七、傷は恥で真実が語る誇り
辰が消え、落ちていく人影があった。
それを近くにいたレイラは受け止めて地面に降ろす。
そしてその場にノエルとエリス、勇者一行とアズガルがやってくる。
レイラも竜から人の姿に戻る。そしてアズガルに身体を向ける。
「お兄さま、今までありがとう」
アズガルは泣いた情けないぐらい大声で。
これで問題の一つは解決した。
だがもう一つ、秋祐が呪いで目を覚ましてくれないことだ。
秋祐はもう本当にこの世に戻ってこないだろうか。
「彼はなんてすごい生命力なんだろうね」
突然の声に驚き、みんな振り返る。そこにいたのは変態チックなあの保健室の教師だった。
「やあみんな」
桜は変態教師に迫り先程の言葉を聞き返す。
「すごい生命力ってもしかしてアキさんは生きているんですか?」
「うんそうだよ」
だが、秋祐は目を覚まさないどころか心臓すら脈を打っていないのだ。
その状況でどうやって秋祐は生きているんだろうか。
「でも、このままじゃあ確実に死ぬね」
その言葉は桜にとって希望から絶望に突き落とすのに過激すぎた。
「呪いの促進は止められているけど全身に回りきっているから、何をやっても彼は死ぬ」
桜をさらに追い込み表情に光が消える。
「私は何の為に生きていたの?どんな時でもアキさんの側にいたくてその為に努力してきたのに、これからどうしたらいいの?」
桜は瞳から涙を流す。思い出や悲しみを乗せて流そうとする。
だが、桜だけが悲しいわけではない。
勇者である久藤春樹は前の世界で秋祐に助けられたことがある。だからというわけではないが、秋祐の死に納得ができなかった。
「………くっ」
「私の所為です。私が──」
「それ以上言うのはやめなさい」
レイラは自棄になり自分を責めようとする前にノエルがそれを止めた。
「先生、秋祐は呪いの所為で目が覚めないのよね」
「そうだね呪いの進行が止まっているからまだ生きてるけど、侵蝕が再開したら確実に死ぬ」
それを聞いてノエルは安心した。
「そう、ならヨナ、やりなさい」
「畏まりました」
息なりどこから現れたのか秋祐の近くに立っていた。
ノエルの命令によってヨナは実行に移す。
ヨナは秋祐の胸に触れて集中する。そして黒い魔方陣が秋祐を覆うように広がる。
「………円環に回れ」
そう言うと魔方陣は白くなって消えた。
それでも秋祐は目覚めてくれない。
桜は肩をワナワナさせながらヨナに迫る。
「今、なんて、言いました?」
「早まらないことよ桜。ヨナは黒雷使いだけど、魔力の性質を変える能力を持っているの」
その言葉を聞いて桜は動きを止める。
「それでヨナ、呪いは何に変えたの?」
「はい。呪いを食らう呪いに変えました。これで彼は呪いでは死なないでしょう」
「そう、ありがとう」
「いえ」
ヨナは用が済むと主人であるノエルの後ろに控える。
何分か経った後、秋祐の身体が動いた。そして目を覚まし身体を起こす。
「うぅ、俺は何を」
「アキさん!」
秋祐が目を覚ました嬉しさから桜は秋祐に抱き付いた。
しかし秋祐の様子がおかしかった。
秋祐はこの場の全員に敵意を向けてこう言った。
「テメーらは誰だ」
無刃の000《オールゼロ》 桜月春之 @sakuduki
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