第2話 後輩の予定。

ひいらぎ


「・・・春崎はるさき先輩?」


 廊下で一人歩いていたひいらぎを呼び止める。


「・・・相変わらず、モテる要素が無い顔ですね」


「ホットケーキミックス(注釈:ほっとけ、と言いたい)」


「・・・どうされましたか?」


「明日の休み、予定あるか?」


「・・・空いてます」


「遊びに行かないか?」


「・・・」


 ひいらぎは下を向き、スカートをギュッと握った。


「大丈夫だ! 俺だけじゃない! チュウもいるし、女子も一人来る!」


「・・・ひさぎさんもいるんですか」


「ああ」


「・・・もう1人の方は、どんな人ですか?」


「転校生だ。その子にこの辺の地理を教えるのが目的の一つだ」


「・・・そうですか」


 ひいらぎが考える素振りを見せる。



「・・・お聞きしますが、春崎先輩、その転校生さんのこと、す、す、す、す、す、すき、ききききき、な、な、なんてことあ、あ、あ、ありえませんですかあああああああああああ?」



 脳裏に木夏のいたずらっ子みたいな邪悪な笑みがよぎった。


「ない」


 即答。


「・・・ですよね」


 ひいらぎが小悪魔のようにクスッと笑う。


「どうせモテねえよ」


「・・・先に言われました」


「で、明日は来れそうか?」


「・・・はい。その誘い受けさせていただきます」


「よかった。明日の朝、駅前に集合な。遅れるなよ」


「・・・春崎先輩こそ、寝坊しないでくださいね」


「フッ、それは無理な相談だ」


「・・・なんでやねんです」


 ひいらぎは眠そうな目をさらに細め、ジトッと俺を見る。


 俺は手をヒラヒラして、その場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る