第162話 黒幕の残滓と手慣れた救済
「……はっ、そうだ! 〈射精砲〉の余韻に浸ってる場合じゃないんだった!」
極限まで威力を増した全力の〈射精砲〉で古龍を打ち倒した直後。
古龍討伐に協力(意味深)してくれたヴァージニア姉妹に両サイドから挟まれてぐったりしていた僕は慌てて身体を起こした。
街どころか国を食い尽くすようなモンスターを無事に倒せたのはよかったけど、今回の事件はこれで終わりじゃない。
いま首都の王城では、謎の魔剣に支配されたシグマとアリシアたちが戦っているはずなのだ。アリシアには勝算があるみたいだったし、念のためにお守り男根を渡しておいたけど、実際にどうなってるかはわからない。
「色々と出し切っちゃったあとだけど、回復薬を使えば男根震動を放つ余裕くらいはあるはず……っ」
言って、僕は商人ルージュさんが以前こっそり渡してくれた精力剤と高級マジックポーションをガブ飲み。
ヴァージニア姉妹にはヤリ部屋に入ってもらい、僕1人で〈現地妻〉を発動。
アリシアの元へと一瞬でワープした。
「アリシア! みんな! 無事!?」
と、〈現地妻〉でアリシアのもとへ飛ぶと同時に僕は周囲を見渡したわけなのだけど――。
「……エリオっ」
僕は自分の心配がまったくの杞憂だったとすぐに理解した。
瓦礫に埋もれ、今度こそ完全に沈黙した熊獣人シグマ。
消耗しきってはいるものの、帰還した僕に元気良く駆け寄ってくるアリシアたち。
魔剣を装備したシグマにアリシアたちが完全勝利したことは明白で、僕は安堵の息を吐くとともに望外の戦果に目を丸くする。
けど次の瞬間、僕はもっと驚くことになった。
「あれ!? こ、これって……!?」
戦闘の余波でボロボロになった王城連絡路に散らばっていた破片。
それは僕がいくら全力で攻撃しても破壊できなかった鏖魔剣の残骸だったからだ。
「これ、もしかして完全破壊できたの!?」
「……うん。……急に変なスキルが発現してて……みんなに協力してもらって、こう、ドカンって」
アリシアの言う通り、差し出された彼女のステータスプレートには〈シン・魔神斬り〉というスキルが発現していて。明らかになにか次元の違うそのスキルが魔剣を打ち砕いたことは間違いないみたいだった。
「凄いやアリシア! 正直あの魔剣だけはどうすればいいのかわからなかったから。なんにせよ、これで一件落着だね」
「……いや、まだ」
と、そこで僕はようやく気づく。
感情の読み取りにくいアリシアの顔が、まだ張り詰めていることに。
「……鏖魔剣を破壊して元は完全に断ったのに……黒い気配の残り香がまだ完全には消えてない」
「っ、それって……!」
まさか、と男根を握りしめたそのときだ。
『……目覚めていたか。魔を討ち滅ぼす忌々しい神の力が』
「「「「っ!?」」」」
禍々しい声が辺り一帯に響いたのは。
見れば、完全に沈黙していたはずの熊獣人シグマがボロボロのまま立ち上がっていた。
その周囲に立ち上るのは、漆黒をさらに深めたような黒い霧だ。
それはいつかダンジョン都市でソフィアさんを操っていた霧とまったく同質のモノ。
けどそれよりもっと深く、強力な力が渦巻いていた。
国家最強クラスの
「「「……っ!」」」
僕たちがその気配に再び臨戦態勢をとるなか、黒い霧が大気を震わせる。
『今回はこの操り人形がガラクタだったゆえに負けたが……これで勝ったとは思うなよ? 大陸各地に打ち込まれた怨念に影響を受け、悪しき魂を持って生まれた女は数多い。貴様らがいくら強かろうと、芽吹いた数多の悪意によっていずれ必ず打ち倒されるだろう』
「……!?」
殺意と悪意にまみれた女性の声。
その不可解な言葉の意味を咀嚼しきる前に、さらに事態は急転する。
『だがそれまで貴様らが今日の勝利に酔いしれるのは気に食わんな』
黒い霧の内包する悪意が、これ以上なく膨れ上がった。
『鏖魔剣を破壊されたいま、我ももう長くはない。ならば、最後の最後まで我に抵抗し続け、鏖魔剣の力を100%引き出せずに終わったこの
「っ!? マズイ!」
瞬間、イリーナ獣騎士団長が逼迫した声で叫んだ。
なぜなら黒い霧にまとわりつかれたシグマから凄まじい魔力が渦巻いたからだ。
それはまるで、シグマの寿命すべてを魔力に変換して放たれる自爆そのもの。
かつてダンジョン都市でソフィアさんを操っていた黒い霧がやろうとした嫌がらせとまったく同じやり口で。
『あっはははははははははは! 気持ちの良い勝利などくれてやるものか! 全員消し飛ぶか、哀れな操り人形一人救えなかった無力に打ちひしがれるがいい!』
黒い霧が得意げに叫ぶ。だけど、
「やっぱり、そう来ると思った!」
そのとき既に、僕の男根剣は行動を終えていた。
『――ッ!? おごほおッ❤❤!?』
瞬間、案の定シグマと感覚を繋げていたらしい黒い霧が困惑と快感の入り交じった声を漏らす。
なぜならシグマの急所へ、瞬時に延びた僕の男根剣が突き立っていたからだ。
一刻一秒を争う事態なので細かい手順は省略。
けどその代わり、「ごしゅじんしゃまのお役に立つよ!」とコッコロの中に潜んでいたスライム少女ペペの分身を潤滑油にし、浄化の男根剣を一気に叩き込んだ。
『ッッッ!?!?!?!??! なにを!? は!? その魔剣、まさか貴様の生殖k……!? おひっ❤❤!? なっ!? なんだ貴様は!? 警戒すべきは〈神聖騎士〉だけでは――おごっっっ❤❤!?』
「うるさい」
黒い霧の言葉を封じるように、一切の容赦なく男根剣をねじ込む。
快感と衝撃で魔力暴発の気配が霧散するのを確認しながら、僕はさらに続けた。
「お前がなんなのかは知らない。けどこれ以上その人の身体で……この国で好き勝手させてたまるか!」
『っっ!?!??! こんな状況で強引におっぱじめるようなヤツがなにを綺麗事――おごおおおおおおおおっ❤❤❤❤!?!?!?』
瞬間、僕はそれ以上黒い霧がなにかする前に全力攻撃を開始。
万が一にも魔法を暴走させられないよう、シグマの全身を魔法耐性のあるオリハル男根で完全密封。続けて流れるようにヤリ部屋に引きずりこみ、
「シグマの身体から出てイケエエエエエエ!」
『ッ❤❤❤❤!?!?!?!?』
情け容赦の一切ない徹底的な仲良しの結果、シグマの下腹部には淫紋が出現。ソフィアさんのときとまったく同じように、その黒い霧の浄化に成功するのだった。
ソフィアさんのときと同じく、黒い霧が消滅してしまったためその正体はいまだにわからない。その裏になにか黒く大きな力が潜んでいる予感がしつつ、具体的な対策も立てようがなかった。安心材料といえば、アリシアいわく今回の黒い霧が魔剣に宿る単独存在であり、僕たちの情報をどこかに送っている心配がないらしいということくらいだ。
けれど、
「いまはひとまず、この国を……操られていたシグマさんを助けられてよかった」
「あ……が……お、ほ……っ❤❤」
「……」
男根剣浄化の副作用でドロッドロに顔面崩壊したシグマからはそっと目を逸らしつつ。
僕はシスタークレアたちをヤリ部屋から出し、ようやく訪れた完全勝利をみんなと分かち合うのだった。もちろん服は着直した状態で。
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というわけで、途中に結構な間があいてしまいましたが、牙王連邦編はひとまず一段落です。
色々と事後処理やら次の課題やらはありますが、のんびり書いていければですね……。
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Kakao先生の素晴らしいイラストの他、書籍版限定の書き下ろしや章間おまけ掛け合いもあるので、是非チェックしてみてください。
※2021.10.1 表現を一部修正しました
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