第77話 走るオチンポ人間
ソーニャ・マクシエル16歳。
城塞都市の冒険者ギルドマスターと商業ギルドナンバー2の母を持つ町娘。
有力者の家系ながら人当たりがよく、城塞都市内に広い人脈を持つ快活な少女だ。
エリオの股間から分離したエリオでの一人遊びに目覚めて以来、もともと豊かだった彼女の生活はさらに豊かなものになった。
エリオとルージュにアレの売買契約を結ばせてからというもの、エリオのエリオを比較的安価かつ安定して入手できるようになり、彼女はしばしの間、その快感を思い切り享受することができていたのだ。
しかし彼女はここしばらく、酷い欲求不満に陥っていた。
どういうことかというと、それは彼女の持つ〈ギフト〉が原因だった。
〈特殊魔道具師〉
数ある〈ギフト〉の中でも希少種のひとつに数えられるその特性は、マジックアイテム作成系のスキルを多く発現することにあった。
そんな〈ギフト〉持ちであるソーニャのレベルは40。
これは「鑑定水晶」を作成するのに十分なレベルであり、ソーニャはアレの購入資金を貯め込むため、ルージュとアルバイト契約を結んで鑑定水晶の量産を手伝っていたのだ。
これはソーニャにとってとても美味しい仕事だった。
なにせ降って湧いた鑑定水晶バブルのおかげでお給料はいいし、少なからず難易度の高い仕事であるため〈特殊魔道具師〉のスキルLvもぐんぐん上がる。まさに一石二鳥だったのである。
だがある日、その状況が一変した。
どこかの誰かが、ルージュのもとに最高級の鑑定水晶素材を大量納品したのだ。
もともと鑑定水晶バブルはそう長く続くものではないとわかっていた。
なのでルージュはここで一気に鑑定水晶を捌くべく、ソーニャたちに大量生産を依頼したのである。本来ならブラック労働だのなんだのと文句を垂れるところなのだが……アレの購入資金を少しでも多く貯めておくため、ソーニャは自ら割高かつちょっと厳しい契約をルージュと結んでいた。
そのためノンストップで行われる鑑定水晶作成を断り切れず、連日働きづめなのだった。
とはいえもちろん、ルージュもその辺りはわきまえている。しっかり休みは与えているし、ソーニャが潰れるような真似は決してしていないのだが……問題は休みの周期だった。
エリオがアレを納品する周期と微妙に合わないのである。
ゆえにソーニャはしばらく働きづめなうえ、たまの休みもアレが上手く確保できずムラムラしっぱなし。鑑定水晶バブルはもうしばらく続きそうで、鑑定水晶バブルよりも先にソーニャの欲求不満がはじけてしまいそうな有様だったのだ。
そうして頭の中が男根一色になっている状態で、ソーニャはルージュと共通の知り合いであるウェイプスに愚痴りにやってきていたのだが、
「…………………………え?」
ウェイプスの武器屋に足を踏み入れた瞬間、ソーニャはついに欲求不満で自分の頭がおかしくなったのだと確信した。
なぜならさっきまでそこにいたはずのエリオール少年の姿がいきなり立派な生チ〇ポに変わり……まるで「使ってください」と言うかのように地面に転がっていたのだから。
*
――ボンッ! ボトッ!
なにが起きたのかわからなかった。
急に周囲が大きくなって、僕は手や足で踏ん張ることもできずに床へと落下していた。
一体なにが!? と必死に首を巡らせる。
ウェイプスさんの武器屋には、武器や防具を装備した際の外観を本人がチェックできるよう鏡が置いてあった。
そこに映っていた自分の姿を見て、僕は我が目を疑う。
そこにはまごう事なきチ〇ポが映っていたのだ。
「どういうことなの!?」
僕は叫ぶ。
だけど鈴口の辺りがピクピクするだけで、声らしい声は出なかった。
いやちょっと、ホントにどういうこと!?
全身チ〇ポなんですけど!?
いま僕どこで呼吸や思考してるの!?
様々な思考が一気に弾ける。
けれどあまりにもあんまりな事態で逆に冷静になった僕の頭は、どうしてこんなことになっているのかすぐに仮説立てていた。
(これってまさか、ソーニャの好み(?)に反応した自動変身スキルの効果!?)
それしか考えられない。
けど本当にそうだとしたら、このスキルも性能がおかしすぎる。
変身、擬態系スキルというのは、往々にして幻術の要素が混じっている。
完全に身体の構造まで変えられるのは一部の魔族や不定形モンスターくらいで、それ以外の大多数は幻術混じりの中途半端な変身なのだ。
けど僕の自動変身は違う。
大きさからなにから本物のち〇ちんそのもので、身動きにも不自由するくらいだった。
(多分これ、自動変身スキルが暴発してるってことなんだろうけど……暴発するにしたって限度があるでしょ!)
と、僕がスキル解除を念じようとしたときだ。
「…………………………お、落とし物?」
ソーニャがギラギラとした瞳で僕を見下ろしていた。
「お、落とし物なら、拾って届けないと……その間にちょっと使っても、大丈夫よね……?」
食べられる……!
下のお口で僕の全身を丸呑みプレイされてしまう……!
直感した僕は、どう動かしていいかわからないちん〇ボディを必死に動かした。
「うわあああああああああっ!」
叫び、レベル260に達した〈淫魔〉のフィジカルを全力で行使する!
すると、
「っ! よし! 立った!」
立った! ち〇ぽが立った!
そして僕はそのまま、左右のタマを交互に動かし、痛みに耐えながら全力疾走した。
「っ!? あ!? チ〇ポが逃げる!?」
ソーニャが追いかけてくる!
けど捕まるわけにはいかず、僕は全力で逃げ出した。
このスキルは確か、対象から離れると効果が解除されるはず。
なので僕はソーニャに捕まる前に全力で武器屋から走り出した。
男根姿のままで!
と、少し走ったところで――ボン!
「た、助かった……」
ソーニャを振り切って路地裏に駆け込んだところで、僕は無事に元の姿に戻ることができた。どういう原理かわからないが、チ〇ポ変身と同時に消えていた服や装備もそのまま戻ってくる。どうやら身に纏っていたものごと変身していたようだ。
「いやけど、なんなのこのスキル……!? いくらスキルの扱いに慣れてなかったとはいえ勝手にあんな変身するなんて危険すぎ……っていうか「好みの姿に変身できる」スキルでアソコに変化するって、ソーニャの頭はどうなってるの!?」
しかもこんな暴発まがいの変身をしたってことは、多分ソーニャの思念がそれだけ強かったということで……うん、深く考えないようにしよう。
と、僕が新しいスキルの怖さに怯えていると、
「……あ、いた。……よかった、元の姿に戻ってる」
僕を心配して追いかけてきてくれたらしいアリシアがひょこっと曲がり角から顔を出した。
「あ、ごめんアリシア。ちょっと、色々と急すぎて慌てて逃げちゃった。ソーニャのほうは大丈夫そう?」
「……うん。エリオが凄い速さで逃げたから、白昼夢だと思ったみたい。……でも、すぐ元に戻れて本当によかったね」
「え?」
「……エリオはエリオのままが一番魅力的だから」
「アリシア……」
優しく微笑みかけてくれるアリシアに僕も思わず頬が緩む。
と、その直後だった。
――ボンッ!
「え!?」
僕の姿がまた変わり、それに伴い僕の視線が大きく下がる。
え、ちょっ、まさか、アリシアの思念に反応してまた変身スキルが暴発したの!?
てゆーか姿が変わったってことは、アリシアの本当の好みが僕とは違ったってこと!? と僕がショックを受けていたところ、
「……………………え?」
アリシアが陶然とした様子で僕を見下ろし、
「………………あ、え、これ、もしかして……私がはじめて、エリオのことを食べちゃいたいって思ったころの……エリオ……?」
「え」
みるみるうちに頬を上気させ、息を荒くしていくアリシア。
その美しい青の瞳には僕が――正確には8歳くらいのときの僕の顔が映り込んでいて、
「……あ、ダメ、これはダメ……こんなエリオ見せつけられたら……いままで我慢してたのが……あ、あ、ちゃんと我慢しないと…………………………あ、ダメだこれ」
瞬間、アリシアの中でなにかが決壊する音がした。
「……エリオ。お姉ちゃんと、少し静かな場所に行こっか……。大丈夫、絶対に乱暴にしないから……優しくするから……」
「ちょっ、アリシア!? 静かな場所でナニするつもり!? まだウェイプスさんとの打ち合わせが……ちょっ、アリシア!? 外でキスはダメだよ! 僕の服の中にも手を突っ込んじゃ――あ、ダメだこれ! ヤリ部屋生成!」
完全に正気を失って頬を上気させたアリシアを前に、僕は説得は不可能と瞬時に判断。幼くなった僕の姿に興奮したアリシアを全力の仲良しで鎮めたあと、どうにかウェイプスさんとの打ち合わせも完了させるのだった。
変身スキル……勝手に発動しがちなことといい、いままでで一番危険なスキルかもしれない……。
――――――――――――――――――――
アリシアにとってはいまこの瞬間のエリオが一番で間違いなのですが、恋に落ちた瞬間というのはやはり特別ということですね。
※2021/10/14 微妙に伏せ字を増やしました
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