第10話 ケース。

「ただいま」


「おかえり。ちゃんと手洗いとうがいしなさいよ!」


「空気中の水分で手を洗いながら帰って来たから大丈・・・」


「バカな事言ってないでさっさとやりなさいッ!」


「・・・へーい」


「返事はハイでしょ!」


「ハイ!」


 俺は飛ぶように洗面台へ行き、手洗いとうがいをした。




 俺の部屋でカバンを開ける。


「面倒事は先に片付ける。宿題を終わらせてから、くつろぐのが俺のスタンスだ」


 三教科から宿題があった。


「なんだこれ?」


 カバンから教科書、ノートを取り出していると、見慣れないケースが出てきた。


 開けてみる。


 パカッ。




 注射器。

 ピンク錠剤。

 白い錠剤。

 白い錠剤。

 白い錠剤。

 白い錠剤。

 白い錠剤。

 白い錠剤。

 黄色い錠剤。

 青い錠剤。

 カプセル錠剤。

 カプセル錠剤。

 カプセル錠剤。

 カプセル錠剤。





 薬が400個以上出てきた。


「・・・え?」


 薬には1日3回 朝・昼・夕食後服用と書かれている。


 嫌な予感がした。


 思い出されるのは、朝、ぶつかって、カバンの中身が散乱さんらんした時。





 これは誰の持ち物だろうか・・・。





 脳裏に笑顔で笑う女の子が浮かぶ。





 瞬間、





 俺はケースを持って、走り出していた。




 

「ちょっと、どこ行くの! もう夕飯よ!」





 お袋の声は無視して、俺は外に飛び出す。





 あの曲がり角まで、俺は疲れるのも構わず、朝より早く、全力疾走していた。

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