第163話 一段落とご奉仕指導(前編)

 めちゃくちゃ更新が遅れてしまって申し訳ありません。162話までのあらすじまとめも更新していますので、内容を覚えていないという方はそちらをちらっと覗いてからでもよいかもです。


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「色々とやることは山積みすぎる状況ではあるが……ひとまず今日は国が救われたことの祝いと、なによりお主らの働きに敬意を表して宴じゃあああああああ!」


 鏖魔剣に操られていた熊獣人シグマ率いる〈強王派〉の古龍テロ事件をどうにか解決した二日後。


 極度の疲労で眠り続けていた僕やアリシアたちが目覚めると、〈牙王連邦〉の盟主、象獣人のアイラ女王は大声でそう宣言した。


 僕たちが眠っている間に古龍出現によるパニックやシグマ襲来による人的被害、建物への被害などはある程度収集がついていたらしい。


 僕たちの存在があまり知れ渡るのはよくないため、宴は信頼できる王族や国家騎士団上層部だけが参加する小規模なもの。けれどそのぶん貴族出身の僕やアリシアでさえ驚くほどの高級料理や飲み物が所狭しと並んでいた。


 そのあまりに豪華な宴席に最初は少し気後れしていたのだけど、


「ほれほれ今日の主役はお主らなんじゃから遠慮せずいくらでも食うがよい! こっちの酔いどれシスターやアホっぽいエルフを見習ってなぁ!」

「極上のお酒がいくらごっくんしても出てきますわー! このままだと神聖な王城でボテ腹を晒してしまいますわー!!」

「うひょー! 男根運びなんて底辺の職業ランキングぶっちぎり一位な仕事に就かされたかと思えば最終的にこんな美味しい食事にありつけるなんてやっぱり私は豪運のハーフエルフですねー!」


 アイラ女王やイリーナ獣騎士団長以外にはまだ教会の最高指導者〈宣託の巫女〉とは知られていないシスタークレアが醜態をさらしまくり、キャリー・ペニペニさんもそれに釣られて大はしゃぎ。

 さらにその隣でアイラ女王も遠慮なくお酒を飲みまくって格式もなにもあったものではなかったので(テロ集団によって国が崩壊するかもしれないというプレッシャーは当然ながら相当なものだったらしい)、僕やアリシア、ソフィアさんも遠慮なく料理を楽しむことができた。


 そうして。

 シスタークレアの醜態に頭を抱える護衛シルビアさんや、アイラ女王のハメ外しっぷりに苦言を呈しながらも笑顔を見せるイリーナ獣騎士団長たちも交えての宴も終わり、僕たちは王城に用意された寝室へと戻ってきていた。もうお腹いっぱいだ。


「凄く美味しい料理だったなぁ。〈ヤリ部屋〉の中に結構な量を保管させてもらったから、あとでコッコロやアクメリアたちにも食べてもらわないと」


 教会の最高戦力〈十三聖剣〉としてある程度は顔が知られているコッコロやヴァージニア姉妹を〈牙王連邦〉に残しておくわけにはいかず、彼女たちは今日この場にはいなかった。ヴァージニア姉妹は前線都市シールドアに、コッコロは引き続きスパイとして神聖法国に戻ってもらっているのだ。ちなみにスライムの眷属ペペは僕の懐に分体が常駐しているので、少しご飯をわけてあげることができた。


「さて、明日からはまた忙しいだろうし、今日はもう寝ようか」


 なぜかアリシアの命を狙う教会が〈強王派〉を裏で支援していただろうことといい、〈強王派〉トップがあのドス黒い気配を持つ規格外の魔剣に操られていたことといい……大きな事件を解決してなお、対応しないといけないことは山ほどあるのだ。


 そもそも〈牙王連邦〉に来たのは、どんどんキナ臭い部分が明らかになっていく教会に対抗すべく国家規模の同盟を組むためで。今回の〈強王派〉騒ぎ平定はそのための第一歩にすぎない。明日からは教会対策について色々と本格的に動いていくことになるだろう。


 そんなわけで今日ばかりはアリシアやソフィアさんとの仲良しも数回に留めて眠りにつこうとした――そのときだった。


 コンコン


 寝室のドアがノックされる。

 誰だろう、と思って出てみれば、


「夜分遅くに失礼いたします」

「イリーナさん?」


 そこには身長2mを超える大柄な女性、この国最強の戦士であるイリーナ獣騎士団長が立っていた。


 一体どうしたんだろう。

 というか前にもこんなことがあったような……。

 と思っていると、僕の後ろから狼人ソフィアさんがひくひくと鼻を鳴らして、


「もしかして……発情期ですか……?」

「ち、ちがっ!? 変なことを言わないでいただきたい!! 今日は違います!」


 ソフィアさんがぽつりと言った言葉をイリーナさんが顔を真っ赤にして否定する。

 

 ……今日は?


 なんだか少し不穏な物言いだたけど、僕がそこを掘り下げる前にイリーナさんが「ごほんっ」と仕切り直すように咳払い。


「今日はそれがしではなく、こちらの者がエリオ殿に用があるのです」


 とイリーナさんがその大きな身体を横にずらしたところ、


「……よう」


 その影から現れたのは、肩の長さまで伸びた綺麗な黒髪と鋭い目つきが野性的な魅力を引き立たせる美人。熊獣人のシグマさんだった。


 その意外な訪問者に僕は目を見開く。


「シグマさん! 目が覚めたんですね、良かった! えと、あれから体調は大丈夫ですか?」

「ああ。おかげさまでな。怪我は国のヒーラーが治してくれたし、お前らのおかげであのクソ魔剣の悪影響もまったくだ。この動きづれぇ手錠がうっとうしい以外はひとつも問題ねえよ」

  

 最硬金属アダマンタイトと耐魔法性能に特化したオリハルコンで作られたゴツい手錠(僕の男根から作ったものではなく、強力な犯罪者を拘束するための特注品だ)をじゃらりと揺らしながらシグマさんが荒っぽい笑みを浮かべた。


 アリシアの強力な一撃で鏖魔剣から解放されたシグマさんはあのあと、〈牙王連邦〉の獣騎士団によって拘束されていた。あの怪しい魔剣に操られていたことが明白だったとはいえ、ここまで国を乱したテロ組織の指導者だったのだ。情状酌量の余地はあるにせよ、その扱いは慎重にしなければならないということで治療を受けながらひとまず幽閉されていた。


「ええと、それでだな……今日はここになにをしに来たかっつーと……」


 と、元々〈牙王連邦〉の裏社会で強い影響力を持っていたのも納得な女傑らしい笑みを浮かべていたシグマさんが、不意に言葉を濁して僕から顔を逸らす。


 そういえば。いまはまだ幽閉されてないといけないシグマさんがわざわざイリーナさんの引率までつけてこんなところに来るなんてどうしたんだろう? と改めて思っていると、


「ああクソ……やっぱいざとなると……」

「なにをモジモジしているのだシグマ。誠意を見せたいと言ったのはあなただろう。早くそれがしが教えた裏宮廷作法でエリオ殿に誠意を示すのだ」

「わ、わーってるよクソが!」


 なにやらイリーナさんにボソボソと吹き込まれシグマさんが顔を赤らめる。

 かと思えば――


「……っ」


 シグマさんがワンピースのような囚人服をたくしあげて、その綺麗な生足や下着、そして僕との仲良しで下腹部に刻み込まれてしまった淫紋を見せつけるようにしながら、


「……今日は諸々の詫びも兼ねて……ご奉仕させてもらいに参りました」


 プライドを押し殺すような表情とともに、顔を耳まで真っ赤にしてボソリとそう言った。


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 改めまして、めちゃくちゃ間があいてしまって本当に申し訳ありません。

 近況報告にも書きましたがちょっと嘘みたいな病気になってしまって……体調を崩さずに住める家も着られる服もないまま半年近く経過してしまい、生活がほとんど崩壊してしまっておりまして……。

 ちょいちょい隙を見て更新していければと思いますので、改めてよろしくお願いいたします。

(※次回は11日のお昼に更新予定です)


 ※また、皆様のおかげで淫魔追放第1巻が重版いたしまして(だいぶ前に!)、9月21日に無事第2巻が発売することになりました。詳しい情報はまた追ってお知らせしますが、今回は書き下ろしエピソードが1万5千字以上あったりイラストも1巻以上に素晴らしかったりなので、楽しみにしていただけますと幸いです。

 2巻ではキャリー・ペニペニやシスタークレアのキャラデザもがっつりあるので!

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