第9話 生命の創造


 その少し前では今ヒロトは第一階層に居た。

 なぜここかと言うと、ここは敵が入って来た時の最初の防衛線になるため、今侵入者が入る前に監視網と防衛線を構築する事が目的である。幸いここは、巨大な森であるが生物の侵入すらされていないほど、生き物が少ないようだ。羽虫一匹入っていないのである。


「アテナのあの力は素晴らしい、あの大蟹には勝てないが死輩の中には入る程だろうな」


 俺も魔法使いの一人ではあるがあの大蟹は殺せない、魔法をもってしても。今の俺全盛期を超えた今をもってしても超える事ができない。


 昔あいつの捕獲を試みた、先代の死輩第三位が瞬殺されたと知った時は驚いた、このことを知った教会と協会の上層部も、度々討伐隊を送るそうだが。

 ヒロトは能力でモンスターを出す。モンスターを作り出すのは物を作るよりも難しく消費する魔力も多くとても疲れる。


 そうしてやっと出来たのは、魔術師のオーバーロードだ。骸骨の姿で漆黒の禍々しくもこれも高貴の生まれであるかのような高価なローブを着ている。


「貴方様が私を創造してくださった方ですね」


 意外にも、丁寧な言葉使いにヒロトは内心少し驚く。


「ああ そうだ」


 オーバーロードは深く頭を下げた。服従を意味するその行動は完璧だった。


「早速だがお前に仕事をしてもらいたい、ここにお前が出せる一番強いアンデットを出してくれ」


一番強いというのは変な煽り文句みたいだし少し曖昧だったかもしれない、しかしそんな心配も虚しく、ヒロトがそう命令するとオーバーロードはアンデットを召喚して見せた。


 オーバーロードが使っている降霊術と言うのは、肉体を執拗としないものとする物の二種がある。肉体を使う場合は体がどの様な方法でも意識がないもしくは死んでいる状態でなくてはならない、一つの体に二つの魂が入るのは吸血鬼などの特別種のみでそれをやってしまうと体が壊れてしまうのだ。

 一方、肉体がない降霊術は、使用者の魔力を使い、それを物質に近い形に施した、エーテル体での活動が基本となる。魔術師の中でも降霊術召喚術を使う者は少ない、それはその術の難しさが相まっている。降霊術召喚術は最も魔法に近い魔術として、業界の間では有名である。

 俺が使う創造具象も生命を作る際には魂が必要となる。その場合俺は大抵人類になの未発見の英雄の魂を使っている。


 召喚されたそのアンデットの名はエルダーデスロード、全身を禍々しいフルプレートで覆っており身長は三メートルも在りそうだ。

 右手に持つ剣は先の方が少し枝分したり返しがついて居り当たったら一溜まりもない事が見て取れる両手剣。


 左手に持つ盾は巨大なデュエリング・シールドそれを容易く扱う姿はまさしく化け物。

 そんな化怪物が5体も召喚されている。


「よし ありがとう 次にお前の中で強いと思うアンデットを出来るだけ出してくれ」


 ヒロトが次の仕事を言うとオーバーロードは、丁寧に返事をしてそれを実行に移す。

 それを行っている間にヒロトはここの、リーダーを創造具象で作り始める。それから十数分が経過した、ヒロトが守護者を作り終えていると、少し前に頼んだことを終わらせていたオーバーロードがヒロトを優しい目で見守っていた。


 勿論、目は無い。オーバーロードが召還したのは、ドラゴン・マジシャン八体だ。生前ドラゴンを倒した魔術師の成れの果ての姿。

 常時宙に浮き王冠を被った霊の顔は生ける者を怨んでいる顔であった、正しく憎悪に満ちた。


  ヒロトが創造具象で作った者は、紅色の目をした少女のヴァンパイアである。

 何故少女になったのかは自分でも分からない、この創造具象は作るものの性能は決められても具体的な見た目は決められない、強さの故に色々とペナルティもあるのだろう。こんなものはペナルティーにも入らない些細なものだが。


「私を作ってくれて、ありがとう」


 少女が敬語を使わないのは、彼女の元となった魔術師がそう言った性格の人物だったのだろう。

 少女はヒロトに向かって小走りで来てヒロトに抱き着いた。


「ちょっ・・・」


 その事にはオーバーロードも驚いている様だった。

 勿論ヒロトは、このような行動をする様に作った事は、覚えていない。


「うんー そろそろ 離れてくれると助かるのだが~」


 ヒロトは困った様子で少女に伝えた。

 それを聞いた少女は少し悲しそうな顔をしたので、ヒロトはしょうがないと、思い答えた。


「・・・わかったよ でもそれじゃあ動きにくいから、おんぶな」


 それで納得した様でヒロトも安心の様子だ。

 少女はヒロトに言われたどおり、ヒロトの背中に飛びついた。ヒロトは筋力は吸血鬼の中では非力な方であるが、少女一人担ぐくらいどうと言うことはない。


「そうだ 二人ともちゃんとした、名前を決めないか、このままじゃ呼び難いからな」


 それを言われた少女は嬉しそうな顔をした、オーバーロードは表情がないため、分かりにくいがカチャカチャ言っているため、きっと嬉しいのだろう。


「何か希望はあるか、あったら言ってくれ」

「ヒロトが決めて」

「私もヒロト様に決めてもらった方が良いかと」


 ヒロトは、そう言われ少し考える。

 俺はは悩んだ。こういうのは慣れない確かに親はこの名を付けねばならない決して親でなくてはならないわけではない、だが、この二人は既に意思を、自分の自我を持っている。この場で決めないのは良いものとは言えない。

 俺は末に名を与える。


「君の名前はルターナお前の名前はイーヴンでいいか?」


 二人は何の不満もないようで、ルターナは満足気に答えた。


「うん・・・これでいいよ」


 イーヴンはとゆうと、隣で泣いている(目がないので涙は出ない)ようなので、スルーする。


「そうだミラこれを渡しておくよ」


 ヒロトがルターナに渡したのは、指輪型のマジックアイテムだ。


「これは何?」

「着けて置くと魔力を余剰分備蓄できる代物だ」


 俺もこの類の装飾品はいつも身につけている。最大値を増やすことは、戦闘においてもこういう作業などにも大いにその大切さを発揮する。

 それをルターナは、何故か薬指にはめる。


「イーヴンはここに残り、引き続き、アンデットを召還してくれ ミラは、俺と一緒に来てくれ」


 ヒロトはルターナをおんぶしたまま第九階層へ行く。

 イーヴンの温かい目線を向けられて。

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