第15話 日常

 休日が明けて、アリシアを迎えにいくシャアルは

最初の休日に自分を選んでもらえなかった事に、

少なからずショックを受けていた。

もちろん次の休日は自分と居てくれる。

でも自分の中に湧き起こっているこの情熱と、

アリシアの心に開きがある事を再認識させられた。


『焦るまい』


そう思ってはいるのだか、思いのほか

バランスを取るのに努力が必要かもしれない。

シャアルは普段から冷静沈着で通っている。

他の者よりも我慢強いし、先の見通しを

立てるのも定評があった。


つがいを見つけてしまってからは、

アリシアの事となると、それが吹っ飛んでしまう

自覚があった。最初、自分はいつも通りだと

思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。

恋に落ちた自分を楽しみたいと思ってしまうのだ。

そして、その気持ちをアリシアと分かち合いたい。


『アリーの方が冷静かもしれん。』


そう思う自分に苦笑いするしかない。

さて、どうやったらアリーと一緒に

楽しめるようになるだろうか。

色々と策を練ってもしょうがない。

アリーの顔を見てから決めよう。

そんな事を考えていたシャアルは、

少し頰を赤らめた、はにかんだアリシアに

出迎えられた。


『……これは、何とも……。ダメだ、愛らしい……』


シャアルはあまりにも初々しく可愛らしく見えるアリシアに、唖然とした。

……さっきの焦るまいと思った決心が、打ち砕かれそうになる。

シャアルは大きく1つ深呼吸し、アリシアに目を向ける。

「おはようございます、アリー」

とろけるような笑顔で

そう言ってエスコートのため、手を取った。

「おはようございます、シャアル様」

アリシアがシャアルのエスコートを受ける。

「では参りましょうか」

シャアルは出来る限り、普段通りにふるまった。

アリシアの心に負担をかけてはならない。

その想いがあれば、自制はできる。


『次のチャンスを待とう』


シャアルはそう思うのだった。

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