第5話[影]
少なくとも、もう一人この場にいる。
何処から誰を狙っているのか分からない。
この時間が止められた世界では、マリアちゃんの能力は発動しないのだろう。
その証拠に目の前にいた女性は、先程と違い平然としている。
「どうして嬉々ちゃんを狙うんですか?」
出来る限り時間が欲しい。
考えて考えて、そして、この状況を何とかしないと。
相手の能力に唯一対抗できるのは私だけなのだから。
「ふむ、一つ誤解を解いておこう。」
「我々は独自に動いている。」
「つまり、政府は関係ないのだよ。」
独自に?
「政府が関係ないのなら、嬉々ちゃんを狙う必要はないのでは?」
春夏の言葉に影のボスは再び笑った。
「我々は常々、能力の在り方について疑問を抱いていた。」
能力の安全性。
能力者は本当に能力を暴発させないのか?
それを影のボスは昔から疑問に抱いていた。
世界中、能力者は何処にでも居る。
能力者が一番多い国では人口の95%は能力者で無能力者の方が珍しいくらいだ。
それなのに能力者の能力暴発事件は聞いた事がない。
だからこそ、私は怪しんだ。
国が隠蔽しているのでは?
そんな時、嬉々の能力暴発事件を知る。
「あれだけの事件なのに、全国に報道される事は無かった。」
「国が隠蔽したのだ。」
「それだけじゃ…、なっ…。」
春夏達の前に居た女性の頭にナイフが刺さり、倒れる場面を見て、影のボスは押し黙る。
そして…。
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