第5話[影]

「なるほど、殺せないまま月日が経ち、春夏殿が転校してきて、今に至るか…。」


狂華は時停の前に短刀を放り投げる。


「とはいえ、責任は取って下さいね。」

「何なら、介錯してあげてもいいですよ。」


時停は手を震わせながら、短刀を掴んだ。

そして、狂華にお願いしますと告げ、自らの腹部に短刀を突き刺して、真横に切り裂いた。

その瞬間、時停の首が転がり落ちる。

吹き出す鮮血を浴びながら、狂華は悲しそうな表情を浮かべ、そっと呟いた。


「貴方の優しい所、私は好きですよ。」


刀を地面に置き、狂華は天井の方へ顔を向け、目を開ける。

眩しい電気の光を見つめ、彼女は笑った。

今回の一件、爺様にも問題はあった。

明らかに人選ミスだ。

その結果、国の宝である春夏殿達にまで危険が及んだんだ。

私なら殺せた。

まあ、表向きSランクの私にこんな任務が来るわけ無いんだが…。


「それにしても…。」


私が駆けつけていなければ、春夏殿達はどうなって、いたのだろうか。

春夏殿以外は確実に殺されていたであろう。

ならば春夏殿はどうやって殺す。


「餓死とか…。」


狂華は首を横に振り、考えるのを止めた。

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