退治の日—火



6時起床。もちろん午前中。布団から出る。目を擦りながら窓のカーテンを開ける。ん? 俺の部屋の窓はこんなにでかくないぞ? 辺りを見回す。1回転では足りず、あと半分くらいで気づいた。最早綺麗に空中3回転キメるところだったぜ。


「あれ? ニコの部屋じゃん」


俺が侵入したのか、ニコに入れられたか。

リビングへの1歩を踏み出すと、「グニュ」とまではいかなくても、それに近い効果音がなりそうな感覚がした。何か踏んだ。よく見てなかった。


「にぁ」


ニコの足か.........。てかなんだよ「にぁ」って.........。猫か。可愛いな。てかベッドで寝てねぇのかよ。俺の隣で寝てたのかよ。

ニコの頬を少しいじってると、


「ニクス.........。寝てるからって妹の頬をつんつんつん

つんつんつんつんつんしていいものでは無いのよ?」


話しかけられるまで気づかなかったが、ベッドで寝ていたのはアナだった。別に意味も無く(いや、あったのかもしれないが)驚きを隠しながら、


「起きてたのか。いやな、そんなつっついた記憶はな

いが、可愛い妹を可愛がるのはいいことだろ? 」


いいことか? いいことだよな.........。いいことのはずだ! (でなければしばかれる)

アナは近づいてきて、ニコの顔を見に来た。


「えい。つんつん」


「えへぇ」


えへぇと、寝言でデレとる。寝言デレとる。


可愛い。


「いいわね、ニコちゃん。食べちゃいたい」


「お前は笑えねぇ冗談ぬかすなよ。できれば貰っちゃ

おうかしら。くらいにしておいてくれ」


あらそう? と、言って布団に入った。


「いや寝んなよ。 飯の練習するぞ。 3年かけるつもり

は無いけれど、10分でできる料理ならいくらか教える

からさ」


にしても酷いよね。昨日買った「3年クッキング」。著者は気長久太郎。絶対この本以外にだすなら「ベンツ1分の1スケール(500年ver.)」とかだろうな。


「わかった。わかったわよ。あと5分。あと5分で着替

えるから出ていけー! 」


閉め出されましたとさ。


——


〜約5分後〜


とりあえずノックをしてから、


「おーい。まだか? 着替えが遅い、ぞ! 」


ぞ! と同じタイミングでドアを勢いよく開ける。


「.........」


5分で着替えるとは言ってたが、5分で熟睡とは聞いてねぇぞ。


「起きろ。起きろよ」


「うーん。むにゃむにゃ」


アナの身体を揺さぶったが、全然起きる気配がしない。


「はぁ.........」


ため息をついて俺は部屋を後にした。


——


朝食を作っているとアブァが起きてきた。


「おはよう。ニクス君。昨日はよく眠れたかい? 」


「お前の仕業か。別に昨日はなんもなかったし、起き

るまで気づかなかったよ」


「ちなみに僕は昨日、ニクス君を移動させた後、ベッ

ドで大の字で寝たよ」


「どんな報告だ。お前よくそんな他人ひとの家で

堂々としてられんな。少しは謙虚に生きてみたらどう

だ? 」


「謙虚に生きてると人生損することが多いよ? 」


「そうなんだ.........」


人生経験の多い人の話はとりあえず受け入れるつもりであったが、謙虚に生きるな。と、言う人の例は知らなかった。

謙虚に生きる必要の無い場合ってなんなのだろう。正確には謙虚に生きてはならない場合とはどういう感覚なのだろうか。

う〜む。分からん。

腕を組んで考えていると、味噌汁の具を入れ忘れかけていた。おっとあぶねぇ。これでほっといて大丈夫。かき混ぜるために使用していたお玉を味噌汁の鍋に入れてから、


「ところで、1人落とすってことは今日から戦闘が増え

るんだよな? 」


俺は次の副菜—簡単なほうれん草のおひたしを作る。


「そうだね。まぁそんなこと置いといて、アーサーに

ついて.........いや、やめておこう。口止めもされてる

しね」


伏線かな? 聞こえるように言ってるし。あと会話を切るな。死ぬ可能性より大切な伏線ってなんなんだよ。


「「おはよー」」


「ん? やっと起きたか。アナは特にだ。5分で熟睡し

やがって」


「ごめんごめん。別にあの後、ベッドに転がってみた

ら、何かが襲ってきてさ次の瞬間、意識はなかったの

よ」


「ただ睡魔に襲われたことをあたかも侵入者に襲われ

たかのように言うな」


俺は料理の手を止めずに言う。くそう。俺も寝ていいのならもうちょい寝たかったな。


——


「ふぅ。お腹いっぱい」


アナはお腹をポンポンと叩く。まぁポンポンという音は鳴らなかったけれど。


「アナさん。今日は何するの? 」


ニコは珍しく積極的だった。


「そうね.........。じゃあ、今日は人探しね。金髪で、サ

ングラス、多分色んなところに派手な装飾品が着けて

いる人を探して」


「へぇ。そんな派手派手なやつすぐ見つけられそうだ

な」


——


「居ねぇぇえええ! 」


探せと言われてから3時間(正確にはそろそろ4時間)経ったが、全く見つからない。疲れ果てて最早発狂してしまった。市街地だったが関係なくやってしまった。

深呼吸してから、


「てかアナ、男性Xが外にいる可能性って確定じゃね

ぇよな? なにを根拠に探させたんだよ」


「えーとねぇ。それは.........」


アナは俯く。考えているのだろう。

ちなみに、現在ニコとアブァは別行動中で、効率よく探していた。


「うん、ない! 」


「元気いっぱいで言うな。お前結構そういうとこ雑だ

ったりするよな」


本当にコイツ、今回の戦争勝つ気あるのか? 情報が圧倒的に少ないだろ。


「ねぇねぇニクス。あれって.........」


アナはド〇えもんにでも出てきそう、いや、それを完全・・に再現された空き地を指さす。今の今まで気づかなかったが、土管から足が出ている。まさか.........。

空き地に入って、土管を足の出てない方向—頭があるだろう方向から覗き込む。

そこには見えづらいが、黄色(おそらく、光にあたってないからか金髪には見えなかった)

の髪が見えた。てか、土管て以外と小さいんだな。大人一人が寝るのにはちょうどいいのかなぁと、思っていたのが少し恥ずい。


「ちょっといいかしら? 」


「ん、ああ」


アナは躊躇なく、


「おいバカ。あんたのことそろそろ倒さなきゃならな

いの。私達の仲間にならないならせめて(戦争から)退

場してもらうわ」


と、頭をポコポコ。いや、違う。正確にはボコボコかな? そんな風に力を少し入れておそらく男性Xの頭を叩きながら物騒なことを言った。

怖いな。

俺は足の方に回って男性Xを確認する。ビーサンに短パン、上はアロハシャツ? のような前の空いた服だ。

男性Xは起きあがる。それも勢いよく。


「ゴン! 」


あー痛いやつやん。可哀想になってくる。リアルデジャブ。


「フッ。相変わらずバカねぇクレオ。しかもここに

は、というかこの県にはそもそも海はないわよ? てい

うか起きたのなら返事くらいしなさいよ」


「いや、お前のボコボコと、さっきの頭への衝撃で気

絶してるんじゃ.........」


「大丈夫大丈夫。そんなヤワな男じゃないわよ」


そんな話をしていると、


「おい。なにやってんだホムンクルス」


ホムンクルスという単語を強調して言う。

男性Xもといクレオは喋った。俺はハ〇ジのク〇ラが立つ並に驚いた(というか、立つだろうと思っていたから意外性がなかったからそうでもなかったとでも言える)。

ていうか起きたのならそろそろそのボコボコはやめてやれと俺に言わせんばかりにアナはボコボコ叩き続ける。最早木魚のようだった。


「起きたわねバカ」


「たぜーにぶぜーもいーとこだな」


俺の口調と似ているが、日本語が下手なせいか聞き取りづらい。


「2対1でその評価は凄いわね。私達この前数

十体はいた鎧に襲われたわよ」


「それならおれもごたいのオートマタくらいならたた

かったぜ。ごたいまんぞくかはしらないけどな」


語彙だけは達者のようだ。そして、よく知ってるな駄洒落なんて。あまり上手くはないけれど。


「で、その、クレオは俺らの敵ではあるんだよな? 」


「そうよ。でも、こいつが別に誰かの下に下ることも

ないからあのおじいさんの件には直結はしないわね」


「あーそうだ。おれさまはおにだしな」


「鬼!? 」


「てかそろそろ出てきなさいよ。喋りづらいじゃな い」


「じゃまなのはおまえらだ」


鬼は無視かよ.........。

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