第11話 クラスの今とこれから

勇輝達は今宿屋に居た。


「赤崎はまだ起きないか?」と、勇輝が舞に聞く。


 香織は今、ヒロトが眠させて一時間程経っていた。

 今、この一行は誰もが下を向いて暗い顔をしている。今まで普通に生きてきてまともにいられる方が稀である。何せ自分たちは仲間を置いて自分達だけが逃げ帰って来たのだから。

 皆が落ち込んでいる時、香織が目を覚ます。


「か、香織!やっと目が覚めたのね!」


 舞は香織が目を覚ましたことに気づき声を掛ける。

 そして皆が駆けつける。

 すると香織は辺りを見渡し、また舞を見て言った。


「ここはどこ? 私は確かダンジョンに居てそれで、有栖川君が・・・そうだ舞!有栖川君、有栖川君は何所に居るの!」


 香織はもう一度辺りを見回してから、舞に聞いた。


「香織、先ずは落ち着いて! ちゃんと説明するから」


 そして香織は舞にそう言われ、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 香織が深呼吸をして落ち着きを取り戻し、舞に話を聞く。

 その後香織は自分が眠ってからの話を聞いた、舞とヒロトが約束をしたこと、逃げている時に聞いたとても大きな音の事、それらの事を舞は香織に話した。


「舞 じゃあ今、有栖川君は何所に居るの?」

「そ、それは・・・」


 香織がそう聞いてきたが、舞は答える事ができずに口ごもる。その答えは余りにも無慈悲でどうしようも無く、考えたくもない答えだからだ。

 そこに舞を助ける声が上がる。


「赤崎もしかしたら、アリスは今ギルドに居るのかもしれないから先ずはギルドに行ってみよう」


 そう言って舞が困っていたのをフォローを入れて助けるヒロトの友人。

 その言葉を無駄にしないように、舞も香織に言葉を掛ける。だがこの回答も一時の時間稼ぎにしかならない。赤崎と、クラス勢員自らを騙すため、現実を受け止めないための。


「そうだよ 香織!きっとギルドの方で待ってくれてるよ」


 そう言うが、香織はまだ少し落ち込んでいる様子だ。

 それでも、行くあてもない勇輝達一行はギルドへ向かう。

 


 勇輝達一行はあのギルドの前に居た。

 皆は少し戸惑っていた、その理由は分かる、ここにヒロトが居なかったらと、思っていて罪悪感があるようだ。

 それでも一行は扉を開け中へ入る。

 勇輝達一行が中に入ると自分たちに目線が集まる、何やらヒソヒソと話している。


 それもそのはずだ、何故あんなに気前のいい依頼が残っていたのかと言うと、あのダンジョンに出るモンスターが強いからである。それでもフリークエストであったのは、ギルド側の意向である。その真意は当事者しか知り用がないが。


 それを生きて帰って来たのだから噂されるのも当然である。

 そんなことは分からない勇輝達一行はヒロトを探す。


 しかし、いくら辺りを見回しても、いくらい周りの人に聞いてもヒロトの姿は無い。

 その後受付の人にも聞いてみたがそんな人は来てないと言う。

 その事を聞いて勇輝達は顔を下に向ける。


 しかしその中にも、落ち込んでいない奴がいる、それはいつもヒロトをよく思っていなかった園部だ。

 園部は皆に聞こえない声で何かいていた。


「そ、そうだ あ、あんな奴は死んで当然だ」


 園部は昔から有栖川のことが気に入らなかった。この思いは小学生の頃から変わっていない。あの何処か他の人とは違うナニカを持つ、認められた存在に嫉妬していた。


 舞が香織に言った。


「香織 きっと今あのダンジョンで迷っているのよ、だから探しに行こ?」


 そう言うと香織は少し元気を取り戻しあのダンジョンに行くことを決意する。この言葉は自分にかけている言葉でもあった。人を励ましてはいるが自分の心配で仕方がなかった。


自分のたった一人の幼馴染、私が向ける興味はいつしか好意に移り変わっていた。


 そこへ、ギルドに一人の衛兵が急いで入って来た。

 その衛兵は取り乱しながら言った。


「ハンターの方に報告です! 先程、ペーレイの南西にあるレキアの大樹林に不審な建造物が出現。討伐隊を編成せよ、との王命令が出されました!!」


 その衛兵の言った言葉でこの場に緊張感が巻き上がる。

 その最大の理由は王の命令ということだろう。国の最高権力者からの依頼これほど重大な任務はない。


 そこへ、ここ王都のギルドのギルド長がその衛兵に問う。


「なぜそんなことで王命を、討伐隊を派遣せねばならん」


 と、ここのギルド長のガルト・ガートが出てくる彼は歳が何と八十にもなるじいさんである、しかしその体はとても八十のご老体には見えないほどマッチョなのだ。

調査隊を飛ばして行う意味そこまでして急ぐ理由はなんなのか?

 そして衛兵は、ガルトの質問に答える。


「はい その理由は・・・ある者が造ったのです」

「造った? どうゆうことだ 誰が造ったのだ」


 と、ガルトが衛兵に聞く。

 先程現れたといっただから造ったというのは少しおかしい。だからどちらかと言うと、出てきた方がまだわかる。

 と、ガルトはそう思っていた。


「はい 十七歳くらいの少年が何と物の数分で巨大な建造物を造ったとの事です」


 その言葉にこの場に居た誰もが騒然としていた。


 この世界でもそこらでそんな巨大な建造物を造り出すのは不可能である。

 しかし、その皆が驚いていた中に居た勇輝達一行も驚いていたが、それを誰が建てたのか心当たりが合った、それは皆をダンジョンから逃がすために、あの巨人と戦った、ヒロト達である。

 最後に見せた剣を作り出した能力。規模は違えど、予想は間違い無いだろう。


「・・・大体の事は分かった・・それで・・何人の討伐隊が必要なのだ?」

「はい 命令では最低でもここに居る全員が必要とのことです」


 このギルド内にいる冒険者の数は勇輝達一行も合わせて凡そ六十人いる。


「今ここに居るのは何のチームだ?」


 そして、隣にいた、受付の女の人がそのチーム名を順々に言った。


「分かった  これから緊急でこの依頼をこの全員で依頼を受ける。 聞けハンター達よこれは王命つまり、王直属の依頼だ!気張れよ。少しでも武功を上げたい奴は行くぞ!!」

「「「おおおおおぉぉーーーー!!」」」


 勇輝達もヒロトの居る場所に、進軍する準備を開始した。

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