第19話 大きな勘違い 小さな想い

 今ヴィルジナルがいる場所は自分の守護階層の氷界。

 時折南極を越える寒さを出すこの極寒の地。そんな中別段することもなく警備している理由は「自分の守護階層を警備及び強化」との事だった為ここに居る。その命令を下したヒロトからの呼び出しが来た。


「しかしなぜヒロト様は私を及びになったのだろう・・・?もしやヒロト様は私と一緒に・・・」


 ボッフン

 顔が次第に赤くなり爆発した。

 自分の勝手な想像を膨らませるヴィルジナルは、「今はこんな事を考えてはいけません」

 と自分に言い聞かせながらも、何所か嬉しそうな表情を作る。


 幸いにもここには今誰も居ないいが、もしも誰かいたら、どんな目で見られたか想像に難くない。

 それでも嬉しそうな顔をしながら、ヴィルジナルは第九階層のヒロトの部屋へと向かう。しかし九階層のヒロト様の自室まではかなりの距離がある。ここは少し改善すべき点として、提案しておこう。

 


 第九階層には敵の進入時に簡単に対処するために他の階層よりも入り組んだ構造が使用され認識系魔術の使用が制限されている。仲間であったらあまり不便はないが侵入者からしてみれば相手によってはだが、相当有利が取れる。その他に九階層にある玉座の間、禁書庫、大広間の3か所には、ヒロト本人の許可なしでは入る事ができないようになっている。それでもさらに厳重なのが第九階層の日本庭園、宝物庫、三極桜星域、にはヒロトの意志的な許可なしでは一切行くことが出来ない。

 少々急いだ方がよそさそうなので走って向かうことにしましょう。

 一方そこ頃ヒロトはと言うと……。


 

「ヴィルジナルは未だか、早く来ないとミラが出てきてしまう」


 ヒロトは焦っている。

 冷や汗を流し自由が効かない体でもその場の状況を把握しようとしている。

 もしもこの数分以内に助けがかなかったら、ヒロトはルターナにどんな事をされるかを悟っていた。

 そんな絶望の中希望の光が見えた。


「・・・ヒロト様ただ今部屋に到着しました。・・それでいまどこに入らっしゃるのですか?」


 当然のごとく今ヒロトは隠し扉の奥の部屋に居る。どんな感知能力や魔力感知も内側から以外とうさない術式を施している、その為ヴィルジナルの質問の理由がわかる。

 ヒロトはメッセージを繋げたまま話す。


「ヴィルジナルこれから、隠し扉の開け方を言うその通りに動かしてくれ」


 この隠し扉の開ける方法は、部屋に入って右の本棚の下から七番目の棚の左から十三番目の本、題名「銀のカギ」と書かれた分厚い本だ。

 その本をヒロトのデスクの引き出しの上から二番目の中に置くそうしたら、二番目に引き出しの横から銀色の鍵が出てくる、それを三番目の引き出しに差し込み鍵を開けてたら、中に短剣が入っている、それを押し込むと隠し扉が開く仕組みになっている。

 そうしてやっとヒロトの本当の部屋に入ることが出来る。


 そしてヴィルジナルは部屋に入る。まずヴィルジナルを出迎えたのはやたら広い廊下だ。

 この廊下には顔が映る程に研磨し漆黒の岩石で出来た床はまるで一種の宝石に間違える程である。一目見るだけで高級品と察してしまう敷物。

 その廊下の壁には、等間隔に長方形型の窪みがあった。

 その中はヒロトお手製の強化ガラスで守れている貴重品の数々。その一つ一つの財は、世界のどこにもないとわかる程のものだった。

 四角い箱の中に守られている物は、天秤、角笛、王冠、王癪、チェスセット、聖杯、宝石でできたバラ達。

 至高の物が飾られた廊下の左を向くとそこには、まるで本当に日の光が入って来ているかのように明るい坪庭があった。

 坪庭には、苔や竹が植えられた心が落ち着く場所だった。


「──綺麗・・・」


この世の美と観るにはとても申し訳ないほどにこの光景は完成されている。

 古代より多くに偉人は美しいものを求めてきたがそのどれもが遠く及ばない程に造形美に秀でたものであったのです。


 目を輝かせるヴィルジナル。

 ヴィルジナルが見ている物は五つの指輪が飾られている所だ。

 この指輪たちは、他の宝よりも異彩を放っている物だった。どの指輪にもただの指輪でないことはきっと、子供でも分かる代物だ。

 光を反射し輝く指輪にヴィルジナルは見とれてヒロトに呼ばれた事を忘れてしまっている。



 廊下に飾られた品々を見ていると「はっ」と我に返りヒロトの待つ室へと急行する。

 広い部屋の数々を抜けヴィルジナルは寝室の扉の前まで来た。


 扉の前で一度立ち止まり、衣服にシワや汚れが着いてないのを確認する。勿論この地下基地内は床や壁、天井に至るまで、完璧に掃除されているので、汚れることは先ずない、が自分の創造主たる御方に会うのだから、確認の一つや二つはして置くべきだ。

 衣服の確認をし終わると、扉に「コン、コン、コン」と三回、ノックする。

 すると中から「ヴィルジナルか?入ってくれ」

 とメッセージでも聞いた声が聞こえてきた。

 それは、ヒロトの声だった。しかしその声は少しボリュームを下げていた。

 ヴィルジナルは寝室の扉を開け、部屋の中に入る。


「失礼します」


 完璧なお辞儀をして扉を閉める。

 そしてヴィルジナルは、ベッドに横たわる姿を見る。



「ヒ、ヒロト様未だ私は、こ、心の準備が未だ」


「何をいっているんだ?そんなことはいいからこれを解除してくれ」



 ヴィルジナルの妄想から始まった妄想はヒロトの言葉によって打ち消され、思い出の中にそっとしまうことにする。


 ベッドの上で動けないヒロトにかかった術の解除をヴィルジナルは始める。

 数分後何とか術の解除が終わり、自由に動ける様になった。

 一時はどうなるかと思ったが何とか助かった。


「すまんな、ヴィルジナル、こんな事でお前の力を使って」

「滅相もございません、主のお欲に立つのが我々の願いで在り、喜びなのです」


 そうしてヴィルジナルは自らの忠誠心に「自分ももっと、チャンとしなくては」と誓った。


 ヒロトとヴィルジナルが部屋から出ようとしたとき目の前の扉がゆっくりと開いた。

 開いた扉の前に立っていたのは紅い目に腰まだある長いクリーム色の髪のある、吸血鬼少女のミラだ。バスタオル一枚で体を覆っているだけで他は何も身に着けていない。

 どう思ったのかヴィルジナルは怒った表情でルターナを睨みルターナに問う



「ルターナどうしてここに居るのでしょう?」


「ヒロト探してたらここに着いただけ」



 と言い二人の視線が火花を散らす。

 そこでも眺める事しかできないヒロトは、さっきの自分の誓いを思い出す。


「そこまでにしろヴィルジナル、ルターナ」


 二人に少し怒りの口調で言うとシュンとなり黙り込む。


「申し訳ございません、無礼をお許しください」

「ごめんなさい」

「まぁ、分かってもらえたら良いよ」


 二人はヒロトに怒られたが、納得はいってなさそうだ。そこでヒロトが作った特殊な効果が着いた指輪を二人にあげると少しは、元気になったので一安心。

 リビングでヴィルジナルに入れてもらった紅茶を飲んでいると、メッセージが届く


『ヒロト様』

『んっ デロギスかどうした?』

『はっ 周辺の地理を視認していた所、少々問題が発覚しました』

『分かった 事情は俺の部屋で聞く、直ぐに探索を中止して戻って来てくれ』

『はっ』


 そこでメッセージは切れる。

 ヒロトはその問題の事を考えていると、ミラ達がこちらを見ていたことに気が付く。

 きっとヒロトが心配になったのだろう。


「安心してくれ、大丈夫だ」

「ヴィルジナル、ルターナ俺は少しデロギスとの大事な用が入った、その間自分の階層に居てくれ」


 二人は分かってくれヒロトに挨拶をした後部屋を後にした。

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