第53話 報酬


 バギャアアアアアアン!


 推定レベル180に達する巨大ロックタートルの亀頭が砕け散った。

 急所を粉砕されたロックタートルは悲鳴をあげることもなくその場に崩れ落ち、地底洞窟にようやく静寂が戻ってくる。


「ふぅ、かなり危なかったけど、また洞窟が崩落する前に倒せてよかった……アリシアたちのほうも平気?」

「……うん。〈神聖堅守〉の結界も張ってたから。テレサも大丈夫。……ねえエリオ、それよりも……」


 と、アリシアが崩れ落ちた巨大ロックタートルのほうを指さした。


「アレ……もしかして水晶……?」

「え?」


 言われて振り返れば、そこにあったのはロックタートルの死骸。

 そしてその砕けた鋼鉄の甲殻から、透明の鉱石が覗いてた。 


「え……これって……!?」


 目を見開いてロックタートルの死骸に駆け寄る。

 よくよく観察するとロックタートルの身体を覆う甲殻はその表面部分だけが鉄製で、その中身はほとんど水晶だった。


「もしかしてこのロックタートル、鉄鉱石偏食型じゃなくて、雑食型だったのか!?」


 慌てて鑑定水晶を取り出し、露出した水晶を鑑定してみる。すると、


『ロッククリスタル:様々な加工に使われる生体鉱物。

 品質:最高級』


 それはまさにルージュさんから依頼された鑑定水晶の素材。

 しかも長きにわたってモンスターの体内で熟成されたおかげか、鑑定結果は〝最高品質〟


「え、ちょっと待って。最高品質っていうのも凄いけど、これってもしかして……」


 僕はごくりと喉を鳴らしてロックタートルの巨大な甲羅に男根剣を挿し入れる。

 死んで魔力の霧散したロックタートルの身体は男根剣で容易に解体できた。

 すると、


「……わぁ。これ全部、ロッククリスタル?」


 アリシアが目をキラキラさせる。

 やはりというかなんというか。

 巨大ロックタートルの纏っていた甲羅の中身は、そのほとんどがクリスタルだった。

 鑑定水晶で見てみればどの部位も最高品質。

 量も普通のクリスタル偏食型ロックタートル数十匹分で、ルージュさんの依頼には十分すぎるほどのものだったのだ。


「こ、これはすごいや……」


 あまりに予想外の収穫に開いた口が塞がらない。

 とはいえ、いまはそれよりも優先すべきことがあった。


「ロッククリスタルは他のモンスターに横取りされないし、ひとかけらだけ持ち帰って回収はあとにしよう。いまはテレサを一刻も早く村に連れ帰ってあげるのが先決だ」


「……うん。そうだね」


 なぜか嬉しそうに僕の顔を見つめるアリシアとともに、僕は洞窟から脱出。

 気絶した父親想いの女の子を連れ、狼煙を目指して村へと戻るのだった。




 僕がテレサを連れ帰ると、村はお祭り騒ぎになった。

 もともと地滑りでの犠牲者0で浮き足立っていたところにテレサの劇的な帰還が加わり、なんかもう関係ない人まで酒盛りをはじめてしまったのだ。便乗宴会である。


「ありがとう……! ありがとう……! なにからなにまで、本当にどうお礼をすればいいか……!」


 そんな宴会の中心で、テレサのお父さんが地面に頭をこすりつける勢いで頭を下げていた。テレサが帰ってきたことで危険地帯へ突っ込んでいく恐れのなくなったお父さんはアリシアの治癒スキルで怪我を治してもらい、すっかり元気になっていたのだ(怪我を負ってから時間が経っちゃってから、さすがに全快とはいかなかったけど)。


「いえ、本当に大丈夫ですよ。テレサさんを助けられて僕も嬉しかったですし。それにここだけの話、テレサさんのおかげで凄い収穫があったんです」


 僕は懐から、このためだけに持ち帰ったロッククリスタルを取り出し、鑑定水晶を通してお父さんにその品質を確認してもらう。


「テレサさんの倒れていた場所で特別なロックタートルを発見したんです。テレサさんを探してなかったら絶対に見つからなかった。これ以上ない報酬ですよ」

「……っ、ありがとう。本当に」


 本心からの僕の言葉にようやくお父さんが納得してくれる。

 さらに、


「あの、エリオールお兄さん」

 

 先ほど目を覚まし、ずっとお父さんにくっついてたテレサがもじもじと服の裾を握り、


「またお父さんに会わせてくれて、本当にありがとう」

「うん、どういたしまして」


 泣きはらしたような顔に満面の笑みを浮かべたテレサの素直なお礼に、僕は自然と湧き出る笑顔で応じるのだった。


 ……男根剣の暴発を我慢できて本当によかった。

 でなければいまごろ、このなにものにも代えがたい報酬を真っ直ぐ受け止めることができていなかっただろうから。



 そうして諸々のトラブルが一件落着。

「俺たちからも礼をさせろ!」と村中からよってたかって歓待を受けた僕とアリシアは満腹状態で村一番の宿に泊まることになった。

 あのアリシアが仲良しもできないくらいたくさん食べさせられ、ロッククリスタル回収に備えて早く寝ようとしていたとき。


 コンコン


「ん?」


 僕とアリシアの泊まっている部屋に来客があった。

 一体誰だろうと思い、先に眠っていたアリシアをベッドに残してドアを開ける。

 するとそこに立っていたのは、


「こんばんは、エリオールさん。今日は素晴らしい活躍でしたね」

「シスタークレア……?」


 なぜか護衛の女性騎士シルビアさんも連れずに一人で現れたその破天荒なシスターは、僕を見つめてにっこりと清楚な笑みを浮かべた。

 


 エリオ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル202

 所持スキル

 絶倫Lv10

 主従契約(Lvなし)

 男根形状変化Lv10

 男根形質変化Lv10

 男根分離Lv8

 異性特効(Lvなし)

 男根再生Lv8

 適正男根自動変化(Lvなし)

 現地妻(Lvなし)

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 アリシア・ブルーアイズ 14歳 ヒューマン 〈神聖騎士〉レベル45

 所持スキル

 身体能力強化【極大】Lv6

 剣戟強化【大】Lv3

 周辺探知Lv5

 ケアヒールLv4

 神聖堅守Lv3

 魔神斬りLv2

(ウェスタール村へ到着するまでにモンスターを狩っていたぶんも含む)


 ――――――――――――――――――――

 書いてから気づいたんですが、親子からお礼を言われてるこの主人公、出して一線越えてはいないですが、遠隔手コキはされてるんですよね。どの面下げて……。

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