第16話 新たなる世界(2)

 優子は藪の中に駆け込むと持っていたスクールバックの中に手を突っ込んだ。


 服! 服!


 しかし、すぐ近くにあるはずのバックの底に手が触れない。

 バックの中を掻きまわす手は、何か大きな空間の中でぐるぐると回っていた。


 優子は焦った。


 とりあえず着る物。

 制服でも何でもいい。

 そう、学校のセーラー服だ!

 必死で優子の手は、スクールバックの中を探した。


 その時、優子の手に何かが触れた。


 優子はそれを掴むと咄嗟に手を引き出した。

 優子の手には、セーラー服とスカートがにぎりしめられていた。


 アルガドラスの世界の女子学生もセーラー服を着ていたと言うことか。

 たぶん、そうなんだろう。

 きっとそうだ!


 優子はとりあえず、それを身に着けた。

 サイズは、ピッタリ! 若干、胸周りがタブつくのは仕方ない。

 それは、優子の理想と現実のギャップのせいだろう。


 今度は靴、今度はセーラー服リボンを頭に描いた。

 すると、やはり靴とリボンがカバンから取り出せた。


 次はパンツ!

 バックからオッサンのトランクスが引きずり出された。


「なんでトランクスなのよ!」


 もしかして、優子さん、欲求不満ってやつですか?

 優子は自分好みのパンツを思い描く。


「純白で……レースがあって……シルク地で……」


 優子はイメージすると、バックの中に手を突っ込んだ。

 すると、純白のパンツが現れた。


 優子は、なんとなくスクールバックの仕組みが分かってきた。

 どうやらこのスクールバックは、自分が思い浮かべたものが出てくるらしい。


 ハハンと優子の口角が歪む。


 優子は頭の中で強く念じた。


 ――お金! お金! お金! お金!


 そして、勢いよくバックの中に手を突っ込んだ。


 しかし、優子の手は何もつかむことができなかった。

 バックの中で優子の手は、クルクル回るだけ。


 ――おかしい……この感じだと、お金を掴むことができるはずなのに……


 優子の頭に、前の世界アルガドラスでは苦労したことがよみがえる。

 アルガドラスでソロで戦うことを決意した優子は、装備を買うためのお金を一人で稼がなくてはならなかった。


 しかし、低レベル時というのは、大体決まってお金集めというのは大変な仕様なのだ。

 倒せるモンスターのレベルは低い、こなせるクエストもレベルが低い。

 当然得られる報酬も低いのである。

 至極当然の話である。


 ――かったるい! そんなのかったるすぎる!


 レベル1の優子は咄嗟に名案を思いついたのである。


 ――簡単にお金集める方法があるじゃない。


 すぐに優子はその方法を実行に移した。


 パパ活!


 ギルドの掲示板に、『パパ募集! 当方13歳の女子中学生!』との張り紙を出した。


 13歳?


 まぁ、胸だけ見ると13歳でも行けるだろう。


 そして、優子のもとに道具屋の店主、役人、勇者などいろいろな男が集まった。

 多少危ない目にもあったが、優子の手には、300万円もの現金が集まっていた。

 また、幸運なことにパパ活は、副次的な効果ももたらしてくれた。

 おやじたちの趣味に付き合っているうちに優子のレベルが10にまで上がっていたのである。

 そして、戦闘スキルもまた覚えていた。


『ムチスキルしびれ打ち』『ムチスキル双蛇打ち』『捕獲スキル鉄錠拘束』『捕獲スキル亀甲縛り』


 優子は300万の現金を、お気に入りのうさちゃんのお財布に入れ、魔王退治に旅立った。



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