第31話 迷い

「それでいいんですか?」


目が覚めてすぐフレアに先の件を伝えた。待っていたほうがいいのかと問うと、そんな言葉が返ってくる。


「それでいいかって、良くないに決まってる。仮に第2王子に殺す気がなかったとして安全かわからないし、レイア様が居なくなって王宮内は混乱してる。」


小さな溜め息が聞こえる。フレアは足を組みかえてコーヒーを1口飲んだ。


「あなたはどうしたいんですか?」


「…分からないんだ。というより追う必要があるのかわからない。兄に向き合うというのもそうだけど、私から離れたかったんじゃないかとも思うんだ。」


「そうでしょうか?本当に望んで離れたんだと思いますか?」


「…分からないよ」


「考えて下さい」


冷たい声色に何も言えない。もう一度本当にそれでいいんですか?って聞かれた。期待に添える返事が出来ず俯いていると意気地無しですねって言われる。


「…そうだね」


「エレノワース。慰めてあげましょうか?」


「え?」


「忘れさせてあげますよ」


「…何言ってるの?」


「触ってみて」


フレアの指先に導かれ豊かな胸に触れる。反射的に力を入れると指は沈みふにゅりと形を変える。


「ん…」


「ば、馬鹿。ダメだって!!」


「どうして?」


「え?いや、だって、」


「レイア様に申し訳ないですか?」


それは確かにある。頭にレイア様が過ぎったのは否定できない。


「そもそもこういうの分かんないし、私の事好きなの?」


「…えぇ。好きです。でも今のあなたじゃありません。」


「…え?」


「今のあなたは嫌いです。」


「…。」


失望の色を浮かべる瞳に息が詰まる。


「じゃあなんで」


「レイア様はあなたのことを凄く大事に思っていました。私にはとてもこんな風に離れていくなんて思えないんです。」


「…」


「それなのに、なぜ分からないなんて言葉で逃げるんですか?傷ついたのはレイア様です。」


「フレア…」


「真っ直ぐで馬鹿なあなたが私も好きです。私からも逃げますか…?」


涙がつたって胸に置かれた手に当たる。

私は大事な人を何人泣かせるんだろう。


胸から手を離して、背に腕を回す。正直まだ分からない。でも私も2人が好きだ。2人が望むなら割となんでも出来るし、それはずっと変わらない思いだ。


「…あっ。」


力いっぱい彼女を抱きしめる。先ほどまで強気だったフレアは途端、我に返ったのかエレノワースの背をドンドンと叩いた。


「な、何するんですか…。」


「ごめん。フレア。レイア様を迎えに行くよ。もしかしたらレイア様は私への気持ちを忘れたいのかもしれない。でも、それは私が嫌だから。返せるか分からないけど好きでいてほしいから。」


「エレノワース…」


「それでフレアからももちろん逃げない。私は私の大事な人皆愛するよ。」


「ば、馬鹿じゃないですか?私のことはいいんです。レイア様のことだけ考えて下さい。」


「よくないよ。泣かせてごめん。」


フレアの目からはもう涙はなくて、恥ずかしそうに目を逸らしている。


「馬鹿…」


「馬鹿な私が好きでしょう?」


「…自惚れないでください」


「はは。ごめん。」


「本当に好きでいていいんですか?」


「当然。」


これはきっと親愛的な好きで、恐らくレイア様の好きとも、フレアの好きとも違うもの。


だけど、別にいいじゃないかって思った。


愛していることに変わりはない。


これから忙しくなる。心配で仕方なくて今すぐ飛び出して探したいのはやまやまだが、ここ最近無駄な無理をした自覚はある。きちんと休んで話はそれからだ。

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OLが転生して馬に!?第2王女に気に入られて大出世!?人に戻され学園に通うぅう!? いちごめろん牛乳 @kurura

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