第7話

〜2年前〜


「先生、話があります。」


「はい。なんでしょう?」


そう言うと先生は本を閉じる。今日の本はドフトエフスキーの「罪と罰」だ。


「どうして、いじめは生まれるのでしょうか。」


「そうですね、それは先生にも分からないです。しかし、生まれる前に止めればいいのでは

ありませんか?あなたはそれをできるのではありませんか?」


「そうですね。ありがとうございます!」


彼女は希望に満ち溢れた顔で図書室を飛び出した。




「先生……どうしていじめはーー」


「どうしてそんなこと聞くのですか?何かあったのですか?」


「私は、いじめを止めることができませんでした。それが……悲しくて。私は何も出来なか

ったことが……悔しくて。先生私――」


「しょうがないことですよ。あなたは何も出来なかった。あなたは無力だ。」


「でも、先生は昨日、私にできるって言ってくれたじゃないですか。」


少女は泣き崩れてその場に倒れ込んでしまう。


「どうして……どうして……!」


「君は助けることができなかった。つまり、君のやり方は間違っていたんだよ。君のせいだ。全部君のせいなんだよ。」


返す言葉が出てこないのか一言も話そうとしない。外には雨が降っており雷が鳴り響く。


「……私は……あなたのように……ならない‼︎」


彼女はそう言うとその場から立ち上がり、ドアを激しく開け走り出した。



彼女はただ誓った。この世のひねくれた正解をただ教えることを。

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