金曜日
長い一週間だった。講義、バイト、レポート何をしていても金曜日のことを考えてしまい、自分の性への好奇心が初体験の時のように
彼氏以外の人とそういう関係になる、ということへの罪悪感はあったが、自分の罪悪感は自分で処理するだけの自信だけはあった。
金曜日、私は一旦家に帰り、シャワーを浴びた。顔にパックをして、髪も丁寧に梳かした。眉毛を念入りに抜いて、この日の為に買ったウォータープルーフのマスカラをしっかりと塗り、あまり付けないチークも乗せた。いつもより倍以上の時間をかけて化粧をした。
亮介が私を見たら別人と思うかもしれない。
普段とは違う女らしい花柄のワンピースを身につけた。加奈からの借り物だ。加奈は私にくれると言ったが、高価そうなワンピースで誰かからの贈り物かもしれない。ちゃんとクリーニングに出して返すと伝えた。
私たちは駅で待ち合わせた。化粧と加奈のワンピースのおかげで雰囲気が一変した私を見た二人は私を褒めちぎった。莉子は興奮気味に、新しい彼氏が出来たら、亮介を一緒に振ってやろう、と意気込んでいた。
三人で向かった店は、莉子がもともと行ってみたかった店らしく、店内も女子が好きそうな間接照明で、所謂合コンに最適なお洒落な店だった。紳士なウェイターに通されたのは、木のテーブルにソファ席と椅子がある角の席だった。男の人達は既に着いていて、椅子に座っていた。
初合コン、初浮気の開始だ。
「佐藤さん、お待たせしました。」
莉子がキラキラした笑顔を見せた。私はこの二人には到底敵わないが、持ち帰るのにちょうどいい女にはなれる気がした。最初は緊張していたが、莉子と佐藤さんが上手いこと進行してくれて、営業という職業もあってか他の二人も話しやすく、場を盛り上げてくれた。
私がトイレで席を立った時に、個室で携帯を見ると加奈から個人ラインが入っていた。
加奈『この人たちはやめといた方が良いよ』
たった一言、絵文字も何もなかった。時間を見ると十分前で驚いた。私たちが喋ってる間にこそっと送っていたようだ。何か見抜かれている気がして一瞬鳥肌が立った。
明日香『そうだね。忠告ありがとう』
それだけ送り、口紅を直し、足早にトイレを出たら、さっきまで喋っていた松井さんという人が外で私を待っていた。
「明日香ちゃん、良かったらこの後二人で飲まへん?」
そう、それを待っていたんだ。私は最初から松井さんに目星をつけていた。他の二人より不格好だが、背が高く歯並びがきれいで清潔感があった。アイコンタクトをして睫毛をファサファサした甲斐があったと心の中でガッツポーズをした。
「いいですよ。」
にっこりと微笑んだ。ラインの交換をして、この後一緒に帰ったら二人にばれるから、別れてから連絡を入れるから付近にいてください、とお願いした。
「二人だけの秘密やね。」
「そうですね。」
またにっこりと微笑む。ゲームのような感覚になっていた。感情はゼロで、罪悪感も今のところゼロ、この男と今日浮気することが私のミッションになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます