第1話[超能力バトル]

白川狂華。

名門白川家で産まれた彼女は、幼い頃から目を閉じて生活をしていた。

誰に言われた訳でも無い。

彼女自身が考え、自分の能力を鍛える為に、彼女はこうして過ごすのを決めたのだ。

その努力が報われたのか、彼女は十二の時に、目を開眼し、父との勝負に勝利した。

そして今、彼女は目を開ける。

自分の全力を春夏にぶつける為に…。

だが…。


「あはは、参りましたなぁ。」

「能力が発動しないや。」


分かってはいたが、能力が使えないのは少し厳しい。

だけど、使えないのなら仕方がない。

全てを見通す目。

この能力に合わせ、身体能力も強化してきた。

この身体能力だけで彼女を倒す。


狂華は素早く動き、春夏の背後にまわる。

そして、短剣を取り出そうとするが…。


「ぐふぅ。」


春夏の拳が狂華の脇腹にめり込む。

春夏から数メートル離れ、狂華は胃の中の物を吐き出した。


(鉄の様に硬いか、防御だけじゃなく、攻撃にも役立つ何て羨ましい。)


これで決着がついたと誰もが思った。

まだ後にも戦いは残されている。

ここで無理をする必要はない。

だが、狂華は立ち上がる。


「流石春夏殿、きもち…、じゃなかった。」

「いいパンチを持っていますね。」


中継を観ていた狂華の父が頭を抱える。

そんな父の気持ちも知らずに、狂華は欲望のままに、春夏に戦いを挑んだ。

家宝の短剣を抜き、春夏に切りつけるが、頑丈な春夏の肉体に負け、あっさり折れてしまう。

それを観ていた父はテレビを掴み、叫ぶが狂華には届かない。


(あっ、やばい。)

(父様に叱られてしまう。)

(いや、これはこれで、また一興か…。)


折れた家宝をその辺に捨てて、狂華は拳を構えた。

どんな状況でも諦めない狂華の姿勢に、観客達は感動し盛り上がる。

お茶の間の視聴者も狂華を応援する中、春夏は狂華に話しかけた。


「すごいよ。」

「私、狂華ちゃんと戦えた事、誇りに思う。」

「だから、全力でいくね。」


電流が走ったかの様に狂華の背中がゾクゾクする。

美少女の全力。

ならば、私も全力で受けなくてはいけない。

春夏目掛け、真っ直ぐ突き進む。

そして狂華が拳を振り上げた瞬間。

春夏の強烈な右ストレートが、狂華のお腹に決まり、狂華はお腹を抑えながら後ろへ数歩、後退りする。

両膝を地面につけ、恍惚な表情を浮かべながら、狂華は倒れた。

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