第5話[影]

「どうして此処にじゃ無いですよ。」


狂華は頬を膨らませた。


「マリア殿やデッド殿を頼って、何故私を頼ってくれなかったのですか。」


美しい美少女の為ならば、己の高いプライドを捨て、跪き足を舐める事さえできる。

そんな私が春夏殿の頼みを断る筈が無いというのに…。

酷すぎます。

そう熱弁する狂華に対し、デッドが一言「気持ち悪い」と吐き捨てた。


「きゃふん。」

「最高の褒め言葉です。」


狂華にドン引きする中、警察が到着し、更には政府上層部も駆けつけた。


「さてと、警察も来たんだ。」

「そろそろ帰るとするか。」


デッドはそう言うと春夏達を連れ、その場から去る。

残された狂華は、政府上層部の人と話しをし、しばらく時停と二人きりにしてもらう。


「気持ち分かりますよ。」

「彼女の両親の命を奪い、更には彼女を殺さないといけない。」

「辛いですよね。」


表向きでは強盗犯が殺したとなっているが、実際は違う。

彼女の両親を殺したのは我ら影なのだ。

彼女の両親が影の存在を知り、調べ始めた。

爺様はそれを疎ましく思い、彼女の両親を殺す様、影に命じた。

そして、あの暴発事件だ。


「落ち着いた頃合いを見計らい、爺様は貴方に嬉々殿を殺す様命じた。」


「そうです。」

「嬉々を殺す様、命じられました。」

「だけど…、彼女を殺す事が出来なかった。」


近隣住民から疎まれ、学校でもイジメられている。

そんな彼女を見て、殺す事などできなかった。

彼女がこんな目に遭っているのは、我ら影のせいなのだから。

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