第88話 それはまるで、木の股に興奮する男子中学生のように純粋な


 地面に空いた大穴から大量のモンスターが溢れ出していた。

 バランスの崩れた魔力の影響で凶暴性の増したモンスターの群れが、逃げ惑う人々の背に迫る。


 そんな破壊の嵐の中へ、僕は〈淫魔〉の身体能力をもって全力で突っ込んでいた。


「やああああああああああっ!」


 ビキビキビキッ!


 硬く変形した男根を縦横無尽に振り回す。

 アダマンタイトの切れ味を誇る男根は僕の意のままに形を変え、一振りで何十体ものモンスターを切り刻む。


「な、なんだあの子供……!?」

「強すぎる、何者だ!?」

「いいから早く向こうへ! 旅団が防衛戦を張ってます! 急いで!」

「あ、ああ! ありがとうよ!」 

 

 呆然と立ち尽くす人たちに避難を呼びかけ、僕はさらに男根を振り回した。

〈淫魔〉の身体能力と変幻自在男根を駆使し、何百というモンスターを切り伏せていく。


 そんな僕の頭上では、〈音響魔導師〉のスキルで増幅された女帝ステイシーさんと獅子王の声が響いていた。


『女帝旅団、総員モンスターの対処へ! 獅子王旅団との禍根はいまだけ忘れなさい!』

『私たちも前線に出ている! 全力で戦え! 敵前逃亡したら金玉もぎ取って女の子にしてやるぞ!』


 戦姫ソフィアさんを捜すため、旅団構成員がパーティを組んで街中に散っていたことが幸いした。

 

 複数出現した大穴を迅速に囲むことができ、どうにかモンスターの進行を食い止められていたのだ。


「ステイシーさんと獅子王は1人1穴、アリシアとリザさんで1穴、あとの比較的小さい穴は旅団戦闘員が徒党を組んで対処してくれてる……!」


 そして僕が1人で食い止めているのは、最も巨大な大穴だ。

 いまのところは戦線が崩壊したという報告もなく、被害を最小限に食い止められている。


 けど、


『『『『グオオオオオオオオオオオオオッ!!』』』』


「くっ……! キリがない!」


 次から次へと湧いてくるモンスターは尽きることなく、むしろ勢いが増しているように見えた。


「ダンジョン崩壊が起きるとバランスの崩れた魔力が過凝縮してモンスターが生み出され続けるって聞くけど……いくらなんでも多すぎる!」


 いまのところはどうにかなってるけど、これじゃあいつか魔力が尽きて防衛戦が崩壊する。せめて街の人の避難が完了するまで防衛戦がもてばいいけど……ここは大陸有数の大都市。加えてこの混乱状態じゃ、とても避難は間に合わない。


「モンスターの侵攻を食い止めてる間に穴を塞がないと、どう考えてもジリ貧だ……!」


 けどこんな大穴を塞ぐ方法なんて……。


 僕のアダマンタイト男根を形状変化させれば可能か?


 ……いや、〈男根形状変化〉スキルによる男根の巨大化には質量制限がある。

 いくらアダマンタイト男根が強固でも、大穴が防げるほどに広げれば薄くなりすぎて強度を保てない。モンスターを食い止めるのは不可能だ。


 しかもモンスターが溢れてくる穴は複数。

 とてもじゃないけど、僕の男根でモンスターの侵攻を止められるとは思えなかった。


「くっ、どうしようもないのか……!?」


 どうやったかはわからないけど、このダンジョン崩壊は間違いなく戦姫ソフィアさんの仕業だ。このまま手をこまねいて被害が拡大すれば、ソフィアさんは本当に後戻りできなくなってしまう。


 けど一体、どうすれば――


 と、歯がみしていたときだった。


 追い詰められた僕の脳裏に、走馬灯のごとく過去の記憶が弾けたのは。


『――なぁクロス。男の子はムラムラしてると木の股を見ても興奮するというのは本当なのかい?』

 

 それは、僕がまだ小さかった頃の記憶。

 いまのアリシアに似ている女性――アリシアのお姉さんが僕に投げかけてきた言葉だった。


『ダンジョンもさ、よく考えるとエッチだよね。モンスターを生み出す穴って、それはもう女性器と言っても過言ではないわけだ。木の股で興奮する男の子がいるならダンジョンで興奮する子がいてもおかしくないと思うんだけど、エリオはどう思う?』


 いま思えば、それは年端もいかない子供に対する純然たるセクハラだ。

 けどいまこのときばかりは、アリシアのお姉さんに感謝するほかなかった。


「ダンジョンが、女性器……。だったら……!」


 成功するかはわからない。

 というか成功したら僕は人として終わる。

 

 けどいまはその可能性に賭けるしかなかった。


「――絶倫スキルLv10,全解放!」


 僕は男根剣を振り回しながら、その始まりのスキルを発動させた。

 酷いムラムラで勃ちっぱなしになるから、昼間は封印しているそのスキルを。

 

「……っ、ぐぅっ」


 途端、僕の頭はムラムラでいっぱいになる。

 下半身がうずき、なにもない空間に向けて腰を振りそうになった。


 そんな最悪の状態で……僕は大穴を凝視する。


(穴、穴、穴、たくさんの命が出たり入ったりする穴――地面にも穴はあるんだよなぁ……!)

 

 ムラムラでおかしくなった自分に言い聞かせる。

 溢れる性欲に従い、地面にあいた大穴を性の対象として脳内補完する。


 そんな僕を見て、戦況報告や避難誘導をしている旅団構成員が「どうかしたんですかい!?」と困惑の声をあげた。


 けどそんな声は無視。

 モンスターを切り伏せながらひたすら大穴を凝視し続ける。

 そうして自らの性欲を全力で解放し続けた僕の中で――脳と下半身が直結するような光が弾けた。


 次の瞬間。


 スキル限界突破――〈絶倫〉Lv11


 ステータスプレートを確認したわけじゃない。

 だけど僕は大穴を完全に性の対象として見られるようになった自分の変化を自覚し、そして叫んだ。


「スキル――〈男根適正自動変化〉!」


 それは対象の穴にあわせ、男根の形状や大きさが勝手に変わる猥褻スキルだ。


 このスキルは鑑定水晶でチェックしても質量制限やスキル発動対象に関する記載が存在しなかった。

 だから――


「もしかしたらこのスキルによる質量変化には、制限がないんじゃないかと思ったんだ!」


 そしてそれは、大正解だった。


 ズオオオオオオオオ!


 男根剣が爆発的な勢いで質量を増す。

 僕は咄嗟に宙へ跳び、巨大化し続ける男根剣を大穴へと放り込んだ。


「な、なんだぁ!?」


 周囲の人々が驚愕に目を見開く中、男根剣の質量増大は止まらない。


 ズゴゴゴゴゴゴゴッ!


 凄まじい地響きが周囲を揺らす。

 そして僕の男根は――完全に仕事をまっとうした。


〈適正男根自動変化〉によって大地を犯すのに最適な質量へと変化し、完全に大穴を塞いでしまったのだ。

 相手が地面だからか、男根の形質も岩のようなものに変化して強度も十分だった。


「ど、どうなってんだこりゃ……!?」

「ステイシー様とリザ様を下したとは聞いてたが……こんなデタラメな魔剣、どんだけ魔力があれば……!?」


「や、やった……!」


 周囲の人たちが腰を抜かす中、僕は歓喜の声を漏らしつつ男根を再生。

 再び男根剣を手に握り、残ったモンスターを切り伏せる。


「僕自身のレベルが上がってるから、分離できる男根の数も増えてる。売買用男根の他に分離できる本数は残してるから、これなら全部の穴を塞げる!」


 僕の人間性と引き換えにね!

 と、僕がさらに新たな男根を生み出そうとしたときだった。


 ドゴンッ!


 地面が揺れる。

 同時に、街の複数箇所からさらに大量の気配が湧き出した。


「……!? まさか!?」


 瞬間、僕の予感を裏付けるように悲鳴めいた声が空に響く。


『で、伝令! ダンジョン崩壊が加速! さらに複数の穴が出現! 余裕のある現場は人員をそちらへ割いてください!』


「な……っ!?」


 まずい!

 防衛線は既存の穴を前提に構築されている。

 予想外の位置に穴が出現したとなれば、防衛線が挟み撃ちを食らってしまう。

 

 早く穴を塞がないと、凄まじい被害が出ることは間違いなかった。


「けど穴の位置がすぐにはわからないし、どれだけ急いでも絶対にどこかが破綻して……くそっ、迷ってる時間がもったいない! とにかく動かないと!」


 空でも飛べれば即座に男根をばらまけるのに、と歯がみしながらまずはステイシーさんたちのもとへワープしようとした――そのときだった。


「わーっ!? なんですかこの騒ぎは! って、おや? そこにいるのはエリオさんじゃないですか、奇遇ですね!」

「え、キャリーさん!?」


 突如、僕の頭上に脳天気な声を漏らす女性が現れた。

 それは僕とアリシアをこの街まで運んでくれたハーフエルフの少女。

 風魔法で自由自在に空を飛ぶ運び屋、キャリー・ペニペニさんだった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 前話との温度差が酷すぎて風邪ひきそう。

 ※スキルの限界突破については諸々が一段落してから説明入る予定です。

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