雨の日

午前8時起床。

今日は稀に見る雨だ。


「雨かぁ.........」


とても憂鬱な気分になる。なぜかと言われれば単純に頭は痛くなるし、靴や靴下は濡れるし、学校への登校時間が長くなるし、教科書等が濡れる心配もある。だから俺は雨が嫌いだ。大嫌いだ。決めた。今日は家から1歩も出ない。絶対家にいる。昨日も「明日はゆっくりしましょう」と、アナに言われた。

目覚ましも兼ねて俺は久しぶりにスイッチを開く。俺はゲームはパソコンじゃなくてスイッチ派なんだな〜。なーんて誰に言ってるのだか。久しぶりにフォ〇ナを開く。

あれ? こんなに難しいゲームだったっけ? 全然操作が上手くいかない。


「クソ.........」


結果、59位。俺はベッドに倒れ込む。悔しいが、また負けるだけと思うと手が出せなくなる。とりあえず、気分を害したとはいえ、目覚ましとしては良かったので、結果オーライということで俺はリビングに向かった。


——


朝食後の一服。要するにお茶の時間。

雨は家に叩きつけるように降っていて、最早音がうるさい。


「ニクス。あなたお母さんお父さんそろそろ帰って

来るんじゃないの? 」


「え? ちょっとまって。今日って何日? 」


咄嗟に聞いたが、アナも把握していないらしく、カレンダーを確認する。


「今日は8月7日ね。あ、書いてある.........」


アナの顔が青ざめる。


「おいおい。なぁ。まさかだけど.........」


「そのまさかよ。今日、それも午後帰ってくる

わ.........」


「どうしたんだい? 2人で青ざめた顔をして。って

えぇ!? 」


アブァはいつものように聞いて来たかと思ったらいきなり驚く。こっちがビビるわ!


「まずいねぇ」


アブァは考えるような仕草で答える。眉間に皺を寄せて考えている。


「そーなのよアブァさん。どうするの? ニクス」


「いやそう言われてもな.........」


アナはまだいける可能性がある。彼女と言えばとりあえずは凌げるだろう。問題はアブァをどうするかだ。設定が難しい。


「なぁ、この前言っていた記憶を書き換える魔法っ

て使えないのか? 」


「私は音専門だし」


「僕は雑になっちゃうからやらない方がマシだよ」


「アブァ。お前何が出来ないんだよ.........」


全能じゃねぇか。チートだチート。


「2人はとりあえず髪色が銀髪だから兄妹ってことに

して、ここにいる理由を考えるぞ」


「正直に言って居候と言うのは? 」


「だとしたら無断で居候させるなんて俺がいくらド

ヤされても足りねぇよ」


「じゃあ、僕達はニクス君の友達でどう? 」


「あいにく、俺が友達の居ないことは既に親は知っ

ているから無理だ」


自分で言ってて悲しくなる。なんでこうなったなったんだか。


「私達はネッ友っていう設定は? 」


「それもまたドヤされる」


当たり前だ。ネッ友を家になんか呼んだら何が起こってもしょうがないからな。




「「「.........」」」




万事休す。


——


親が帰ってきた。


——


俺の部屋にて、


「ねぇ。どう誤魔化したのよ結局」


「えっとな。お前とアブァを兄妹にするのは成功し

て、あとはホームステイ先が手違いで家になった

と言ったら「おー。いーじゃないの楽しそうね」っ

てウキウキしてた」


「あんたのお母さんどういう感性してんのよ.........」


薄ら笑いでアナは言う。もしかしたら失笑の可能性もあるが。


「まぁ旅行の後って何でもかんでも幸せに感じるら

しいからな」


へぇ。と、アナは軽く返す。

別に旅行しててもしてなくても同じような性格なんだけどな。なんというか包容力というか適応力が強い母だ。


「ねぇねぇ。この前みたいなゲームしようよ」


アナは手首を使ってカモンカモンと、煽る。多分逆のことをしたかったのだろう。こっちこっちとやるのが普通だ。


「じゃあ今回は単純なやつだな」


「うん。じゃないと理解するだけで日が暮れちゃうからね。2人は呼ぶの? 」


「2人か〜。ま、そっとしておこうぜ」


今日は「雨の日は何もやる気がしない〜」と言ってニコはふて寝をした。そうすると自動的に起きるのはあーたんもとい、アーサーである。と、言うことで2人の楽しい楽しい雑談という訳だ。ていうか、ニコはどうやって睡眠を取っているんだ? 寝てないことになるよな.........。


「どうしたのよ。珍しく考え込んでるみたいだけど」


「珍しくはねぇよ。よく考えてるわ。考えすぎてオ

ーバーヒートしそうだしな」


「じゃあすれば? 」


真顔で言うなそんな辛辣なお言葉。心にぶっ刺さる。刺さりまくる。

気を取り直して、


「じゃあ今日はトランプのスピードでどうだ? 」


「いやいや。もっと単純なのあるでしょ? 」


そう言って自慢げに腕をアピールする。まさか。まっさかなぁ。


——


小学生の時はこれで盛り上がった思い出がある。まぁ俺はいつでもその観客だったが。それを面白く思うのは勝てる腕っぷし共であって、別に万人がやって万人にウケるゲームではない。あとは好きな友達と手を繋げるというよく分からない理由の為にやってる奴を見たこともある。要するに俺の嫌いなゲーム、


「じゃあ、腕相撲をしましょう」


「は? 」


素で言ってしまった。


「だーかーらー腕相撲! 」


「お、おう。いやわかるから。でもお前自分がどれ

だけ強いかちゃんと知っているか? 」


「さぁね〜」


絶対知っているな。これは不味い。辞退しようとすると、


「あ、これ強制だから」


「はいはい。まぁわかってたけど」


——


「RedyーGo」


バコン!


と、いう音が発音のいいスタートの合図から間髪入れず、部屋中に鳴り響く。

彼女の顔は本気マジだった。表情がないことがそれを証明する。

俺の部屋でやるのは良かったが、部屋にあった台として使っていた小さなテーブルがぶっ壊れる。まるで瓦割りをするように。こうなると間のタオルは俺の手か? っていうくらいの勢いだった。こうなると、俺の右手を心配する人もいるだろう。もちろん俺の手の骨は多くが砕け(たぶん)、想像を絶する痛みだった。アブァに治してもらおうとしたら、


「ニクス。試しにさ、「装具展開—シヴァ」って言っ

てみなよ。再生の神でしょ? 」


「んな事言ってるんならアブァ呼んでくれよ.........」


「いいからいいから」


なぜ急かすんだよ。てか俺は俺で激痛に耐えながら急いでるんですけどね。

まぁロマンがあると思って試してみた。それっぽく手を挙げたら良かったかもだが、プランと下げた右手は痛みが凄いのでそんな余裕はなかった。


「あー。装具展開—シヴァ」


独り言のように言う。まぁ以外と恥ずかしかったからだ。厨二病チック(まんまかもしれない)な言動は避けたいな。ていうかいつものように言うアナは恥ずかしくなかったのだろうか。

そうすると、俺の手の周りには炎が現れ、それが俺の手にくっ付いた。正しく、かっこよく(?)言えば収束したと言うべきか。

シヴァの手はまるで俺の手ではないように異形の姿だ。動かしてみようとすると、


「っ! 」


案の定、痛みが。激痛が走った。まるで電気が全身を貫いたようだった。顔を顰める。


「大丈夫!? 」


「いやダメそう。流石に治らなさ.........」


そう言って顰めっ面をなおす。俺はアブァの元へ向かおうとすると、何かに躓き(後々アナの足と知った。やめろ。)俺は両手をついてしまった。


「.........? 」


痛みがない。全く無い。既に治っている。全治4ヶ月は下らなさそうな傷がものの数秒で。


「大丈夫そうね」


「お、おお。そうだな」


俺の理解は追いついていないのにお前は理解してるのかってくらい冷静だった。


——


「なぁ。こんなに暇を持て余してる俺達だが、本当

に大丈夫か? 」


俺はベッドに勢い良くダイブする。気持ちがいい。


「いや。暇じゃあないわよ。家でできる仕事あるじ

ゃない」


アナは勉強机に座って本を読む。指で額縁を作って、絵になるなぁ。と、思いながら、


「なんかあったっけ? 」


と、返す。


「ほら。今は多分あーたんとアブァさんが相手して

るカメオよ」


「あー。そういやいたなそんな奴」


カメオねぇ。あまり気は進まない。1度俺とアナは殺されている。むしろ初対面で、実践慣れしている2人に任せるのが正しいと思う。正直二度と会いたくないくらいだ。


「あー。めんどくせぇな。おれさまはひゃくさいは

こえてるといったのに」


と、聞き覚えのある声。ドアを開ける「ガチャッ」っていう音ともに入ってくる。正しく噂をすればなんとやらだ。


「カ、カメオ.........」


「どうしたにんげん。そっちはホムンクルスか」


「.........」


アナは無反応だ。多分本に没頭というよりかは無視だろう。


「お前今は戦わないよな? 」


「いまさっきへんなかみになまえかかされて、それ

をのまされてなぜかおまえらとたたかおうとする

とわるいことがおきるといわれた。だからおれさ

まはおまえとたたかいたくない」


まぁそれもいまのうちだろう。と、付け足す。少し不満げだ。まぁ当たり前か。戦闘が思わぬように終わって敵陣連れ込まれて四面楚歌もいいところなのに抵抗できない状況。


「ってことは一時休戦だな」


「そうだいきじきゅうせんだ」


「いきじ? 」


「いちじだ」


面白い。揚げ足を取るとはまさにこのことで、結構面白い。それも小学生だ。面白くないわけが無い。


「ちょうしにのるなにんげん」


「分かったよ。で、お前はどうすんだよこれから」


「ここでくらすつもりだが? 」


「当たり前のように言うな。この家の住人の半分が

家の外の人になるわ」


既に3分の1は外の人だけれど。どんな家庭だよ。


「いいのではないか? 」


首を傾げる。いや、当たり前だろ。


「よくねぇよ」


しかもさっき2人を公認の住人(居候)にするためにホームステイという手段をとったが、小学生1年生程度の子供が家に泊まる理由は見当たらない。というか、ありえない。ただえさえ呼ぶ友達もいないのに。


「きほんてきにはおれさまはけっかいのなかにいれ

ばみつからないからかくれるからりょうしんのり

ょうかいはいらないぞ」


「.........」


便利すぎだな。いうなればあれ。ふぁての固有結界だろう。


「ん.........。まぁいいか」


「あとそこのホムンクルス。しんだようにしずかに

するではない。すこしはしゃべったらようだ」


「うるさいわね。集中出来ないじゃない。ニクス。

相手してやって」


「お前、俺をなんだと思って言ってんだよ」


「下僕以上家族以下」


「定義域が広すぎるわ」


「まぁそんなもんよ」


酷いな。ていうか、少なからず下僕の確率があるのは心外だ。そして人権の侵害だ。人権の侵害ってどういうものか、わからないけれど、それっぽいよな。下僕って。


「おい。またおれさまぬきではなすのか」


「かまって欲しいなら他に行きなさい。公園にでも

行けば子供と遊べるでしょ? 」


「おまえはおれさまにたいしてもこのこぞうとおな

じようなたいどか」


「そうね。基本的に今あなたより有利だし」


「.........」


俺の評価は戦闘が出来ないまでに匹敵するって弱すぎだろ俺。


——


カメオは遊びに行った。本人曰く


「人畜生と戯れてくる」


だそうだ。人畜生ねぇ.........。鬼と人はそういう関係だっけ? そういう関係.........なのか。


「ニクス。カメオの神具ってなんだと思う? 」


「唐突だな。神具あいつ持ってるのか? 」


「決まってるじゃない。そうでもなきゃこの戦争勝

てないわよ」


「.........」


確かに。神具や装具はこれまでのやつを見ている限り、1つでも国1つを滅ぼせる力をもっている。


「でもバトルで使わないのは不思議だよな」


「そうなのよ。奥の手なのかしら」


「そんなとこなんじゃねぇか? とりあえず現在負け

ることはないし」


「それもそうね」


俺は暇なのでフォー○ナイトを始める。朝は勝てなかったのでリベンジのため。


「ニクス。この世界って不思議よねぇ」


「.........? どうした? 」


「いや。なんでもないわ」


俺はゲームに没頭していて彼女の表情を覚えていない。雰囲気さえも覚えていない。全く覚えていない。今日の天気のように暗かったのだろうか。


——


リビングにて、作戦会議。


「カメオ。明日からは協力してもらうわよ」


「あ? なにをいってるのだホムンクルス」


「だからある種脅迫よ。協力しないなら殺すし、す

るなら使う」


「おいにんげん。こやつのあたまはどうかしている

ようだ」


髪色の話ではないようだ。そして、この場にはカメオとアナと俺とあーたん。そしてアブァがいる。この場合、3人が人間なせいで反応がしずらい。


「誰よ「にんげん」って」


「だれでもいい」


呼び方めんどくさいな。まぁ種族で呼ぶこと自体間違ってるからだろうが。


「じゃあ俺が。で、なんだっけ? 」


「ホムンクルスがおかしいというはなしだ」


「あー。そうだな.........」


先程の発言からも受け取れるが物騒な少女。それがアナだ。女神の力を持っているが、女神らしさというのは欠片は愚か微塵も見えない。


「おかしいぜ。コイツは」


俺は躊躇なく言う。


「そうだね。僕もそう思う」


アブァは殴られた経験上だろう。


「私はわからないですが、面白い人です」


あーたんは褒めてるんだよな? それはそれで心配だ。


「勝つためには貴方の力が必要なのよカメオ」


「お、おう。そうか。おれさまのちからがひつような

のか! はっはー。いいだろう。力になってやる」


恐らく。ていうか絶対皆思ったろ。







「「「「ちょろすぎだろ! 」」」」

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同居から始まる魔法戦争 月光月軍 @kukuru418

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