第3話 無力と変化と
あぁ、声が聞けた。
良かった、無事だ。
街の電気が消えて、自粛ムードもあり日本全体に暗く重々しいムードが流れているらしい。
遠く離れた地にいる僕は何もできない。
自分の無力さを知った。
なぜ今なんだ...
それからしばらく彼女とは連日連絡を取り続けた。話せば話す程、自分の想いが溢れている事に気付いた。
彼女に付き合って欲しいと言った。
後悔はしたくないと思ったからだ。
時が止まったのか。映画ですか?これは。
一瞬間が空いてOKだった。
こんな状況の中で不謹慎だったけれど、人生で1番のガッツポーズが自然と出ていた。
それからNYと東京の遠距離恋愛が始まった。
時差はマイナス14時間だ。
Skypeを繋ぎっぱなしにして、お互いの近況やとめどない話を毎日何時間もした。
もう自分が止められない。
彼女が大好きだ。
でも彼女の事、まだまだ全然知らない。
僕は何とか休みを作り出して
東京に一時帰国する事にした。
成田空港で出迎えにきてくれた
彼女はとても綺麗でキラキラしていて
昨日まであれだけスラスラとスカイプで話し続けていたのに、いざ対面すると変な緊張でお互い上手く話す事が出来なかった。
それから一緒に過ごした1週間は
とても自分の人生だとは思えないような、
人生で味わった事のないような多幸感に満ち溢れていた。何だこれは。。
幸せな時間
時が経つのは一瞬、とはよく言ったもので
ジェットコースターのように過ぎ去り
名残惜しさと共に僕は再びNYへ舞い戻った。
去り際に泣いている沙希をみて
強くなりたい。
彼女を悲しませる事がないように。
本気でそう思った。
その頃には自分に芽生えた事のない
たくさんの感情が生まれている事に気付いた。あれ、こんな人間だったかなおれ。
それからは彼女と話す時間をより一層大切に
した。一方で自身が彼女を支える力をつける為に必死で勉強に励んだ。
4ヶ月後、NYへ留学して1年が経ち
僕は日本へ完全帰国した。
再び成田空港へ迎えにきてくれた彼女を前にして、何だか長年付き合った彼女のように落ち着いて穏やかな気持ちになれた。
帰国してすぐに2人で同棲の準備を始めた。
さあ、何処に住もうか。
彼女と一緒なら何処でもきっとハッピーだ。
しかし、震災に伴い発生した放射線。
この数値が強いホットスポットが問題になり、僕達がそれぞれ住んでいた実家の地域は該当していた。
僕たちはネットで購入した放射線測量器を手に急ぎ物件探しを開始する事となったのだ。
侮れ Stereoman @stereoman26
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