第7話 ソロキャンプ

東京競馬場のパドックの裏側。

そこには池があり、ちょとした日本庭園の様になっている。

開催日でも、人が少ないこの場所に、毎週集まる3人のおじさんがいる。


「いや〜競馬って楽勝っすね〜」

マモルくんが珍しく万馬券を取った。

「皆さん何か飲みますか?僕奢りますよ。」

なかなかの浮かれようだ。

実際、100円が20万円になるほどの万馬券を当てたのだから何も言えない。

「まさか、本当に3番の馬が来るとはな・・・」

穴狙いのシゲさんでも買えないような穴馬が1着に来たのだった。

「2年も勝ってない馬でしたからね・・・よく今日まで現役でいたなってくらいの馬ですよ。」実際、引退しててもおかしくない成績で、当然誰も印などつけていない、

18頭中18番人気の馬だった。

なぜそんな馬を変えたのか・・・

「だから言ったじゃ無いですか〜ソロキャンプですよ!今流行ってるって言ったでしょ〜」

そう、馬の名前が「ソロキャンプ」だったからだ。

最近、ソロキャンプにハマってるらしいマモルくんは、名前だけで買っていた。

「ソロキャンプに初めて、「ソロキャンプ」って馬を買って、20万円儲かるんだから、ちょろいっすよね競馬って〜」

確かに、普通に予想してたら絶対に取れない馬券だから、浮かれる気持ちもわかる。

浮かれれる時は、思う存分浮かれるべきである。

ただ、取ったのは先週の話だ。

まさか、今週も浮かれているとは思わなかった・・・マモルくんを甘く見ていた・・・

「みんなも今度行きましょうよ!ソロキャンプ!道具貸しますから!」

「3人で行ったら、ソロキャンプじゃ無いだろ?」

「シゲさん、3人でそれぞれソロキャンプするんですよ〜!いいですよ〜」

「俺はいいよ。祐介と行ってこいよ。」

「僕もいいですよ。ソロキャンプなんだし、1人で行った方がいいよ。そもそも、

みんなで行くのが煩わしいから、ソロキャンプなんでしょ!」

「楽しいですよ〜。自然の中で1人で食べるご飯は〜」

「ホームレスと一緒じゃね〜か。」

シゲさん!その通り!

「何言ってるんですか!ソロキャンプですよ!自然に囲まれて、焚き火を眺めてボ〜っとするんですよ!」

「ホームレスじゃね〜か!」

ですね。

「いやいや。ソロキャンプですって!鳥の声で目を覚まして、川で顔洗って、火を起こしてコーヒーを飲むんですよ!」

「山の中のホームレスじゃないか!」

「違いますって!祐介さんもなんとか言ってくださいよ〜」

僕もシゲさんに賛成なんですが・・・

「確かに、ホームレスとソロキャンプってやってること一緒ですよね。ホームレスがソロキャンプだって言ったらソロキャンプですもんね。」

「祐介さんまでそんなこと言うんですか〜」

「でもよ。そうなんだからしょうがね〜じゃね〜か。じゃあ、明確な違いはなんだよ。」

「・・・・身なりとか?」

「制服着てれば、警察官ってやつか。見た目で決めるってことだな。」

「そう言うんじゃないですよ〜・・・」

「もう諦めろ!お前は、金払って道具集めて、ホームレスの真似事をしてるってことだよ。」

「ホームレスは、野良のソロキャンパーってことですかね。」

「祐介、上手いこと言うな。」

この日の最終レース「ホームアローン」と「レスポンス」という馬で決着し、

馬連万馬券を出した。

もちろんマモルくんは「ホームレス馬券だ〜!」と1000円も買っていたため、

またしても20万円近く儲けた。

マモルくんには黙っていたが、僕とシゲさんも密かにその馬券を買っていた。

ありがとうホームレス!





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