第2話[転校、そして出会い]

近場のファーストフード店に入り、バーガーセットを頼み彼女の前に置く。

お財布を手にする嬉々に奢りだと告げるが…。


「いえ、お金は払います。」


突き出されたお札。

受け取りを拒否するが、彼女は財布のチャックを閉めると財布を鞄に入れ、ハンバーガーを食べ始めた。


「えっと、自己紹介…。」


「知ってます。」

「テレビ、観てましたから。」


春夏は彼女の素っ気ない態度に困惑する。


「私の名前は爆羅嬉々ばくらききです。」

「一応、名乗りましたが知っていますよね。」

「私、親殺しで有名ですから。」


春夏は真っ直ぐ嬉々の目を見つめ、口を開く。


「そういうのは止めて、事実じゃないんでしょ。」


親殺し何て、周りが言っている噂に過ぎない。

ちゃんと政府も彼女の両親を殺したのは強盗犯だと発表している。

ただ、周りが面白がって彼女を親殺しだと言っているだけなんだ。


「事実じゃない。」

「本当にそう思いますか?」

「まだ幼い子供が能力を暴発させて、両親を殺した。」

「政府がこれを知ったら、隠したくなると思いませんか?」


春夏は嬉々の手を両手で強く握る。

彼女はきっと諦めているんだ。

何を言っても信じて貰えない。

だからあんな事を言うんだ。

なら、伝えないと、私の気持ちを。


「私は嬉々ちゃんを信じる。」

「だから、そんな事言わないで。」

「私が守ってあげるから。」


嬉々は眉間にシワを寄せた。


「どうして、どうして赤の他人にそこまで言えるんですか。」

「有名人だからポイント稼ぎしてるんですか。」


春夏は首を横に振る。

確かに嬉々ちゃんとは今日が初対面だ。

だが、両親は違う。

私の両親と嬉々ちゃんの両親は知り合いなんだ。

だから、こうして彼女を助ける様に頼まれた。

そして、私自身、嬉々ちゃんを助けたいと思っている。

春夏はその事を伝えた。


「私の両親と…。」


彼女の頬から涙が伝う。

幸せだったあの時間。

彼女の思い出が彼女の心を締め付ける。

そして、彼女の口から本心が漏れた。


「助けて欲しい。」


「うん、助けるよ。」


「私、あなたに冷たい態度をとったのに?」


「大丈夫、気にしてないよ。」

「私、メンタル強いから。」


春夏はそう言うと、嬉々に笑顔を向けた。

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