レベル上げなんてかったるい!異世界の担当女神は配達員!スマホ片手にブリーフパンツの変態勇者(自称)と無双する!なぜか幼女がゾンビになっちゃったのでテイムしたら保険金目的で殺されそうなんだって!復讐よ!

ぺんぺん草のすけ

第1話 最初からクライマックス(1)

「おまたせしました。いつもご利用ありがとうございます。コチラに受け取りのサインをお願いいたしまぁ~す」


 白地に青ラインの制服を身にまとう女性配達員がはつらつな声を上げると、一枚の受取書を差し出した。


 しかし、その突き出す手の……なんと汚いことだろうか。


 その細い指先のいたるところに黒ずんだシミが沈着し傷だらけでボロボロ。

 この手に比べると畑仕事をしているばあちゃんの方がよっぽどきれいなぐらいだ。

 例えるならば、ホームレスのような手? 

 この女、もしかしてよほどの苦労人なのだろうか?

 それとも単にスキンケアをしていないズボラちゃんなのだろうか?


「遅いわよ! 5秒以内に即配達でしょうが!」

 そんな受取書の上に別の女のスラリとした手がのびる。

 こちらは先ほどの女と違ってスベスベだ。肌の張り艶ともに申し分ない。

 女は赤い光に照らし出される受取書に慌ててサインをし始めた。


 赤い光は壁にかかる松明の炎。

 それ以外に明かりとなるものは何もない。

 そう、ココは深い深い洞窟の奥なのだ。

 しかもその最下層の大空洞。


 だが、最近は便利になったものだ。

 こんな洞窟の奥まで通販の配達が来てくれるとは、流通の皆さんの日頃の苦労が忍ばれる。

 しかし、そもそもこんなところで配達を頼むヤツがいる事自体が驚きである。


 だが、本当に汚い字である。

 受取書に書かれたその字はミミズがのたうち回ったようで何を書いたのか全く見当がつかない。

 うーん。なになに、木間暮優子きまぐれゆうこ

 そうか! この女の名前は木間暮優子と言うのか!

 象形文字のような汚い文字とは裏腹に、それを書いた優子の顔立ちは、瑞々しくとても美しい。

 長い黒髪は艶がある。どうやらよく手入れがされているようだ。

 そのスラリとした細身の身長は約160cmと言ったところだろうか。

 身につける白地の半袖のセーラー服に赤いリボンがよく映えている。

 ということは、この娘、おそらく女子高生なのだろう。


「そう言われても、こんな場所分かるわけないじゃないですか……」

 優子がサインをしている間に、優子とさほど年格好が変わらぬこの女性配達員は自分がのってきたママチャリの荷台から荷物を下ろし始めていた。

 大きな箱状のものを両手に抱えると気合を入れる。

 おそらくとても重たいのだろう。抱える体がフラフラと揺れると青い髪のポニテールもまた右に左にと揺れていた。

 優子の前にドサっと置かれた箱。

 地面がその重みでボコッとめり込んだのは、きっと気のせい。


「梱包していませんがよろしかったですか? 当社ではプレゼント包装も承っております」

「梱包なんて不要よ!」

 梱包すらされていないその無粋なただの箱は鼠色のにぶい金属光を反射していた。


 優子はサインをした受取書を女性配達員に力強く押し付けると、地面に置かれた箱を力いっぱい肩に担ぎあげようとした。


 しかし、重い!


 その金属の箱は、その見てくれどおりとにかく重かった。

 しかし、あの女性配達員は苦もなく運んでいたというのに……


 うんがぁぁぁ!

 気合一発!


 優子は両足をがに股に大きく開くと、その箱を担いだ体を支えた。

 既に、顔がトイレに座り肛門に詰まった便秘の固い栓をひねりだすかのような憤怒の表情に変わっていた。


 一方、女性配達員は受取書を確認すると笑顔で頭を下げていた。

「ご利用ありがとうございます。スイッチは横にあります。後はいつも通りオートですのでご安心ください」


 それを聞いた優子は、担いだ箱の横にある起動スイッチを急いで入れた。


 瞬間、高い起動音がなり響く。

 そして、トリガーを引く優子は絶叫したのだ。


「13連装ドリルミサイル(オリハルコン純度99.7%、数量限定品)発射ぁぁぁぁあ!」




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