第34話 魔女ムンネディカ(6)

 ムンネは、しずしずと土俵を下りると、ヤドンのまえに歩み寄る。そして、静かに膝を折、三つ指をついて頭を下げた。

「不束者ではありますが、どうぞ末永くお願いいたします」

「はぁ、お願いいたします」

 訳が分からないヤドンは、とりあえず、相槌をうった。


 オイ! 相撲勝負の条件はどうなったんだよ? 結局、顔か! 顔なんだろ!


「では、その婚姻届けをいただけますか。私も記入しますゆえ」

 ますます混乱するヤドンは、自ら持つコピー用紙を指さした。

「これの事か?」

「はい、さようでございます」

「いるんだったら、どうぞ」

 ムンネは頭の上に手をかざし、丁寧にコピー用紙を受け取った。

 そして、その内容を確かめた。

 しかし、そこにあるのかいてあるのは、megazonの利用停止の告知文章。

 どこからどう見ても告知文章である。


 にこやかに笑うムンネはスッと立ち上がると、自分の着替えから何かを取り出した。

 次に瞬間、鬼のような形相で、コピー用紙の裏に何かを懸命に書き出した。

 その動きがピタリと止まる。


 また、ムンネはにこやかに笑いながら、ヤドンのもとへと近づいてきた。

「旦那様、こちらにご署名をお願いします」

 ヤドンにペンとコピー用紙を丁寧に手渡した。

 ヤドンはそのコピー用紙を引き寄せると、何を書いたのかを確認した。


『婚姻届け 魔女ムンネディカと勇者    は、ここに婚姻する。』


 どうもこの空白にヤドンの名前を書けと言うことらしい。

「ここに書けばいいのか?」

 ヤドンは尋ねた。

「はい」

 ムンネはにこやかに微笑んだ。


 その刹那、ヤドンの後頭部を優子がしばいた。

「アホか! それは婚姻届けだろうが!」

 ヤドンの体力が10減少し体力200→190になった。


「婚姻届けってなんだ?」

 後頭部をこすりながらヤドンがつぶやく。

「結婚するってことよ!」

「結婚ってなんだ?」

「トカゲの言葉で言ったら繁殖よ繁殖!」

「おぉ繁殖か! いいではないか!」

「アホか! 人間とトカゲで繁殖できるか!」

「トカゲではない! ドラゴンだ!」

「どっちも一緒じゃ!」


 その言葉を聞いてムンネが驚く。

「えっ! 勇者様はドラゴンなのですか?」

「そうだけど」

「あぁ、荒々しいドラゴンの体……私、一生懸命! 頑張ります!」

 優子が白けた目でつぶやいた

「一体、何を頑張るっていうのですか……」

「えっ、決まってるじゃない繁殖よ繁殖」

 ムンネが素っ頓狂な声で答えた。

「だから、種が違うから無理だって……」

「愛は種族を超えるのよ。あなた知らなかった?」

「無理ですって……」

「あら、オカピだってシマウマとシカのあいの子じゃない」

「違います……オカピはオカピです」

「まぁいいわ。愛があれば大丈夫。私、ドラゴンの赤ちゃん産みます!」

「何言ってるのよ! この年増!」

 ムンネが優子をキッとにらんだ。

「今、なんとおっしゃいました。確か年増と……女は35歳からですわ。このションベン臭い小娘が!」

 ムンネは手を天空に掲げたと思うと、空から幾条もの赤い炎の筋が下りてきた。


 そして、次の瞬間、広場を圧縮された空気の衝撃が襲った。

 天空から隕石が次々とこの広場に落ちてくる。


 ひぃ!

 優子はヤドンの影に隠れた。

 隕石が地面にぶつかると大きな爆発を引き起こす。

 その発生した衝撃波が周りの建物を次々となぎ倒す。

 衝撃によりくぼんだ大地が赤く、マグマのように溶けだしていた。

 それが一つだけではない……

 次々と飛来する隕石群


 ほどなくして、オタンコナッシーの町の約2/3が消滅した。

 俗に語り継がれる、「勇者と魔女の結婚式」であった。


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【とりあえず……】

氏名 ムンネディカ 

年齢 34歳

職業 変態魔女

レベル 88


体力 104,007

力  501

魔力 857

知力 22

素早 400

耐久 400

器用 60

運  100

固有スキル 婚活!

死亡回数 0


右手装備 なし

左手装備 なし

頭装備 なし

上半身装備 ブラ

下半身装備 ふんどし

靴装備 なし


攻撃力 552

守備力 431


所持金 2,530

パーティ なし


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