第5話[影]

「そこまでです。」


首筋に短刀が押し当てられる。

短刀には血がベッタリと付着しており、部下達全てが彼女に殺されたんだと悟る。


「狂華お嬢様ですか。」


「はい、時停じていさん。」

「お久しぶりですね。」

「それより、さっき、春夏殿の施設脱走事件について、話そうとしませんでしたか?」

「あれを話すとどうなるか、ご存知ですよね?」


首筋から血が垂れ、冷や汗が止まらない。


「あっ、そうか、あの世への手向とかいうやつですね。」

「なるほどなるほど。」

「Sランクに手を出せば、我ら全員、死刑になる事をお忘れで?」


狂華は溜め息を吐き、能力を止める事を時停に命じた。

言われるがまま、能力を解除し、三人の時間が動き出す。

それと同時にマリアと嬉々の二人が悲鳴を上げた。


「デッド、あんたがやったの?」


「私じゃねぇ…。」


「じゃあ…。」


三人の視線が春夏に集まる。

慌てて首を横に振る春夏。


「まあ、春夏はナイフを使ったりしないわよね。」


「じゃあ、誰が?」


デッドの呟きに狂華が「私です。」と答え、時停を連れ、姿を現した。

手錠を後ろ手にはめられ、両膝を地面につく時停。

彼が影のボスだと知り、三人は驚いた。


「チッ、部下をおとりに使っていたのかよ。」


悪態をつく、デッドをなだめる狂華の元へ春夏がやって来て、疑問に思った事を尋ねる。


「どうしてここに?」

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