第2話 天才勇者、ひとまず神界へ。
*
「別れはすんだかの?」
少年が教会の魔法陣で転移した先は全ての神々が住まう世界、神界である。
当然、少年に声をかけたのは神様だ。
そんな神様の声に少年は決意に満ちた顔で振りむ、、、、、、かない。
あれ?
声をかけた神様は怪訝に思いながら少年の前に回り込みその顔を正面から見る。
少年はいまだあどけなさが残る顔を涙と鼻水でぐちょぐちょにしていた。
”うわ、キタな。”
神様がそう思ったのも無理はない。
いくら全知全能の神様であっても汚いものは汚いと思うものだ。
「ぐす、ゼ、ゼジル~~~~。もう会えないなんて嫌だーーーーーーー。」
「そんなに泣くくらいなら一緒に連れてくるなりこの話を断るなりすればよかったものを。」
神様が呆れながらもそんなことを言う。
神様の言い分は当然だろう。
別に無理に頼んだわけではないし、彼一人だけという条件も出してはいない。
というか何よりも汚い、、、、、。
「だ、だってそんなのかっこ悪いじゃん!僕は天才勇者なんだもん。」
ガキか!
おっと、神ともあろうものが突っ込んでしまった。
いかんいかん、平常心を保たねば。
神として。
「カッコいいかは置いておき、断ることもできたのじゃぞ?」
「断らないよ。だって大きな力は次第に恐怖の対象になるんだ。だからあのまま僕があの世界にいたら今度は僕のせいで争いが起きるかもしれない。そしたらせっかく僕が大魔王を倒した意味がなくなっちゃう。まあいずれ大きな力は生まれてしまうかもしれないけど。それにしてもセシル、、。会いたいなぁ。」
ふむ、こやつ案外きちんと物事を考えているやもしれぬ。
まあ最後の言葉がすべてを台無しにしておるが。
「はあ、よい。では少し説明してもいいかの?天才勇者ヴィルトよ。」
「うん。なんてったって僕は天才勇者だからね!」
はぁ、やはりいくら天才とは言え早まったかもしれぬ。
こやつはあまりにも精神が幼い。
年相応と言えばそうなのだろうか、あまりにも持っている力と差がありすぎる。
これだけの力をよくその小さな体に留めて置けるものだ。
だがこやつが世界を救ったというのも事実。
どうなるかはわからぬが致し方なかろう。
「いいか、ヴィルトよ。お主はレディワンという世界を救った勇者じゃ。世界を救った勇者はその功績をたたえられ、我ら神の眷属となる事が許される。ここまでは良いな?」
「うん。眷属になってそのまま世界の均衡を保つのもよし、神々の手足となり他の世界の均衡を保つのもよし、でしょ?僕は旅立つことを選んだわけだけど。」
これは大魔王を倒した時に神様から直接聞いた話だ。
そして色々考えた結果、世界に残ることではなく、世界を旅することにしたのだ。
大切な人に会えなくなることは寂しいけど、他の世界にも大魔王を倒す前の人々と同じように苦しんでいる人がいると思うと放ってはおけなかった。
「そうじゃ。そしてお主はわしの眷属として様々な世界を救ってもらいたいのじゃ。そしてその功績が他の神々にも認められればいずれ神格を得ることも可能じゃろう。」
「嘘!神様になれちゃうの⁉さすが僕。やっぱり天才だもんな。」
おい待て、ガキ。
簡単になれるわけなかろう。
神様なめとんのか、あぁ!⁉
おっと、いかん。
平常心、平常心。
なんたってわし、神じゃもん。
「それはお主の努力次第じゃ。神は世界にあまり干渉してはならぬ決まりでな。裏ワザとして勇者上がりの眷属を派遣するのじゃ。お主は神ではないから神々の成約には当てはまらぬ。」
「うんうん、ついに僕も神様かぁ。神様になったらまず何しようかな、きっと何でもできるよね。」
聞けや、こらぁ‼
やっぱりなめとんのかこのくそガキが‼
おっと、平常心、平常心。
ってもう無理じゃ!
わし、こいつ好かん。
天才とバカは紙一重とはよく言うがこやつはバカの方で間違いないわい。
やはり人選を間違えたかのぅ、、、、。
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