第148話 メスガキの(情報)お漏らし
「あひ……おほっ……ご、めんなしゃい……❤❤ 私はただの愚かで生意気なクソメスガキでしゅ……隷属させていた村の人や冒険者にも誠心誠意謝罪して償うので、どうかエリオ様のメス奴隷にしてくだしゃい……❤❤ なんでもしましゅから……❤❤」
山間の村フードリアを支配していた〈強王派〉の夜襲を無事に撃退した翌朝。
村の人たちや冒険者に施されていた違法奴隷契約をすべて解除し、気絶させた〈強王派〉構成員を完全拘束した村のど真ん中で、メスガ・キーラが土下座していた。
その様子には〈強王派〉の一部門を支配していた凶悪犯の面影すらない。
小さな鼠獣人の女の子がぷるぷると震えて媚びた表情を浮かべているのみであり、性格からなにから根本的に変わってしまったようだった。
そんなメスガ・キーラを見て、僕は冷や汗を流す。
「し、しまった、ヤりすぎた……!」
昨日はメスガ・キーラの所業の数々に激しい怒りを覚えてしまい、その怒りのままに仲良ししてしまったのだけど……あまりにも全力で仲良ししすぎた。
途中からはペペと2人がかりだったし……。
下手をしたら、アリシアを満足させるときの5割増しで激しかったかもしれない。
そのせいかメスガ・キーラは〈主従契約〉で命じるまでもなくこの有様で、なんだかもう完全に別人だった。
メスガ・キーラに恨みがある村の人たちでさえ「どんな拷問をすればあんなことに……!?」とドン引きしているほどで、僕は慌ててメスガ・キーラを人目から隠す。
村には小さな子供もいて、こんなの見せたら絶対に悪影響だからね!
そうして僕はアリシアたちとともに、がっつり〈主従契約〉の刻まれたメスガ・キーラにこう訊ねた。
「ええと、それじゃあそろそろ話してもらおうかな。一体なんの目的で、村の人たちに無理矢理ダンジョン探索なんてさせてたのか」
山間で気づかれづらいとはいえ、村を丸ごと隷属させるなんてかなり大変なはず。
そうまでして村人や冒険者にダンジョン探索を強制していた理由はなんなのか問いただした。するとメスガ・キーラは淫紋の淡い発光とともに「はい喜んでお話しますううう!」と吠え、その理由を語り始めた。
「私たちのボスである鬼神シグマから厳命があったんです。この辺り一帯で採れる、栄養満点のモンスター素材を連邦所有のダンジョン都市に届けろって」
「ダンジョン都市に……?」
連邦所有のダンジョン都市。
それは王妹殿下誘拐事件を引き起こした〈強王派〉の一派が人質と引き換えに明け渡せと迫る予定だった場所。僕たちがこれから向かおうとしていた都市だ。
僕たちが目を見開くなか、メスガ・キーラが続ける。
「ただ、なぜダンジョン都市に届けないといけないかはいくら上に問いただしても秘密で。そのくせひたすら量を求めるものだから、ヤケクソで隷属アイテムを要求したらたくさんくれて。それで要求量をクリアするために、ここらの周囲数十キロメドル範囲内に点在する村も部下に支配させて、ダンジョン都市に素材を送りまくってたんです。奴隷はもちろん、私の部下にもダンジョン探索を命じて」
「……!? 他にも村を支配してるの!?」
確かにフードリア以外にも、この辺りの山脈には栄養満点の素材が採れるダンジョンとそれに寄り添う村があるという話だった。けどわざわざその多くを支配して素材をダンジョン都市に送るなんて、とんでもない大仕事だ。
そしてその理由は幹部であるメスガ・キーラにも秘密。
〈強王派〉にとってなにかとても重要な理由があるとしか思えなかった。
「……もともとダンジョン都市にはなにかありそうって話でしたけど……思ったよりもずっと怪しい……ですね……」
「……うん……早く調べに行かないと……あと、エリオに凄く激しくしてもらったみたいなメスガ・キーラが羨ましい……」
ソフィアさんとアリシアも僕と同意見らしく、僕たちは互いにうなずき合った。
そうして。
僕たちに凄まじい勢いで感謝してくれる村の人たちの歓待を最低限受けてから、キャリーさんに頼んですぐに村を出発。
いまだに周辺一帯の村で支配を続けているらしい〈強王派〉構成員はメスガ・キーラの偽命令と国家騎士団派遣のコンボで一網打尽にしてもらいつつ――僕たちはメスガ・キーラから得た素材密輸ルートの情報とともにダンジョン都市へと急ぐのだった。
*
「おいどうなってるんだ!?」
そこは、地下深くにある薄暗い空間だった。
〈強王派〉と呼ばれるテロ集団。その中枢が集まるアジトに、悲鳴じみた声が響きわたる。
「ついこの間、王妹誘拐を命じた盗賊部門が壊滅したと思ったら、今度はアレのエサ集めを担当していた山村支配部隊からの連絡が途絶えたぞ!?」
「一番の収穫量だったメスガ隊長の村はいまのところ無事だと本人から報告があったが……それ以外はどうも国家騎士団の手で一方的にやられたらしい……」
「どういうことよ!? 盗賊部門もそうだったけど、連中にはそれなりに強力な武器や魔道具を渡してるのよ!? イリーナ獣騎士団長が動いたならまだしもそんな情報は……そもそもそう簡単に企みが露見するはずないのに!」
これまで上手くいっていたテロ活動がいきなり数々の大損害に見舞われ、闇に潜む〈強王派〉首脳部は大混乱に陥っていた。
だがそんななか。
「……オレたちの知らねえ戦力が湧いてんな」
1人。明らかに纏う空気の違う女が低く漏らした。
熊獣人。野性味溢れる細身の美女だ。
肩の辺りまで伸びた黒髪を揺らして、熊獣人の女は取り乱すことなく静かに続ける。
「山村支配に気づいたってこたぁ、集めた素材の流れに気づいててもおかしくねぇ。ならいまオレたちを脅かしてるその未知の戦力が次に来るのは……ククッ、ちょうどいい。ちいと予定より早いが、孵化を目前にしてコイツもそろそろ別格のエサが欲しい頃だろうし、こっちから出向いてやるか。ダンジョン都市割譲要求で王国の戦力をおびき寄せる手間が省けた」
言って、黒髪の女が見上げるのは――巨大な肉塊だった。
広い地下空間のほとんどを占めるソレはドクンドクンと脈打ち、地面に刺した大木のような管からなにかを飲み込んでいるようだった。さらには牙王連邦各地から運ばれてきたモンスターの肉を、口のような部位で貪っている。
その醜悪な光景を満足気に眺め、
「いままで連邦国内で起こしてた騒ぎは全部、王都の目をダンジョン都市から一時的にそらしてエサを集める時間を稼ぐためのブラフ。オレたちを邪魔する未知の戦力とやらを最後の生贄にして……計画の仕上げといこうや」
黒髪の熊獣人――鬼神シグマと呼ばれるその美女は狂気に彩られた瞳で断言した。
常人には決して感知できない、禍々しい気配を纏った剣の柄に触れながら。
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次回149話「男根振動」。若干時系列が前後します。
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