第10話 次の目標
ここは、第九階層中央エリアの会議室。
ヒロトと先程、創造具像でヒロトが作った一階層のリーダーのルターナと神人のアテナとその護衛の智天使ケルビム2体と妹の凪がここには集まっていた。その面々の顔付きは穏やかなものとは言い難かった、取り分けルターナ以外の者の顔付きは、非常に悪い。
いや、決してぱっと見では、特に方向の変化はないのだけれど、その漂う雰囲気からルックスでは想像できない恐ろしさと言うか、恐怖を秘めていた。
会議室の席は四人しか座ってないため、スカスカの状態になっている。この光景は昔見た覚えがある。あれはまだ俺がこの世に生を受けて間もない時の遠い記憶の狭間。俺が人類の味方であった時の──
この円卓は漆黒に輝く鉱石を磨いて作った物で黄金の装飾を施してある。その輝きは顔が映る程だった。
取り分けそれ程顔が鏡に映ったみたいに、映ろうが需要はないが汚いよりは、遥かに良い。
ヒロトが座る席は他の席とは異なり豪華な作りになっている。一番上の立場なので、他の椅子と差別化を図っている。
その沈黙状態の中ヒロトが口を開ける。
「そ、それじゃあ二人に紹介するよ、吸血鬼のルターナだ」
ヒロトがルターナを紹介すると、この場の空気が一層重くなった気がする。
そしてまた、沈黙が続く。
他の吸血鬼を見たのはいつ振りだろうか、数年はあってもいない、ずっと街に籠ってあのクソッタレな監獄から出たのは良かったが。しかしあまり不便はしなかった。
よもや俺が作ることができる様になるとは夢にも出てこない。
あの時、あの大戦俺は必死だった、思いもよらぬ攻撃を受け。ただ彼女を助けるのに必死だった、だから私は、自分のを失うことにした。
「お兄ちゃん! またこんなに、かわいい子連れてきて!」妹の叫びで沈黙の空気が溶ける。
凪がヒロトに強い怒りの目を向ける。
その事にアテナも賛成の様で凪の言葉にうなずいていた。俺の味方はしないらしい、正解である、凪は俺より強い。
凪はヒロトだけではなく、ルターナの事も少し睨んでいたが、ルターナは、キッチンから出したお茶を飲み全く気にしていない様子だった。
「別に、女の子を作るつもりじゃなかった」
そうワザとではないのだ、わざとでは。
ヒロトがそう言い訳をするが、凪はまだ怒っている様だ。
そしてまた沈黙が続く。
気まずい空気、冷や汗が止まらない。相手が相手なだけに空気が鉄のように重い。
沈黙が続き、そこで凪がため息をつきやっと許してもらえたようだ。許すよりも観念とか諦め的なところか。
「分かったよ、許してあげる けど次はないからね、あの人という存在がいながらお兄ちゃんは」
まだ少し怒っている様だが、許してもらう事が、出来た。何故許しってもらったのかわ分からないが。
凪とヒロトの会話が終わり、次にアテナが質問してくる。
「所でヒロト様 いったい、話とは何ですか?」
その質問に、ヒロトは気持ちを切り替えて答える。
「ああ、話というのは、これからの方針についてだ」
ヒロトの答えにアテナや凪も納得しているようなので話を続ける。
「で、具体的に何するの?」と、凪
「先ずは、この拠点の強化だ、まだ一階層目にしか仲間がいないから防衛がしにくいだろうからな、召喚もしつつ防衛機能の向上を図る。あとクラスの皆とも会う約束したからそれを守らないとだ」
クラスと言うよりは香織と舞だが逢えてクラスと言う。
ヒロトのその答えには、皆納得の様子だ。
「お兄ちゃん召喚ってどうゆう事?」
唐突に凪が質問を投げかける。
凪は結界術一本なので降霊術に疎いのだろう。
「召喚って言うのは、主に降霊術と言われる魔術の一つだ、儀式魔術などで座などに呼びかけ、触媒や死体にその魂を映らせるものだ、例えばここにペンが在るだろ」
俺はおもむろに部屋の隅に置いてある万年筆を手に取る。
「これが体として代用するとしよう、するとこの体か術者に少なからず干渉する者が座から呼ばれるその時に応じれば入る、まっ大体がエーテル、大元素で出来た体を基に現れ、その過程で自由意志がついたりつかなかったりする。召喚術を極めると、高位存在や超越的存在、英霊などを呼ぶこともできるが、なかなかシステムやプロトコルを理解するのに時間が掛かる」
「つまり、降霊術は体を作り呼びかけて応答してくれたら成功するの?」
ヒロトは、そうゆう事、と言いながら首を縦に振る。
「ま、超越存在の召喚なんかは外界とかに呼ぶことになるし、用意する鍵が必要になるからそう上手くは行かないんだ。俺の知り合いのコレクターはそれに特化した戦闘をしていたし、そいつ何を血迷ったのか……っと関係ない話は置いておいて、何か質問はないか」
「成る程、今度試してみるよ、その前に何か面白い暇潰し的な所ないの」
「うんー 特にないかな、この九階層のスポーツエリアか大図書館に行って来たらどうだ?」
ヒロトが凪とアテナに言うと凪は目を輝かせヒロトにもっと近づきまた質問してくる。
「もしかして、お兄ちゃん!お風呂とかあったりするの?」
ヒロトは顔を近づけられ、少し驚きながら答えた。
「あ、ああ勿論、大浴場があるぞ」
と、ヒロトが言うと凪は、一層喜ぶ。
こっちにきてからそう時間は経過していないが、緊張とか、環境のせいで、汗などを洗い流したいのかも知れない。
「よ、よしもう質問はないか」
皆質問はない様なので手を上げないがヒロトは隣にお茶を飲んでいる者に聞いた。
「ミラはなにかないか?」
ヒロトが聞くとコップを置きルターナは答えてきた。
「うん ヒロトと一緒に居ればいい」
と、またこの場を凍りつかす、様な事をさらっとルターナは言った。
そして凪とアテナはヒロトを睨んでいた、そのことにヒロトは気づき急いで誤魔化す。
「そ、そうなのか、あは あははは」
ヒロトは、ぎこちない笑いで誤魔化すが、二人の視線は動かない、とゆうより先程よりも二人の視線が鋭くなった気さえする。
(よし、逃げよう)
「それじゃあ、会議も終わったことだし、解散!」
それを言い終わるとヒロトは凄い勢いで走っていく。
「あ! 待ってお兄ちゃん!まだ話しは…」
凪が言い終わる前にヒロトは行ってしまった。
「「はー」」
凪とアテナが一緒に深いため息をつく。
その後、凪はアテナを大浴場に誘って話しながら歩いて行った。
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