第24話 人類浄化

 村に近づくと物見櫓の様な物に上っていた兵士がこちらに気付いた様子で下の兵士に叫び伝えている。


 

 程無くして村人たちもこちらに気付き動揺の様子が観える。


 すると民家の屋根の上に乗っていた弓兵がこちらに矢を向け、一斉に放つ。

 正面に向かっているとは言え、高速で移動するこちらには、ほとんど当たらず数少なく当たった矢でも相対速度的には相当な貫徹力を出したと思われるが、フロントガラスにはヒビどころか傷一つ付いていない。段々と速度を落とし、盾を構えている兵士の手前で止め、ギネスが扉を開けると一斉に身構え警戒している。


 ギネスがスタリオンから降り、早急にドアを開けてくれ、俺とオーストも降りる。

 すると服装的にこの隊の隊長と思われる男が声を貼り話しかけて来る。

「貴様に問う!お前達は何物だ!」

(こいつ等は何者なのだ、それにあの乗り物は母国の神人様達がお創りになられたという物に少し似ている、馬を様入ずとも動かすことが出来る未知なる乗り物、俺たちや民にはこの様な乗り物がある事しか知らされていない異界の乗り物がなぜここに)


「・・・・・」


 ヒロトは答えなかった、それは彼らがどうなるか知っていてのことである。


「ギネス、ラシード、疾風神雷 隊長と二、三人を残しあとは、殺せ」

「「「御意」」」


 最後に呼んだ、疾風神雷は第八階層の古代都市に居るアサシンのリーダーだ。

 古来より日本に伝わるザ・ニンジャのような恰好をしており背中には超大型の太刀を仕舞ってある。

 

 三者が出るとここの兵士では歯が立たず瞬殺だった。綺麗に血は出さずに首の骨が折られ即死だった。それは服を使うまでもないと言う余裕に似たものなのだろうかとヒロトは少し思った。


 仲間があっさりと殺されていくその光景を目にし、恐怖したようで、逃げだす兵士がいた。しかし逃れることは叶わない三歩後退りしたところで肩をつかまれ動けない。恐る恐る振り返ると、シードは無表情のまま腕に力を籠め兵士の腕を折る。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ‼」


 腕があらぬ方向へ曲がり苦痛の叫びが草原に響く。

 腕を抑えもがく兵士にシードが近づき注意する。


「兵士たるもの、腕の二本や三本外れた所で大声を出すな」と言い残し兵士の頭に手をゆっくり伸ばすと兵士の顔は絶望に満ち断末魔を上げながら、息絶えた。


 ギネス達がバタバタと敵を倒している中ヒロトは降霊魔術を唱えた。


 名はファントム・ウルフだ。実態はなく、人にファントムを見せる。

 今ファントム・ウルフを出した目的は複数あるが、一番はそこらに点々とする木々や丘に兵士の伏兵がいないかを確かめるためだ。


「このような鎧を着た敵がいないか探して来い」


 傍に死んでいる兵士を指差し、命令すると直ぐに掻き消え探しに行った様だ。

 丁度ギネス達も片付けが終わったようで、ギネスだけが近づいてくる。


「ヒロト様、私たちに襲い掛かった愚かな兵士共の排除が完了いたしました」

「そうか、ではロープで縛られている村人たちを開放してくれ」


 ギネスは「了解しました」とだけ言い、村人たちの方へ歩いて行く。

 とりあえず、村人たちも情報も持っているかも知れないし、開放した恩義で何か話すと良いけど・・・



 そんなヒロトの心配は発生せず村人たちは話してくれた。

 村長の家へ案内される。中へ入るとそこは、

 質素な椅子とテーブルだけが置かれたリビングだった。

 その一つにある椅子に腰かけて辺りを興味本意で見回す。


 部屋は東、南、西にある窓から光が差し込んでいるおかげで、暗視ゴーグルNVGを使わなくても問題なく見回せる。見つけたものは、申し訳程度に置かれた花瓶と農具、今ヒロトの目の前に座る七十台程の老人と隣で同じく辺りを見回すオーストだ。


 この魔法のある世界の文化基準に低さ改めて思いつつもこれが何処まで進歩するのかとゆう疑問を抱いたところで終わり、他の事を考える。


 座った椅子はミシミシと音を立、手を置いた机はガタガタと揺れている。無論ヒロトの体重が重い訳ではない、きっと高校二年の平均的な体重位しかないだろう。


 粗悪品のこのテーブルは手を揺らすだけで以上に反応しまた揺れる。

 この村の貧しさがよくわかる。



 住民に刺激を与えない為に一度鎧を脱ぎ新しい服を着ていた。

 ヒロトは正体を隠すために羽織っていたポンチョ風のコートを脱ぎ邪魔にならないようにオーストに持ってもらう。


 その途端俺の顔を見た村人は口をぽかんと開け三秒程その表情で固まりまた動き出す。こんなに若い少年が下部を従え、村を救ったものだとは思わなったのだろう。しかしどれほどの歳の者と思われていたかは、その表情を見ると創造に固くない。

 そんな考えは何所かに投げ捨て思考の回転を速める。

 今ヒロトが欲しいのは情報だ、金銭ではない勿論後々この世界の通貨は必要になるし貰えるならもらいたいが後回しにしよう。


 この後街に行くのにも関わらず、この世界の常識ぐらいは知っておかないと、利用されるのは誰でも分かる。

 ここで警戒するのもあれだが、他人はそんなに信用できない、あの襲撃も演技かもしれないのだから。

 しかしそんなことよりもヒロトは、考える。

 今一番怖いのは、自分以上の強者だ、凪と俺が転移されたし、俺の知る様な者達が、もしもだが、来てしまっていたら危ういのは明白だ。


 この村に居た兵士はギネス達が難なく倒すことが出来たが、今この世界の何所でもこういくという保証はない。

 目の前の敵は脅威ですらないが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る