出糸の日

11時起床。ベッドにて起床。


「ああ、そうか」


昨日は結局、ものの1時間半程度で帰れた。というか、近所の山だった。山中だったから分からなかったわけで、道に出られれば楽々帰れた。

俺は着替えて、リビングに向かう。


「おはよー」


?? 俺は首を傾げる。

誰一人居ない。閑としている。いや、閑としていない誰もいない部屋はホラーでしかないけれど。俺はとりあえずソファに座る。にしても静かだなぁ。独りだとこうなのか。

独り.........。1人.........。ひとり.........。火鳥.........。


音か無いと要らんことを考えてしまうな。ていうか、最近、俺のゲーマーぼっちっていう設定どっか行ったな。仲間いるし、ゲームしてねぇし。むしろ外でよく行動している。

こうして、気にする必要のない、要するにいらないことを考えていると3人が帰ってきた。


「「「ただいまー」」」


「おかえり」


——


「で、昨日はどうなったんだよ? 落ちてどうなったん

だ? 」


「えー。説明めんどくさいねそれは」


昨日も言ったしさと、アブァは続ける。

まぁなんだかんだあって最終的には教えてくれた。


——


「ニクス君! ニクス君! 」


その時、ニクス君はいなくなった。僕達の目の前で、いきなり消・失・した。

僕は急いでニコ君を助けた。そこで僕は思いついた。


「アナ君! 出来れば、出来ればでいいのだが、ニコ君 を持っててくれ.........」


アナ君は空気抵抗での口ブルブルで遊んでた。てかそんな暇あるのなら助かる柵でも考えてくれ!


「まぁ聞いてないみたいだからいいけど! 」


大きめの声で聞こえるように言う。


「『錬金術アルケミー』」


あと、3mないところで、僕は土を分解、再構築した。でも、そのままにすると同じなので、実際には土の間に空気を含ませた。

そうすれば、


「ボスゥ」


「ボン」


土はクッションのようになった。しかも、大きな石がなく、本当に生きてるのは奇跡だった。


「ペッペッ。あーもう土が口に入ったんですけど! あ

ーあ。服も泥だらけだし〜」


「いや、アナ君。ありがとうの言葉とかはないのか

い? 」


「恩着せがましいわね。まぁ.........ありがとう」


ちょっと照れていた。


——


オチもなく、ただ助かっただけの話。


「もうそんくらいでいいよ。ノロケ話ほど語ってて気

持ちいいものもないが、ノロケ話ほど聞いて気分を害

することもねぇよ」


「ならばもっと聞かせようじゃないか。そのあ

——」


ガッ、とアブァは後頭部を殴られる。後ろを見てみると、バスタオル1枚のアナだった。いや、おいおい。バスタオル1枚で出てくるよりも恥ずかしい話をこれからされる予定だったのか!? それは是非聞きたい! そんな願いが通用する訳もなく、アナはアブァの胸ぐら掴んで、


「あれ言ったら——して———だから——よ」


よくは聞き取れなかったが、脅迫文であったことぐらいはわかった。そして、さっきの話を聞いたら俺も殺されそうだ。


「ニクス。あんたも聞いたら——ね」


俺は聞きたくなかったからか、本当に言ってないのかは定かではなかったが、理解不能だった。

そのまま、アナはニコの部屋に行き、入れ替わるようにして、アブァは風呂に入りに行った。


「兄ぃ。昨日はありがとうね。助かったよ」


「礼ならアブァに言ってやってくれ。あいつがお前を

助けたんだ。初めにな」


じゃあ後で言っとくー、とニコは言う。

人間後でと言うと忘れるもんだよな。優先順位が1回下げたらどんどん下げていいみたいに見えるからか? いや、忘れてる訳ではなくなってしまうな。じゃあ、なんと言えばいいのだろうか。うーん——わからん。


「兄ぃ。声漏れ出てるし、ラノベを小説に寄せようよ

してないでさっさとご飯作れ」


「おい。俺はお前の従者でもなければむしろ兄だぞ。

妹からは敬われそうなキャラだぞ」


「キャラに縛られるな。自分を解放しろ」


「口調まで変えて、名言ぽいこと言うな。あと、俺に言ってる癖にお前が自分を解放してんじゃねぇか」


どうなってんだこの設定。俺の妹壊れてるだろ。いや、にしてもこの状況。料理を作るのもなんか自然には行かなさそうだ。


「じゃあゲームで勝負しようじゃないか」


「・・・・・・? まぁいいけど」


首を傾げてニコはそう言う。


「一応言っておくがこの場合俺とお前はフェアじゃな

い。言えば子と子じゃなくて、子と親だ」


「歯磨きゲームでもやる気なの? まぁ、似たような事

言ってたアニメの真似だろうけど、今回の場合、私が

勝てば兄ぃが料理を作る。兄ぃが勝てば私が作る。完

全にフェアでしょ」


俺が馬鹿だったようだ。それを的確に否定されると俺の顔も立たない。


「君達、僕を抜いてゲームかい? 」


アブァが風呂を出てきた。腰巻バスタオル一丁で。


「やりたければ服を着ろ。さもなくばこの妹が容赦し

ないぞ」


おっかないねー、と言って服を着る。というか作ってる。便利すぎだろ『創造』。


「私も入れてくれないかしら? 」


——


ということで4人集まりました。俺はババ抜きがいいのでは? と、言ったが、アナは頑なに「大富豪やりたい」と言っていたので大富豪に決まった。


第1回戦


「えーと、2が強くて、3が弱いのよね.........」


「あがらせてもらうよ」


「よっしゃー勝ったー」


「上がり」


結果は大富豪アブァ。富豪ニコ。貧民俺。大貧民アナ。

アナの手料理はあれなので、もう1回やった。ちなみに、アブァの耳を1回目に封じ忘れてたので、今回は耳栓をした(これで聞こえなくなるような能力には思えないけれど)。


第2回戦


「ジョーカー! ぇ? え? スペ3?ナニソレオイシイ

ノ? 」


面倒なので、ゲームは1文で終わらせてもらうが、大富豪アブァ、富豪俺、貧民ニコ、大貧民アナ。

これは最早「大富豪」じゃなくて「大不幸」じゃねぇかよ。

てか、最初の約束上アナが手料理を作ることになるな.........。「じゃあ俺が作ろうか? 」とでも言えばいいのかもしれないが、「ルールだから」と、アナじゃなくてニコに怒られそうだ。あいつゲームに関しては真面目にやるからな.........。


「俺も一緒に作るのはありだよな? そもそも俺とニコ

の勝負だし」


「うん。作って。てかお願い一緒に作ってあげて」


「え、それはどうい.........」


「さっさと作るぞー」


俺はアナの背中を押すようにして急かした。


——


〜昼の後〜


「えーと、今日は何も無いからどうするかしら? 」


「そうだな.........。別に何も無いんだろ? なら今日は

どっか行こうぜ」


俺は平然と、自然に言ったーーーーはずだ。

実は心臓バックンバックンだったりしちゃうんだけれど。やばい。死ぬ死ぬ。不死身を昨日体験したばかりだけれど、死ぬわ。


「で、何処を走るの? 」


「い、いや、走るの前提かよ。走らねぇし、今日はち

ょっと息抜きってことで」


あれ? 承諾はして貰えたのか? 「おお! やった!」って叫びたいところだったが、今回は胸を撫で下ろして、深呼吸して、さっきまでの不静脈を回復させてから、


「近くの本屋行こうぜ」


2人でな。と、付け足して。


——


「ふーんこんなふうに使えるのね。おぉー。これはニ

クスにピッタリの技ね」


「呪術のコーナーを楽しんでる女子が俺の身の周りに

居ないせいかお前がヤバいやつだと再確認したよ」


「『強制停止スタン』」


「なんだよこれ.........。動かねぇぞ」


「口が動いてるじゃない。バレバレよ」


コイツ、演技を見破るとは。演技を見破るってのはババ抜きがクソ強いのでは? と、思うと朝の大富豪ならぬ大不幸の記憶が蘇る。


「ふっ」


鼻で笑ってしまった。堪えられなかった。


「何? 」


「な、なんでもないよ」


1歩あとずさる。

鼻笑いでさえ聞こえるのかよ。怖いわ。口調も変わっちまうだろ。


「ふーんん? 」


「どうした? 」


「光ってるのよ」


「ハゲの頭はどこにもないぞ? 」


がらにもなく、ボケた。


「違う違う。魔力持ちレーダーの。ドラゴンレーダー

ならぬ魔力レーダーの石が光ってるのよ」


いなされた.........。


「ほぅ.........」


「いや、だからなんなんだよ」と、言いかけたがギリギリとどまった。

言ってたら半殺しじゃ済まないかもだ。


「またあったねニクス君。元気にしてるか? 」


誰だ! と、言わずとも分かる。ノッブだな。


「どうしたんですか? 社会科の先生がなぜ呪術のコー

ナーに? 」


振り返りながら言う。これで間違えてたら大惨事だ。


「おいおい。元担任に皮肉とは。俺もなかなか生徒に

懐かれたものだ」


「僕達を犬や猫として扱ってるんですか? それはそれ

で軽蔑しますよ。異種族としても、人間性としても」


「おっと元気がいいなぁあらら.........」


言い切る前に、


「言わせないですし、いいことはありますよ。見てく

ださい。デートです」


アナの方を指さす。


「メンヘラ好きとは.........。流石ニクス。趣味と顔が良

ければありなんだな」


「彼女は第一メンヘラではないですし、別にゲームも

しません」


「じゃあ逆こそ相性がいいと言うやつだな? 」


うぜぇぇぇ! 発狂しかけるわコノヤロー!


「違いますし、デートとはいえただ遊びに来てるだけ

です。別に彼女ではないですし.........」


こう考えてみると、不思議な関係だと思う。居候又はホームステイだが、添い寝をすることも珍しくないのに、付き合ってない。共同生活ってよりは共闘生活。戦いで言えば師匠だな。

はぁ。と、ため息がでる。


静かな先生を見ると、こう言っていた。

否。

言ってはいない。顔に書かれていた。描かれていた。「ニヤ(察し)」と。


——


近くの公園のベンチにて、


「どうしたのニクス? なんか疲れてるようよ? 」


「いや、お前の本の量もどうしたんだよ。最近 いないけど中国の爆買い観光客かってくらい魔法とか呪術のとかの本買ってんじゃねぇかよ。どれどれ? 」


「1日5分でできる死亡呪術」「悪魔との契約の仕方」「吸血鬼の慣れ果ては語る」「転生したら凡人だった件」「3年クッキング」等々。

いや、3年クッキングは酷だな.........。


「ねぇニクス。さっきの先生、殺気感じなかった? 」


「駄洒落にしては笑えねぇ話だな。まぁ俺はとりあえ

ず何も感じなかったな」


「なるほどね.........。いや、勘違いかもだけど、あの

人、敵の可能性高いわね」


「へぇ。あいつがねぇ.........」


その可能性があることは知ってたからか俺は自分でも驚くほど驚かなかった。矛盾してるのか? それに似たかんじだ。


「でもニクス、あの人のことそんなに知らないでし

ょ? ただ担任だっただけで 」


その通りだけれど、1つ知ってることといえば、


「住所くらいなら暑中見舞いでハガキもらったから分

かる」


「ニ、ニクスが働いてる。立派に情報持ってる」


驚き過ぎてか、口調が平坦だ。


「いやそんなに驚かれても.........」


事実、活躍したのはこの前の戦線離脱だけだしな.........。


「.........」


「.........」


話題がね無ぇ.........。聞きづらいけど聞くかいっその事。心を少し落ち着けてから、


「な、なあ、アナ。お前って、れ、恋愛とかって興味

あったりするのか? 」


流石に言いづらいな。


「? そうね.........。愛の力で強くなれるのならいいか

もね。でも、私はそんなプ〇キュア的な存在でもなけ

れば、人間世界の異質な存在だからね.........」


「.........」


閑話休題。

というのも、これ以上、「人間ではない」というコンプレックスもとい傷に塩を塗るつもりはないしからでもあった。


——


深夜1時前。


「明日からの作戦会議ね。そろそろあっち側も動いて

くるでしょう。で、対策と言っても、今1番やってお

くべきことはいつでも逃げられるようにすること」


「なるほどな。まぁ実際、勝つことと逃げることは同

等に難しいとも思うが、逃げる準備をしているなら話

は別かもな」


「いや、この私、あーたんがいる限り大丈夫です。大

船に乗ったつもり、いや、キャメロット城にこもった

つもりでいて下さい」


あーたんが守ってくれるキャメロットは最早キャメロットじゃねぇだろ。王様が前線に出てるってことだし。


「誰だい? アーサーにあーたんとか名付けたのは」


俺なのだが、一人称あーたんにしてと言ったのはアナだ。


「いいんですよマーリン。マーさん。マッサン」


朝の連続テレビ小説かよ。ヒロインが白人のやつの。


「で、具体的には、今週中には1人、人柱を1柱倒した

いのよ」


「あと4日か.........。時間はあるけど、実力は平気なの

か? 」


「そうだよアナ君。僕達ならともかく君達はまだまだ

未熟だ。半熟だ。美味しいときではあるが、あと少し

火が通らないと完全に完成とは言えない」


全くもってその通りだ。しかし、俺はアナよりもっと酷く、まだ白身も固まってない。


「私はね、最っ強に強いのよ。まぁ強いのは装具だけ

どね」


「へぇ」


「それは楽しみだアナ君。君の強さ見せておくれよ。

僕もそれなりにコーチしたんだしね」


「マーリン。貴方にひとつ用意してもらいたいもの

が.........」


「アーサー、どうしたんだい? 」


顎に手をあてて考える。心の中で伝えるとはな。強いな。この2人の関係は。


「なるほど。でもこれはなぁ」


どんな秘策なんだ? 楽しみで仕方がない。


「あーたん。アブァ。アナ。3人ともまたよろしくな」


「何よ急に改まって」


「そうだよ。僕達は結局、勝たねばならないんだ。い

くらでも協力するよ」


「私もです。まだ全然話してもなければ友と言うほど

仲が言い訳でもありません。それは協力しない理由に

はなりません。というか、この体を守れと言ったのは

あなたです。全力を尽くしましょう」


頼れるなぁ。俺が弱くて頼りないだけだけれど。


「勝つぞ! 」


「「「おー! 」」」


ある日、殺された僕は世界の裏側を見た。正確には視点が世界の一部から全体へと変わっただけなのだろう。そうして入った世界には信じられる。信じなければならない友ができた。

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