第48話 ハンター試験{後編}
殲滅すると言っても如何するか迷っている。
殲滅するとは言ったが、如何攻めるか、迷ってしまう。
こういう時、凪だったら直ぐに決めることが出来るのだろう。
俺は如何しても選択肢がいくつもあると、最善策を考えようとして、時間をかけすぎる癖がある。決して凪か考えなしに、衝動的に行動しているとは言っているのではなく、俺の考える時間が長すぎるのが原因だと思う。
これはあの大戦以降変わりなくそうなってしまった。
人類史上最初にして最大の戦争。とうに歴史などは、焼失し覚えているのは俺を含めた数人だけだ。
あれ以降俺は吸血鬼になり、慎重派になり、人類の敵対者となった。
その後悔も、悲しみも今では忘れる事はない、俺という吸血鬼を構成する上で欠かせないモノである。
「ところでヒロト様、ヒロト様のお知り合いとはいつお会いするのですか?」
「ああ、それはこの試験が終わり次第行くつもりだ、この試験だって、ついでだ・・・」
この世界での地位を保つためだけでしかない、絶対ではない、あったらいいなくらいのものである。
「じゃあ、作戦を説明する」
ようやく決めた作戦は単純明快。
「まず、島中央へ移動して、索敵した後敵を順に殲滅していく」
移動を始める。草木をかき分け前進する。
オーストが歩いた後は地表に霜が這い寄り凍土と化し木々は冷凍されたように凍てつき、命を引き取る、禍殲樋が歩いた後は燎原の火になり火の海が広がる。
その狭間は熱と冷気が混合し混沌に落ちる。
その全ての後をヒロトが歩けば、炎は消え去り、氷は解け新たな生命が芽吹く。
これこそが俺たちの力、それを酷使した確たる証拠オーラが外界に影響を与え世界を侵食するほどの技量。
固有名称を
独自世界とは自らの得意とする世界そのものを作る、と言うよりかは被せると言ったほうがしっくりくる。独自世界は世界を自らの世界で覆いかぶせるのだ、机に紙を乗せるように。時間経過で解除ができる点がある。
それに比べて侵掠独自世界はその名の通り世界を侵掠、奪ってしまうのだ自分のものとして。世界を一時的に変える唯の独自世界とは大きく異なり、独自世界は世界からの圧力と呼ぶべきものから強制的に排除される。無いものが、無いはずのものが出てくれば世界はそれを排除しようと働きかけるからだ…免疫のように。それを永続的にこちらが強制的に、地球からその地の権利を永久に剥奪したものを指す。そこには、只の独自世界を遥かに超える魔力を働かせ、世界へ抵抗しなければならない。それを実行するには相当量の魔力を必要とする。しかしそれだけでは終わらない、世界はそれを排除しようと、動き刺客を送り込む。
世界の守護者
かつて世界を救った
決して終わることのない戦いを強いらて、戦い続ける、勝者。
それらの難題を超えて、初めて行える偉業。
今も広がり続ける世界は島中央部を異様な異界へと変えていた。と言ってもその力の片鱗に過ぎない、もしも全開でその力を使用すれば瞬時にこの場が変わってしまうからだ、廃墟や地獄や氷河期に。
そこに続々と、現状を把握できない三割の人間が点数稼ぎに訪れる。もしくは危機感を覚え消しに来る
「西と南東、北西、北東から敵が来ている、先ずはそちらの相手をするぞ」
「ん、あぁ、わかった」と禍殲樋
「了解しました」とオースト
二人は剣を出しても歩みをやめない。向かう先は敵が最も密集している地域。
斜め後方から敵が飛び出すが、俺たちへ辿り着く前に凍りつき見頃な氷柱へと変貌する。
周りからはここに集まってきた敵たちが鉢合わせになり、各所で戦闘が開始している。鉄と鉄が弾き合う音と、雄叫びや
「殲滅開始」
一斉に先程ヒロトが報告した方角へと疾走する、まるで示し合わせていたかのように。
俺は剣を取り出した、皇帝・雷切。
「雷豪‼︎」
雷を纏ったそれは形を変えたかと思うと、剣に変化し、自然の中に潜伏していた敵目掛けて雷が迸り去った。
刹那、敵は黒焦げの肉塊へと変わった。
一方では、敵は炭と化し。また一方では、敵は氷漬けになっている今の現状。
その地獄は、一日足らずで終わりを迎えた。
「この島の残り人数は約五人か」
陽も傾き始めた今、周辺地域にいた敵全ての排除が終わった。一方的な虐殺だった、沢山の命が失われ、いや、奪われた。しかし試験はこれで終わりではない。
この惨劇に奇跡的に生還した男はこう語った。
「・・・あそこは地獄だった、・・・奴らは悪魔だった、あの光景を忘れたい・・・、俺を殺してくれ・・・」
その後彼は原因不明の急速な老化が原因となり、間も無く息を引き取った。
この話は瞬く間に、ハンターギルド職員内へと広がるのには時間はかからなかった。それを知るものはネズミ方式で増えていった2が4に4が8に8が16に16が32に32が64に64が128に128が256に256が512になる様にいずれ泊まるその時まで増えていった。
幸い外部にはこの惨劇が漏れることはなかった。しかしその惨劇で期待と恐れを一身に受けることとなった。
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