デート

土曜日、亮介と普通にデートをして過ごし、家まで送ってもらった。

ウィンドウショッピングを楽しむ彼は、私にサングラスを試させたり、帽子を被せたりして可愛い、似合うと煩いくらいに繰返していた。気分はすこぶる良かったが、加奈の言っていたことをふと思い出してしてしまい、こんなプレゼントいらないよ、と心の中でひとちた。

そんな私の気持ちをよそに、笑顔で楽しそうに振る舞う彼を俯瞰して見ていると、イライラとモヤモヤが押し寄せてきた。それを払拭するために、金曜日のことを考えて心を落ち着かせた。

亮介が浮気したにも関わらず、私の性格が急速にどす黒く、意地汚くなっていくのはどうしてだろう。


私は部屋に誘ったが、彼はそれを頑なに拒み、家に入らず帰った。今はまだだめなどと陳腐な台詞をぼそぼそと呟き、悲しそうな瞳で微笑み、逃げるように帰って行った。自分を戒めている最中のようで、入りたいが、入りたくないという葛藤が目に見えて、私は逆に冷めてしまった。

入りたいなら入ればいい。入れたいから入れたくせに浮気野郎。

結局、彼の罪悪感が消えるまで私を付き合わす気なのだろう。その禊ぎが終わるのはいつになるのか、先に教えて欲しい。いっそのこと箕面の滝にでも打たれてくればいいのに。

行動には責任が伴う。彼の身勝手な行動で、今の現状を作り出しておきながら、私の言うことは一切聞かない。一人傷ついてます、と訴えるような目で見られても、私はそれを大丈夫だよ、と優しく包み込むような包容力を持ち合わせてはいない。

私は彼の母親ではない。

浮気は覚悟を持ってするものだ。私にはその覚悟がある。



亮介は初体験の相手だ。そういう雰囲気になりそれを告げた時は、私より彼の方が緊張してしまった。覚悟は出来ていたし、どんなものか興味もあった。痛いと聞いていた初体験は、それほど痛いものでもなく拍子抜けしたのを覚えている。圧迫感だけで、意外とあっけなく彼は果てた。丁寧に大事そうに私を扱う彼を下から眺めるのは、恥ずかしさもあったが、心地よかった。

他の男に興味などなかったが、一度しているのだから、同じだろう。

莉子が言うには、男なんてほとんど一緒で相性が合うか、合わないか、やってみないと分からないらしい。二分の一の確率に賭けるしかない。そもそも亮介との相性がいいのかも分かっていない。

女も多分同じなのだろう。どの穴に入れてもきっと大差なく気持ちよくなれるのだろう。だから世の中には浮気が絶えない。


次の金曜日に合コンが決まった。

私は亮介に金曜日は加奈達とご飯に行く、と伝えた。土曜日に彼のバイトが上手い具合に入っていたので、日曜日は絶対会いたい、と頼んだ。そんな風に私が言うのが珍しかったのか、彼は嬉しそうにしていた。

そう、私は出来るだけ早く彼に会いたい。そして許したい。

私の真っ黒になってしまった心も、その時には青空のように晴れ渡る気がする。

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