第2話 最初からクライマックス(2)

 ドドドドドドーン!


 怒号のような発射音と共に13本の白煙が箱からまっすぐに飛び出した。

 ドリルミサイルは高速回転を伴いながら目の前にそびえたつ優子の四倍ほどもあろうかという大きな金色のドラゴンへと飛んでいく。


 そう、優子は今ドラゴンとの戦闘中であったのだ。

 そりゃぁ焦るはずだわ! 納得。納得。

 って、普通バトル中に買い物するか?


 金色の二枚の羽をもつドラゴンは太い二つの足で仁王立つ。

 頭に生える立派な双角が王者の風格を現わしていた。

 そう、これこそドラゴンの中のドラゴン!

 まあ、いわゆるキング・オブ・ドラゴンである。


 なぜ、そんな凄いドラゴンと女子高生の優子が戦っているかだって?

 まぁ……それぞれにいろいろと思惑があるんですよ……たぶん。


 ギャアぁぁぁぁ

 洞窟の中にドラゴンの周囲のすべてを揺らすかのような悲鳴が響き渡る。

 ドリルミサイルが次々とドラゴンの体にヒットすると、その回転によって金色の鱗を穿っていたのだ。

 鋼鉄よりも硬いと言われるドラゴンの鱗!

 それなのにドリルミサイルが嫌がらせのようにウリウリと少しずつめり込んでくるのである。

 そりゃぁ痛いだろう。


 しかも、このドリルミサイルはオリハルコン製。

 オリハルコンといえばココ異世界ではもっとも硬い金属だ。

 当然、それ相応にお値段もする!

 そんなオリハルコンをミサイルとして惜しげもなく13個もぶちこんだのだ。

 この優子という女は一体何者なのだろうか?


 ドゴン! ドゴン! ドゴン!

 鈍い爆発音がドラゴンの体内から聞こえてきた。

 それと共に体にあいた13個の穴から大量の血が噴き出したではないか。

 どうやら体の中へと潜り込んだミサイルが爆発を起こしたようである。

 力なく崩れゆくドラゴンの体からは13本もの血柱が立っていた。


 息も絶え絶えのドラゴンは地に頭をつけ力ない瞳で優子をにらみ上げる。

「小娘……お前は一体何者だというのだ!」

「私は優子! ただの女子高生! 通販が大好きな普通の女子高生よ! 覚えておきなさい!」

 肩に担いでいたミサイルランチャーをドスンという音ともに地面に落とした優子が、腰に手をやり偉そうにドラゴンを見下していた。

 もうその偉そうな態度といったら我が子ならば尻を叩きたいぐらいに憎たらしい。


「女子高生とな! なんと勇者よりも上位の職業があったいうのか……」

 ちなみに、この女子高生の前でみっともなく這えずっているこのドラゴンは、魔王軍幹部を制した勇者をかつて指先一つで蹴散らしたという、結構強い(自称)ドラゴンなのである。


 このヤカンドレルという世界はかつて一人の魔王と八人の魔王幹部によって征服されていた。

 そこにさっそうと現れた勇者様ご一行が、なんのかんのとしているうちに魔王軍幹部八人を撃退したのである。

 そして魔王といえば、その間にとんずらこいて現在行方不明。

 そのかいあって、このヤカンドレルは平和になりました。めでたし、めでたし。

 って、まぁここは、いわゆるゲーム世界のような異世界なのである。


 しかし、ドラゴンと言えば、このヤカンドレルにおいて食物連鎖の頂点に立つ種族。

 しかも、金色のドラゴンはこの中でも上位に位置していると思われた。

 だって、金色って……なんか高価そうなイメージがするじゃん!




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