第67話 西京ネズミ―ランド(3)

「いやぁぁぁ!」

 悲鳴を上げる優子は、傍らに座るアイちゃんに抱き着いた。

「こんなところで死にたくなぁぁぁァァい」

 涙がちょちょぎれる優子

 一方、アイちゃんは、静かに、ビニール袋のチョコをかじっていた。


 観覧車のまわりの観衆から悲鳴が起きる。

 皆が上空の観覧車を見上げていた。

 落下するゴンドラ。

 地上に激突すれば大破! 間違いなしである。


 ネズミのモンスターが、すばやく落下地点の人々を回避させる。

 もはや、ゴンドラの中の人間は助かるまい。せめて、地上の観衆だけでも守らないと。ゴンドラのまきぞいから回避させるかのようにてきぱきと動く。やはり、ココはネズミ―ランド、スタッフの教育は行き届いている。まさに、軍隊そのものである。


「お前! そこを離れろ!」

 ネズミのモンスターが叫んだ。

「うん?」

 おそろいのネズミのカチューシャを付けたヤドンとムンネがソフトクリームをなめながら振り向いた。

「お前! ゴンドラが!」

「ゴンドラだと! 俺はドラゴンだ!」

 話がまったくかみ合わない。


 もうだめだと言わんばかり、ネズミのモンスターは避難した。

 その様子を怪訝そうに見つめていたヤドンは、何気に上空を見上げた。


 上空から迫りくる一つのゴンドラ。


 おおおおお!

 

 ヤドンはとっさにムンネ見た。

 ムンネは、ほっぺにクリームをつけながら嬉しそうにソフトクリームを舐めている。

 さすがに時間がない。

――ちっ! 

 ムンネを突き飛ばすと背中の剣を振りかざす。

 そう、二刀の性剣セ●クス・カリ・バーである。


 てやっぁぁぁ!

「十文字切り!」

 ゴンドラがヤドンに直撃する瞬間、二刀の剣撃がクロスした。


 ポニョン!


 性剣セ●クス・カリ・バーの刀身は、ゴンドラに直撃するとともに、その身を柔らかく折り曲げた。

 まるで、優しくゴンドラをさするかのように、その肌をこすっていく。

 アァァァ

 まるで、無機質なゴンドラから喘ぎ声が聞こえるかのようである。

 しかし、ゴンドラの激しい欲情は止まらない。

 上空から迫りくるゴンドラは、ヤドンの胸に飛び込んだ。そう、しばらく会っていなかった女が、男の胸へと飛び込むかのように。


ドゴォーーーン!

 ヤドンはつぶれた。


 まぁ、性剣セ●クス・カリ・バーは、巨大シリコンバ●ブだから当然と言えば当然である。


 土煙を立てるゴンドラの横で、尻もちをつくムンネは、何がおこったのか分からなかった。

 ムンネはとっさにヤドンによって突き飛ばされたのだ。その勢いでムンネはその場に尻もちをついた。何すんねん! と怒りの表情をヤドンに向けた瞬間。ヤドンが轟音と共につぶれたのである。

 ムンネの怒りは、不発に終わる。それどころか、その身を挺して自分を守ってくれたヤドンに対して、ムンネは何を思ったのであろうか。ムンネの中の悲しみが爆発した。

「旦那様ぁぁぁぁぁ!」

 ムンネはゴンドラに駆け寄った。必死にゴンドラの下の地面を手で掘り返す。

「いやぁぁ! いやぁぁ!」

 飛び散る小石。それと共に赤い飛沫も飛び散った。

 懸命に手で掘るムンネの爪が、剥がれ落ち、血をまき散らしていた。

「旦那様……まだ、今日のパンツ、履き替えてないんですよ……」

 ムンネは力なくうなだれた。


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【えっ? つぶれたの……ちょっとラーメン食べ終わるまで待って!】


氏名 ヤドン

年齢 902歳

職業 変態勇者

レベル 99(回復中)


体力 200

力 180

魔力 150

知力 8→6

素早 40

耐久 50

器用 40

運  3

固有スキル 

死亡回数 0


右手装備 性剣セ●クス・カリ・バー

左手装備 性剣セ●クス・カリ・バー

頭装備  ネズミの耳のカチューシャ(ムンネとおそろい♡)

上半身装備 勇者の鎧(自称)

下半身装備 ブリーフパンツ

靴装備 なし


攻撃力 156

守備力 170→171


所持金 102,999,892

パーティ 優子

婚約 ムンネ

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