第13話 創世されし世界{後}

ここ四階層は、半径百メートルになる、草原だ、この草原のほぼ中心には、一つだけ大きな木が生えている。幹はそれほど太くはないが、地面に突き刺さる根や。大きく広がった枝葉を見ればその生命力の高さは自ずと伝わってくるほどだ。

 その守護者の名前はブレニン・クレジヴル

 この階層は漆黒の騎士が一人で守っている。他に生き物はいることはなく、ただ一人ここをひたすらに守り抜く、それが彼である。そしてこの基地で白兵戦が最も得意な者だ。

 ブレニンの姿は全身フルプレートで顔も見えない、しかし外を見るための、隙間からは赤い眼光が伺える。そしてこの防具は胸の中心から紅い筋が走り、生きているかのように脈を打っている。

 そして、ヒロトがブレニンを作り終えこの基地の説明を話し終わると、ヒロトは頼んでおきたいことを言う。


「ブレニン、後の用事がまだ残っているが頑張ってくれ」

「… Oui, monsieur.」


 ブレニンは片膝をつき頭を下げたまま、言葉を述べた。

 ヒロトは会話が終わると、ブレニンにこれからの仕事を大まかに伝え、第五階層へ行く。



 ブリザードが吹き荒れるこの場所は第五階層の氷界である、この階層は半径一キロほどの階層だ。極寒のこの地は、多くの生物が生きながらえない過酷な環境。

 500mにも達する分厚い氷、無機質な岩、高く積もった雪、それら全てがこの環境の過酷さを示して、見るだけでその寒さが伝わる。

 この寒さのために、極寒用防寒具を着込んでいる。

 この階層の主は透き通る様な白い紙髪に、白銀の鎧を着た魔術剣士のヴィルジナルだ。ヴィルジナルは主に氷系の魔術を得意とし、冷気の扱いに長けている。

 保有しているスキルも強く超接近しないと当たらないが、強力な術も持っている。

 この分ならもう剣は必要なく魔術師として戦えば良いと思うがこれにも理由がある、一つは相手が同じ位強い場合の幅広い対応、二つ目は相手が弱く手加減の為、三つ目は魔力が切れた場合、この三つの事からヴィルジナルは剣を持っている。

 このヴィルジナルの持つ剣はブレードが少し細くレイピアに近い剣になっている。


「では今から私は、貴方にお仕えします」


 ヴィルジナルは片膝をつき、そうヒロトに誓った。


「ああ よろしく頼む。それとヴィルジナルに頼みがある」


 ヒロトがそう言うとヴィルジナルは、「何なりとお申し付けください」

「それじゃあ、これから第六階層以外の全主を第九階層の会議室に一時間以内に集めてくれ」

「はっ直ちに行います」


 各階層守護の主たちにはそれぞれ専用の懐中時計を渡しており、この世界でも時間を測る術を持っているので時間道理に行動できる

 ヴィルジナルはヒロトが移動するのを見届け後、直ぐに第一階層の主を呼びに行った。



 ここ第六階層には溶岩やいくつもの火山が噴火を繰り返している。ここに居るには、悪魔と言った、地獄や冥界にいる生き物が多数配置されている。例えば七つの大罪等や第六階層三大悪魔の公爵エリゴス、もう一人の三大悪魔アンラ・マンユやここの番犬ケルベロスがいる。

 ここ第六階層の主は赤と黒の色がついた鱗がついている。背中には首から尾にかけて、棘か生え、背中には巨大な翼があり、羽ばたくたびに突風が吹く。爪や牙は大きくどす黒い赤色でその口からは光速の回避不可能なレーザー攻撃

 こいつの名はデロギスという巨大なドラゴンだ。性格は見た目に反し冷静で紳士的、頭脳明晰ときた。

 デロギスはオーストと同じ様に人間の姿に変えることが出来る、その姿は羽と尻尾が生えた、イケメンの男だ。

 デロギスはヒロトに言われた通りに人間に姿になり、一緒に第八階層に向かう


「はー これでもう三回目だ」


 溜息をを吐きながらなぜヒロトがこんなことを言っているかとゆうと、今のヒロトにはもう魔力がもうほとんど無いのだ、創造具象は便利だが、魔力の減りががなり早く、ヒロトの様な魔力が多い者でも、直ぐになくなってしまう。と言っても全体の魔力のうち、数%しか使う事ができないため頻繁に枯渇するのだが。

 その為、ヒロトはあのダンジョンに行く前に貰った魔力回復のポーションを飲んでいた。

 魔力回復のポーションと言うものは、あっちには無かった、これもこちらの特産品・副産物的なものかも知れない。

 最後のポーションを飲み終わるとヒロトはここ第八階層で一番高い塔に行き、眺めていた。


「ヒロト様がお創りになられた、この場所は、素晴らしい眺めですね」

「そうか? 自分で作ったものが褒められるのは小恥ずかしいな」


 照れくさそうに、頭を掻きヒロトは風景を少し賞翫していた。ここの階層のテーマは滅びた古代都市だ。


 古代アテナイのアクロポリスは、ペルシア

戦争に勝利し海上交易における覇権的地位を確立した、ギリシア第一のポリスとなり、軍事のみならず経済の中心都市としても発展した。また、先の戦争において市民による重装歩兵が都市の防衛の主役となったほか、海戦における軍艦の漕ぎ手として無産市民も活躍したことで彼らも政治的地位を向上させ、軍事民主制による政治体制が確立されていった。こうした状況下で、優れた政治的指導者であるペリクレス将軍統治の下、アテネは繁栄した。

 しかし精鋭スパルタ軍に敗れた後のアテナイには三十人政権と呼ばれる寡頭制政権が成立し恐怖政治を敷いた。間もなくトラシュブロスによって寡頭制は崩壊し富裕市民の合議制に戻ったものの、海外領土および隷属都市を失ったアテナイの経済力は衰退し政治が大きく乱れた。コリントス戦争後、紀元前377年に再度海上同盟を結成するなど国力を回復したものの、かつての勢いを取り戻すことは二度と無かった。紀元前357年に起きた同盟市戦争により同盟市に対して大幅な譲歩を強いられ、紀元前338年にカイロネイアの戦いでマケドニアのフィリッポス2世に降伏してからはデモステネスの抵抗も空しく政治的独立性を失いアレクサンドロス大王とそれに続くディアドコイの帝国に編入された。アレクサンドロス大王の死後反乱、ラミア戦争を起こしたものの、短期間で鎮圧された。ローマの支配下となった後は文化都市として栄えたが、域内完結型のローマ経済圏において生産力の乏しさから徐々に衰退し、6世紀頃までには東ローマ帝国の一地方都市となった。

 あそこまで発展し地中海の覇権を握ったアテナイは衰退し今はもうパルテノン神殿を見る事しか叶わない、しかしここには今ヒロト達が作り上げてヒロトたちが居る。


 ヒロトとデロギスが話している所へ黒いスーツの様なものを着た者が、影の中から出てきた。


「ヒロト様 ご予定の時間がまいりましたのでそろそろ」


 と言って来たのは、ヒロトが召還したアサシンのラシードだ。こいつは影の中を自由に動くことが出来る者で、動きも素早く戦うと厄介な能力も持っている。何所かに行く際にヒロトの警護をしている者だ。暗殺者から身を守るには確かにガチガチのボディーガードもいいかも知れないしかし、ボディーガードはどこまで行ってもボディーガードだ、暗殺者の気持ちがわからない。故に同じ暗殺者を護衛として雇うのだ。かと言ってボディーガードなしではない。最後の切り札として暗殺者は利用するのだ。

 そしてヒロトは話を進める。


「分かった直ぐに向かう デロギスも来てくれ」

「喜んで、ご一緒させて頂きます!」


 ヒロトはデロギスを連れ、ヴィルジナルに伝えておいた場所に向かう。

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