第25話 人類解放
「お待たせして申し訳ございません」
奥の部屋から村長の妻と思しき人が部屋に入ってくる。
村長の妻は村人達と少し話をしていたようだ、何故そんな事をしていたかは、聞くまでもないだろう。
「お待たせしました」
村長の隣に村長の奥さんは座った。
村長は奥さん同様体付きもがっちりしており毎日の訓練の賜物だろうというのが見て取れる。
頭に生えるブラウン色の髪は所々白髪が混じり、半分くらいは白髪が覆っている。
着ている服は半そで半ズボン、麻で出来た粗末なものだ、農作業の為か汚れも目立つが、匂うほどでない。
年齢は六十代半ばだろうか、顔に出た疲労のせいで年齢の判断難しい。
「この度は助けて頂きありがとうございました」
そのように辺りを見回していると、村長が
会話を振って来たので意識を会話に戻す。
村長と村長の奥さんは頭を下げて一番のお礼をしている。
しかしヒロトは二人をなだめる。
そうヒロトはお礼を言ってもらうためにここに来たのでは無い、情報が欲しいのだ。
「早速ですが交渉の話をしましょうか」
「ですがその前に・・・ありがとうございました!」
感謝の言葉と共にテーブルに頭をぶつけるのではないかと思う程の勢いで頭を下げる、村長の後ろに居る奥さんも感謝の言葉と共に頭を下げる。
「我々は貴方様が来て下さなければ、この場には居なかったでしょう」
これにはヒロトも吃驚する。
この人間の考えている事がわかってしまった。上手いがまだ表情が隠し切れていない。嘘の、偽りの言葉は長い年月を生きたヒロトにとってはもうすでに聞き飽きていた。
「顔を上げてください、私たちも無償ではなく助けたのですから」とその場の対応で流す。
「ですが命を助けて下さった御方にこれでは感謝が少なすぎます」
村長はその下げた頭を上げようとしない、このままでは全く話進む気配がしないが・・・
「その言葉は嬉しいのですが、生憎私達は今知人との約束を果たしに行かねばなりませんし、村長殿に頭を下げられる資格等ございません」
「そのようなことは御座いません、しかしお時間がないようでしたら分かりました」
頭を上げた、村長を確認した後、話を始める。
「私達が今一番欲しいのは情報です」
「金銭ではなく情報ですか?それは、何故ですか?」
村長は一瞬目を見開き驚いた様子の後質問をしてくる。
「先程も言いましたが、私は知人との約束を果たしに街まで行きますが遺憾ながら、我々はこの辺りの地理や文化も馴染みもなく少々不安でして」
「そうでしたか」
どうやら分かってもらえたらしく納得した表情をしている。
村長が奥の部屋へ行った。
上手くいけば俺がこんな情報不足にはならないはずだった。しかしアテナはこの世界の事は常識中の常識しか知らず、この国の名前と基本的な文化基準、魔法が在ることを知っていただけだった、その為今情報を集めている。
村長が奥の部屋から丸められた紙を持って来ていた。その紙を自分たちが座っている、前の机の上に広げた。
机に広げられたのは地図だ、少し見覚えのある地図だ。
その後村長がこの地図を使い大まかに教えてくれた。
この村はルベリア王国の領土内でその北東部に位置するバニドと言う村らしい。
バニド村から一番近い町で東に行ったところにアン・デアフェルスと言う城塞都市がありそこに行けばもっと情報が手に入るらしい。
アン・デアフェルスは南東に進んだ所の人外領との毎年紛争会場とかしている。
大陸有数の平原はこれのせいで開発が遅れている。
戦争と言ってもそこまで大規模な物ではない、いつも数日ほどで小競り合いは終わるらしい。
その他の大陸の国同士の関係的には、レリクセーズ第二帝国と、ルテニア帝国、イグレス帝国が三国協軍同盟に加盟している。
ここルベリア王国は五年ほど前までは仲の良かったレリクセーズ第二帝国とは年々仲が悪くなっている事だ。勿論戦争になれば、三国相手にどうにかできるはずはなく負けは確定する。その為にこっちも北欧帝国、ルメリア王国、オストマルク=オノグル二重帝国と同盟を結んでいる。
しかしそのどちらの同盟にも参加せず、どちらにも敵対行動を行っている国がある。
その国はルベリア王国の真南にある、地中海を取り囲むようにして成り立つ国。タサラ帝国である──魔法が発達していることから、法国と呼ばれる──
ローマ帝国の様な広大な土地を持ち、地中海を我が海としている国である。
エウロパ最大の軍事国家であり十三の神を信仰している多神教国家らしい。
王国より南東に行った所にはオストマルク=オノグル二重帝国があり。王国と同盟に入っていることから何かと縁があるらしい。
ルベリア王国と一番接地面が長いのは西にあるレリクセーズ第二帝国だ、先ほども言った様に今は少し国同士仲が悪いとは言え今でも交易などは、盛んに行われている。
その他にもエルフの国やダークエルフ、ドワーフなどの人間種やそのほかの亜人種の国や人間と一度全面対決をした、アンデット、悪魔、異形種などの国もある。
ここルベリア王国は一部の人間種とは貿易を行っていて敵対していないところもある。
「なるほど大体の国家の関係図は分かりました。しかし思っていた物とは大分違っているな・・・申し訳ない話を止めてしまって、もっと他の事も聴かせてください」
「あ、はい」
村長の話はそれなりに有意義な物だったが曖昧な部分が多々あった、ミラに精神支配の魔術をかけてもらっても良いが極力魔術を使わずにし、万が一に対処できるようにしておいた方がいい。
そうこうしている合間に村長の話も終わり、頭を整理する。
まず今日分かったことは、国家間の少しの関係図、大雑把な国の場所だけである。
その他の事は、アテナから聞いたことが殆どであり特に目ぼしい情報はなかった。
それにしても時間を割いてまで助けたが、それにしてはメリットが少々、少ない気もするが情報が入っただけでも良としよう。
村長にお礼を言い、家を出るとそこには村中の人が集まっていた。
しかし明らかに先程とは違う所がある、それは服装だ。
全員が統一のある服装をし、まるで魔術師の格好によく似ていた。
唐突に後ろの扉が急に開いた。
「本当にここまで来てくれてありがとう、狙いであった騎士団は来なかったが、お前達でも十分手柄になる」
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