第7話 新しい日々
アリシアは起きた瞬間から喜びに満ち溢れていた。
今日も自分の仕事ができる!!それはアリシアの念願だったのだ。
部署に入る前にみんなと同じくテストを受けたが、難なくクリアした。
アリシアの部署には男性が4人いた。コナー、メキディス、ルベン、マチューの
様々な年齢と性格のメンバーだ。
アリシアにとってラッキーだったのはコナーが人族だった事だ。
彼らは人族に慣れており、力加減など何の問題もなかった。
もちろん人族への偏見もなく、毎日古文書に向き合い
色々な議論をし、あっというまに時間はすぎた。
あまりにも順調なすべり出しに、
シャアルに護衛は必要ないのではと申し出てみたが、
これから王宮内や、外の仕事も増えますからと
やんわりかわされてしまっていた。
送り迎えや護衛の他にも、シャアルは毎日プレゼントを持ってきてくれるのだ。
一輪の花や、小さなお菓子、リボンや髪留め。
どれも素敵なものでアリシアは喜ぶ反面、困ってしまっていた。
それを知ったフィルとグラントは、
アリシアに聞こえない事を良いことにヒソヒソ何か話している。
「おい……あれって……求愛行動なのか……?」
「そうだと思うよ。……あー、兄様 もう言わないで……。
仕事に行く気がなくなっちゃうよ……」
「いや、聞いた事はあったが……こんなにあけっぴろげに……」
「寡黙で余計な話は一切しないって聞いてたのに……ウソだったの?!」
「女性は冷たくあしらわれてたって聞いてたけど……。
俺もその時がきたら、あんな風に豹変するのかっ……?!
……もはや父上は母上にすっかり白旗をあげたからな、当てにはならんし……。
いいか、アリシアはまだ気が付いていないから余計な事は言うなよ」
「もちろんだよ。父上、涙目で母上に慰められたらしいよ……2時間も……」
「マリー情報だろ、それ」
「僕たちにもムダなあがきはしないようにってカラカラ笑ってた」
「マリー……」
フィルがまた上を見上げた。
プレゼントの他にも、もう一つアリシアを困惑させることがあった。
シャアルにやたらとエスコートされている気がするのだ。
仕事を始めてしまえばエスコートの必要はないと思うのに、
シャアルは立ち上がろうとする度にサッと手を取る。
それを見て、同僚のコナーはあんぐりと口を開けていた。
やはり兄達のようにヒソヒソとルベンと話をしている。
「ねぇ、ルベン……僕は良く分からないんだけど、あれって……」
「いいか、コナー。あれが見本だ。
気をつけろ、敵認定されたら とんだトバッチリじゃすまんぞ」
アリシアの困惑は深くなり帰宅後、ついに母に全てを話したのだ。
母はコロコロと楽しそうに笑いながら
「あらあら、そうなの。それは親切な方ね。
そうねぇ、辺境伯様とは個人的なお話をする暇なんてないんでしょう?」
「えぇ、いつも送迎してくださる間とお昼休みくらいよ」
「そう、でしたらそのままで良いのでは?
ただプレゼントをいただきっぱなしではいけないから、
お礼のお手紙は出しておいたら?」
「そう……そうね、そうしてみるわ」
『それにしてもコナーとルベンは何の話をしていたのかしら?
私たちを見ていたから、てっきり私の事かと思ったのに…… 』
毎日のワクワクと困惑を抱えて、アリシアは忙しく過ごすのだった。
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