第55話 ムンネの二つ名
エムシーのアナウンスが街に響く。
「えーっと、たった今、テッドさんが撃破された模様です。テッドさんが撃破されました。あと残るは新井さんのみです! さぁ、皆さん頑張っていきまショイ!」
ヤドンはどうやら、黒焦げの死体の中でも食べれるものは無いかと探すそうである。
それを手伝うムンネ。
「旦那様! この辺り焦げてませんよ!」
その手にゆらゆらと湯気を立てる心臓が握られていた。
黒焦げのクマのぬいぐるみの上で、湯気だつ心臓を掲げ、嬉しそうに手を振る姿。
まさにその姿、死体を弄ぶ魔女そのものである。
後に、この姿を見た冒険者たちは噂した。
変態魔女ムンネディカは、実は人を食う恐ろしい魔女であると。
ムンネディカの名前に男喰いが追記された。
ここに男喰いの変態魔女ムンネディカの伝説が始まった。
そんなアホ二人にお構いなしの優子とプアールはアイちゃんを頭に引っ付け直し、新井さんを探す。
「後は新井さんだけね。新井さんも私たちが撃破するわよ!」
優子は意気揚々と叫ぶと、拳を握った。
ゲロ!
何かの鳴き声がする。
ゲロ!ゲロ!
確かに鳴き声が。
ふと足元を見る優子
「きゃぁ!」
咄嗟に飛びのく優子。
「どうしたんですか?」
プアールが不思議そうに尋ねた。
「カエルがいるのよ! カエル!」
石畳の道の上に、緑の小さなカエルが鳴いていた。
カエルを見つめるプアール
その目はだんだんと笑いだす。
地面に顔をこすりつけカエルを見つめる。その口は、だらしなくだんだんと緩んでいく。
まさか、この女神、カエルフェチ?
優子はドン引きだ。
しかし、そのプアールから発せられた言葉は意外な物だった。
「おいしそうですね……何日ぶりの肉でしょう」
プアールの口からよだれが垂れ落ちていた。
引きつる優子。
「もしかしてだけど……食べるの?」
「えっ?優子さん食べないんですか?おいしいですよ」
「食べないわよ! カエルなんて!」
「だったら私一人で食べてもいいですよね!」
「勝手にしなさいよ! ただし、食べるときは私の見えないところで食べてね!」
「分かりましたよ。それではいただきまーす!」
カエルに手を伸ばすプアール。
えっ! 生ですか? 踊り食いですか? せめて火は通そうよ。
ビックリしたカエルは逃げ出した。
ピョンピョンと飛び跳ね逃げていく。
このカエル、自分が食べられるということが分かったのであろうか?
もしそうであれば、かなり知能が高いと見える。
それを追う、プアール
こちらも、石畳の上を四つん這いで飛び跳ねながら追っている。
ピョンピョン
この女神、もうカエルを食べることしか頭にないようである。
もしそうであれば、かなり知能が低いと見える。
二匹のカエルが飛び跳ねながら側道の奥へと消えていった。
「あの女神……馬鹿なの?」
優子はあきれてつぶやいた。
しかし、レベル1の優子一人でアンデッドの新井さんを倒すことはできるのであろうか。
いや、よくよく考えてみると、あのダメ女神のプアールがいたところでどうしようもない。
やはり、ここは一度戻って、ヤドンとムンネと合流する方がいいかも。
優子は、背後を振り返った。
その時、2匹のカエルたちが消えた路地奥からひときわ大きな悲鳴が聞こえた。
この悲鳴、どこかで聞いたことがあるような。
言われてみればプアールの声に似ているような似ていないような。
まあ、いいか!
-----------------------------------------------
【二つ名が更新されたよ】
氏名 ムンネディカ
年齢 35歳
職業 変態魔女 →男喰いの変態魔女
レベル 88
体力 104,006→104,007(もう回復したよ)
力 501
魔力 757
知力 22
素早 400
耐久 400
器用 60
運 100
固有スキル 産卵?
死亡回数 0
右手装備 こんにゃく指輪
左手装備 ブーケ
頭装備 ティアラ
上半身装備 ウェディングドレス
下半身装備 ウェディングドレス
靴装備 白いヒール
攻撃力 552
守備力 431
所持金 2,530
婚約 ヤドン
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます