付くのが遅すぎる。
廊下には掲示物が貼ってある。特に保健だよりが目に付く。そのなかのひとつに、「くだものを食べて元気になろう!」と制服を着た女の子が人差し指を立てながら言っているのがあった。「みかんだったら一日三個。りんごだったら一日一個」。こどもは自分でくだものを買いに行ったりはしない。出されたものを行儀よく残さず食べるだけだ。食べるものなど選べないのになぜこんなことをこどもに言うのか。それにりんご一個なんて四人家族なら一週間で二十八個。そんなお金どこにある。健康になれるのはお金持ちに限られる。母は病気なのに朝から晩まで働いて、「貧乏暇なし」が口癖だ。健康になるために病気になっている。肉やくだものは、おばあちゃんが買ってきてくれるのを待とう。
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