第144話 酒池肉林の村(前編)
イリーナ獣騎士団長と激しい〈主従契約〉を交わし、アリシアやソフィアさんも交えてドッタンバッタン大騒ぎしたその翌朝。
……というか昼過ぎ。
「呼ばれて飛び出てキャリー・ペニペニです! なんだか聞いていたよりも随分と出発が遅れましたが、まさか私に内緒で大乱交仲良しシスターズでもしてました?」
「あ、あのキャリーさん、遅れたのは本当に申し訳ないんですけど……穴埋めはするからもう少し声をおさえてもらえると……」
「! 穴を埋めてくれるのですね! かしこまりです!」
仲良しの影響で大幅に出発が遅れたものの、僕たちは〈現地妻〉スキルで呼び出したキャリーさんに運んでもらい、予定通り連邦所有のダンジョン都市へと向かっていた。
テロ組織〈強王派〉がその都市でなにか企んでいる恐れがあるため、それを阻止して敵の中枢へと一気に近づく、というのが目的だ。
今回の遠征メンバーは僕とアリシア、そして狼人ソフィアさんの3人。
いつものようにシスタークレアと護衛のシルビアさんもついてくるかと思ったのだけど、
『実は昨夜、今回は首都レイセントに留まっていたほうがいいというお告げがあったのですわ』
とのことで、シスタークレアは首都でアイラ女王と親交を深めておくとのことだった。とはいえシスタークレアとアイラ女王はいつの間にか既にかなり仲良くなっていて、
『わはは! ここに残るというなら昨日に引き続き飲め飲めなのじゃ! 儂は政務があるので飲めぬが、飲んだお主と語らうのは肩の荷が下りて楽しいのじゃ!』
『話がわかりますねー! ではお言葉に甘えて! あ、あとそういえば王城には特別書庫があるとの話でしたが、お酒飲みながら入ってみても?』
『構わぬ構わぬ! 普段は口うるさいイリーナ獣騎士団長も今日は事後のせいか妙に大人しいしの! にしても教会は儂ら獣人の文化風習を無視して潔癖な教義を押しつけてくるヤツばかりと思っておったが、お主はやはりモノが違うの! 良い感じにイカれておる!』
『わーい褒められましたわー!』
この同盟、本当に大丈夫かな?
とは思いつつ、まあ仲良し(普通の意味)なのは良いことで。
そんなシスタークレアと護衛シルビアさんを首都に残し、僕はヤリ部屋にアリシアとソフィアさんを入れてキャリーさんに運んでもらっていた。
……のだけど、
「うーむ、やっぱり日が暮れてしまいましたね」
「寝坊しちゃって本当にごめんなさい……」
騎士団の練兵にも使われるダンジョン都市は首都レイセントとそこそこ近い距離にあり、険しい山間部を飛行魔法でショートカットすれば1日と経たずに到着できるはずだった。
けれど僕たちがそろって寝坊してしまったこともあり、山間で日没の時間を迎えてしまう。そのため〈現地妻〉で一度王城へ戻ろうかと思っていたところ、
「あ、ちょうどいいところに村がありますね。それも山間部にしてはかなり大きい」
「え? あ、本当だ。ちょうどいいし今日はあそこに泊めてもらおっか」
ダンジョン都市を目指すにあたり、可能であれば近隣でもなにか異変はないか注視してほしいとアイラ女王からも頼まれている。
なのでたまには冒険者らしく宿を取って地元の人と交流するのもいいだろうと、僕たちはたまたま発見したその村の手前に降り立った。仲良ししてアリシアとソフィアさんをヤリ部屋の外に出す。
そしてあたかも徒歩で到着したかのように4人で村へ入ったそのときだ。
「あれ? もしかしてお兄さんたち、冒険者様ですか!?」
山間にしては立派なその村に足を踏み入れてすぐ。
住人らしき鼠獣人の小さな女の子に声をかけられた。
10歳くらいに見えるその可愛らしい女の子は整った顔をキラキラと輝かせて僕たちに駆け寄ってくる。
もしかして冒険者に憧れている子なんだろうか、と思いながらその女の子に「うん、旅の冒険者だよ」と目線を合わせて答える。
すると女の子は「やっぱり!」と満面の笑みを浮かべて、
「みんなー! 冒険者様が村に来たよー!」
「え?」
女の子が叫んだ瞬間。
「おー! 冒険者様か!」
「素晴らしい! 歓迎するわ!」
「宴の準備だ!」
女の子の声を聞いた村の住人が諸手をあげて歓迎してくれる。
な、なんだなんだ? と僕らが面食らっていると、鼠獣人の女の子が僕たちの手を引っ張り、
「ようこそ冒険者様! ここは山間の村フードリア! 険しい道を乗り越えてやってきてくれた冒険者様を酒池肉林の宴で歓迎する風習があるの! さ、早くこっちに!」
しゅ、酒池肉林の宴!?
不思議な山村で過激な発言をする女の子に面食らいながら、僕たちは村の人たちに歓迎されるがまま、村の宴会場とやらに案内されるのだった。
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若干長くなってしまったのと、ここで切るのが内容的にもキリが良いかなということで分割投稿です。後編は既に投稿されております。
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